1-28
冒険者として活動し始めて一週間。
レベルの上昇も緩やかになり、ステータスもだいぶ体に馴染んできた頃。
「そろそろBOSS戦に備えて、武器も買い替えなきゃだね!」
今日も魔物との戦いを終え、武器をみると刃先がボロボロになってきていた。
転移結晶に触れ、街へと帰還する。フロアの攻略も進み10層まで僕はたどり着いていた。
「おじさん!これ下さい!」
「おう!嬢ちゃんまいどあり!」
古い武器を下取りに出し、新しい武器を購入した。
「えへへ、新品はいいね!」
「にしても、どんだけ魔物を倒してきたんだ?ボロボロじゃねーか。」
「んー覚えてない!ずっと塔に籠ってたから!」
「嬢ちゃんは手入れの仕方も覚えた方がいいな。よし、教えてやろう!」
「うん、ありがとう!」
そうしてレクチャーを施された。
「冒険者って、覚えることが多いなぁ。」
「そうだな、でも知識は生存に繋がる。覚えておいて損はないぜ」
「頑張るよ!」
そうして再び塔へと舞い戻る。
さきほどBOSSへの扉は見つけている。今回は事前情報も予習済みだ。
扉を開けると、ゴブリンエンペラーの強化種が待ち受けていた。
8本の斬撃『飛燕剣』が飛んでくる。それを『氷華』で防いだ。
クールタイムがあるうちに敵の懐に飛び込み、斬撃を加える。
スピードは僕の方が上だ。が、力で弾き飛ばされてしまう。
一進一退の攻防が続く、前回同様『氷華』で腕の部位破壊を狙っていく。
『氷華!』ゴブリンエンペラーの腕を2本凍り付かせることに成功し砕く。
敵の攻撃が緩やかになる。そこに更に斬撃を加えていく。
クールタイムを見ながら僕は適宜『氷華』を放つ。
全部位の破壊に成功し、後は一方的な攻撃が続くのであった。
「うん、楽勝だったね!これでセカンドダンジョン解放かぁ。次は昆虫なんだよね…僕、虫は嫌いなんだけどなぁ」
そんなことを一人つぶやきながら街へと帰還した。
ギルドにたどり着き、強化種の素材を売り払う。今回は揉めることなく順調に手続きを済ませられた。
「ロディ!」
「んっなんだ嬢ちゃんか」
「聞いて!今日ね…」
フロアBOSSに挑んだこと。武器を新調し、手入れの仕方を覚えたこと。等を話していった。
「そうか、じゃぁ嬢ちゃんも明日からセカンドダンジョンか。」
「うん!ってもしかしてロディも?」
「あぁそろそろ次の街にいこうと思っていたところだ」
「それじゃあ一緒に行こうよ!」
約束を取次、その場は解散する。
「えへへ、今日は贅沢してもいいよね!」
フロアBOSSを倒し資金は潤沢だった。オーク肉のステーキを注文する。
「魔物肉かぁ、どんな感じなんだろう?」
一口、口に頬張る。とても柔らかく、肉汁が口の中にあふれてきた。
「おぉーこれは美味しいね!」
食事を終え、店を出てしばらく。
「坊主、金を持ってそうだな!俺によこしな」
「僕は、女性だ!」
「おう…そうか…ってそんな事はどうでもいい!」
「懲らしめて欲しいってことだよね!」
「素直によこせばケガをしなくて済んだのにな」
男の剣が、振り下ろされる。それを難なく躱し、懐に潜り込む。
剣の柄で男の腹部を殴打する。
「ぐはっ」
「これに懲りたら、二度と悪さしないことだね」
そうして、駆けつけてきた衛兵に男を引き渡し、宿へと向かうのであった。
「ふぅ、お風呂はいいねぇ。」
魔物との戦闘で汚れた箇所を入念に落としていく。
湯船につかると、僕は少しまどろんでしまった。
ある物語にはこう記されていた。
「勇者とはなんだ!」
「おまえのような悪から人々を守る存在だ!」
「お前と私の何が違うというのだ?生存競争の為、生き物を殺すことで領域を広げるこれの何が悪さだ」
「人には感情がある。」
「魔物にだって感情はある。子だってなすのだそれを殺して回っているではないか?」
それに対して勇者はなんと答えたのだったか…
僕はこう考えた。結局のところ正義とか悪とかはないんだ。自分が守りたいものを守る。どちらも勇者なんだって。そこに快楽を求めるのが魔王だと僕は思う。
楽しみながら殺すもの。勇者ならそこに葛藤が混じる。それだけの違い。
僕は、今のところ魔物を倒すことになんの葛藤も混じらない。言葉を話す魔物がいれば別なんだろうけれど、ダンジョンと塔の魔物は感情を持っていない。
この先僕はどう考え、どう動くのだろう?少なくとも人々の側に立っていたいと僕は考えている。
そんなことを考えながら僕は、部屋に戻り眠りにつくのであった。




