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5.スキマ時間クエスト

「はあ……はあ……ふう」


 あと()()()()()()()()。まとめて戦った分、いまのはちょっとキツかった。ちょっとだけね。

 ――フォン。

 メニュー画面を開き、いくつか確認を済ませる。


『レッドスライム 8/10』


 クエスト達成にはあと二体。回復薬も十分にあるし、マジックパウダーも二体相手なら問題ない。このままアイテムは使わずに終わりたいな。

 問題があるとすれば――時間。

 クエストに制限時間というものはなくて、つまりは現実世界での時間。時間の流れは現実世界とこっちだと違うけど、現実世界の時間が止まってる訳じゃない。だから、今日みたいに予定が後に入っている時はあんまりゆっくりは――。


「……!」


 視界の隅から放たれた攻撃を、慌てて飛んで躱す。

 さっきまで私が陰に隠れていた木は、ボウッと小さく音を立てて僅かに燃えている。


「――水よ!」


 どうせこのまま放っておいても大丈夫だとは思うけど、一応魔法で消しておく。MP(マジックポイント)も少ししか使わないし、あんまり気にすることでもないと思う。

 それより、これで目標がどこにいるかが少しでもわかったんだからありがたい限り。


「この辺じゃないのか――なっ!」


 ある程度見当をつけて、その辺に生えている草を刈り取るように剣を一閃。残念ながらスライムには当たらなかったけど、隠れていたものがなくなったことで丸見えになった。

 ――ボウッ!

 一瞬怯んだように見えたけど、そのまま攻撃をしてくるスライム。でもその程度の、それも正面からの攻撃なら私でも簡単に防げる。


「水よ!」


 スライムの炎攻撃は、私の魔法でキレイに打ち消される。ついでに飛んでった魔法はスライムに見事に命中したし、いくらかダメージも入ったと思う。

 火には水が効果抜群!ゲームはそんなに得意でもないから、こういったところはわかりやすくて助かる。


「――よっと!」


 隠れるものもなくなって、さらに痛手も負ったスライムを、距離を詰めてちょんと剣で刺す。元々赤くなっていた体力ゲージがゼロになり、ポリゴンになって散ってしまった。ドロップアイテムはなし。残念。


「あと一匹は――」


 私は、視界の隅で跳ねた赤い物体を見逃さなかった。


「そこ!」


 空いていた左手で腰に備えていた短剣を掴み、そのまま投擲。草むらでちゃんとは見えていなかったけど、しゅわしゅわと散っていくのが見えたから成功したらしい。

 現実じゃあんなのが当たるわけないけど、この世界だと当たる、こともある。こういったところが楽しいというか、気持ちがスッキリして好き。だから止められないんだよね。

 さて、と。メニュー画面を開いて、念のためクエストがちゃんとクリアされたか確認する。


『レッドスライム 10/10 CLEAR』


 よーし。特に問題なし。で、あまりにスムーズに終わったから、もう一つの問題だった方ももちろんオッケー。


「うん、まだ大丈夫そうかな。これならギルドへのクリア報告までやってから終われそう!」


 今日も時間に余裕があったわけじゃなかったけど、どうしても気分転換がしたくて思わず来てしまった。この前は嫌なこともあったし。けどもう心機一転というか、切り替えもできたし満足。


「さーて。今日もこれからバイトだし、ちゃっちゃとやることだけやっちゃおうかなー!」


 クエスト完了には、クエストを受けるのと同じくギルドで手続きをしないといけない。ただノルマを達成したから、わざわざギルドまで歩いて戻る必要は無い。便利機能の、クエストをクリアすると使えるテレポート。

 これ現実世界にも欲しいなー。クエストの代わりにバイト終わったらすぐに家に帰れるみたいな。

 私はメニューの『クエストを完了する』を選ぶ。その瞬間に、ふわっと体、そして意識が宙に浮かんだような感覚になって、気がつくとギルドにいた。


「すみませーん!」


 私は駆け足で受付のお姉さんに近づきながら声をかける。


「お疲れ様です。クエストを完了されたのですね。確認しますので少々お待ちください」


 何度も聞いたそのセリフを、でもとても自然な笑顔で唱える。いやー、時代の進歩というか、次元の進歩?というかは素晴らしいなー。

 手元の端末を操作する素振りを見せるお姉さんを見ながら、しみじみそんなことを思った。

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