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第22話

 それから数日後。着実に季節は流れていたはずなのに、大国に雪が降った。この季節外れの雪は、それもシントレアでは見たことのない大雪。珍しいものに目を見張る者、雪で少年心がくすぐられた者、雪が降るさまを黙って見つめる者……珍事は国中を騒がせた。

 カミラはもちろん久しぶりの大雪に胸が騒ぐ。ベッドから起きていつものように外を眺めたときの景色に、見惚れていた。

「カミラ様。おはようございます」

「おはようございます!」

 起床の頃を見計らってリーサが入ってくる。カミラは振り返って挨拶をした。

「雪が嬉しいのですね。お顔に出ていますよ」

「こんな大雪、シントレアで見られるなんて思ってなくて……つい」

いつもより底冷えする感覚も懐かしい。隣にリーサがやってきて、一緒に外を眺める。

「これはしばらく降り続きそうですね」

「そうですね。あの、リーサさん。一つお願いがあるんですけど……」

「なんでしょう?」

「今日着る服、ちょっと変えてもいいですか?」

 いつもはヴィンセントの婚約者として品格を表すべく、ドレスを着ていた。しかし、今日だけはカミラもしたいことがある。

「雪かきがしたいんです。今日だけ、防寒ばっちりの服を着させてください!」


 外に出ると、肺まで凍りそうな冷たい風が吹いていた。カミラは遠くで騎士団員たちが何人かで雪かきをしているのを確認し、ついてきてくれたリーサのほうを振り返る。

「あの道具はどこにあるんでしょうか……?」

「私も詳しくは知りませんが、おそらく東倉庫に……」

「じゃあ、探しに行きましょう」

 二人で東倉庫まで行くと、確かに雪かきの道具があった。しかしどれも大雪を想定していないのか、スコップばかり。

「どれがいいかな……雪かきは、とっても体力を使うので、できるだけ軽い道具のほうがいいんですけど……」

「どれも金属製なので重いですね」

「うちの国では、かなり軽い金属が作られているんです。資源があるというのもありますけど、みんな雪かきをどうにか楽にすることに熱心なんですよ!」

「そうやって技術が発展する国もあるんですね」

 リーサはカミラの話を興味深く聞いている。

「これでやろうかな……」

 カミラは1本のスコップを手に取る。リーサも隣のスコップを手に取ると、カミラが驚いた顔をした。

「リーサさんまで一緒にしなくてもいいんですよ!? 雪かきは慣れない人がすると大変ですから。怪我もするかもしれないですし」

「私もやってみたかったんです。少しくらいならやらせてください」

 リーサの言葉に意欲を感じて、カミラは頷いた。自分がしっかり見ておこうと思いながら。

二人はまだ誰も着手していない軍用通路まで来ると、雪かきを始めた。始めてみるとやはりカミラのほうが早く、動きもテキパキとしている。

「さすがカミラさん、本当に雪かきに慣れていますね」

「そうでしょう? エミリスワンで生活していくなら、必須ですからね。これでかなり体力もつきました!」

 楽しそうなカミラを見ながら、リーサも微笑む。カミラといると、心が浄化される気がした。

(それにしても、ちゃんとヴィンセント様には伝わっているかしら)

 リーサは雪かきをしたいというカミラの言葉を聞いて、服を用意すると同時にアルスにこのことを伝えておいた。何かあったとき、リーサだけでは対応できないこともあるかもしれないからだ。

 しばらく二人は話をしながら雪かきを進めた。かなり軍用通路は石畳が見えてきて、これであれば馬に乗った騎士団員たちも通れるだろう。

 その頃にはすでに二人の手は冷たく、身体もだいぶ冷えてきた。

「そろそろ終わりにいたしますか?」

「もう少し……あっちの城塔の前までやりたいです!」

「寒くありません? 何か温かい飲み物をお持ちしましょうか?」

「本当ですか? ありがとうございます。じゃあ、私は先に城塔の前の雪かきをしておきますね!」

 リーサと自分の分のスコップを持って、カミラが歩き出す。その背中を見送って、リーサは早足で城の中へと戻っていった。


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