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雪の夜

作者: あお

 雪の降ったある夜のことです。

 その日は昼間から雪が降っており、夜になると雪はかなり積もっていました。

 自分はタバコが切れたためコンビニに買いに行こうと思ったのですが、困ったことにアパートの前の道路はまだ除雪車が通っていないのか雪が積もったまま。当然アパートの駐車場にも深々と雪が積もっており、車を出すには雪かきをしなければなりません。

 幸い、翌日の天気は晴れ予報で気温は上がり雪も溶けるとされていて、自分も翌日は休みで車を使う用事もありません。

 翌朝仕事なら夜の間に雪かきを済ませておいた方が良いということもあり、雪かきをして車を使ったでしょうがそうではない。自分は歩いてコンビニへ向かうことにしました。


 コンビニまでは歩いて10分そこそこくらいの距離です。

 除雪車もなかなか来ない、奥まった立地のアパートなので自分はしばらくまだ靴跡のない深い新雪をザクザクと踏み分けて進むことになりました。

 しばらく進めば道路は除雪されているようになりましたが、夜だということもあり、歩道には靴跡もない深い雪が積もったまま。横断歩道を渡ってようやく自分以外の靴跡を見つけました。


 それ小学生くらいでしょうか?小さな靴跡でした。


 最初は夕方には既に雪が積もっていたので下校の跡かな?くらいに思い、特に気にも止めませんでした。


 しかし少しするとふと疑問に思います。

 靴跡は1人分しかありませんし、靴底の模様もはっきり見て取れます。つまりこの靴跡は下校の跡ではなく、つい先程ついたものになります。


 こんな雪の中、こんな夜中、子供が1人外を出歩くでしょうか?


 その靴跡は自分の進行方向にずぅっと続いています。


 なんだかそれが招かれているようで… 馬鹿馬鹿しいとは思いつつ、自分は遠回りにはなりますが靴跡のない道を進むことにしました。


 しばらく靴跡のない新雪の道を進んでのことです。


 サクッ


 と、後ろから雪を踏む軽い足音が聞こえました。

 先程のこともあり、少し怖い気分になっていた自分は野良猫かなにかだろうと思い込むことにして先を急ぎます。


 サクッ…サクッ……


 足首より深い雪とあってなかなか自分は歩が進まないのに、後ろの足音は妙に軽快にどんどんとこちらへ近づいてきます。

 自分は本格的に怖くなり、意を決して後ろを振り向きます。


 ……


 しかしそこには誰もいませんでした。


 きっと野良猫だったのだろう。突然振り向いたので驚いて逃げてしまったのだ。夜なので自分はそれに気が付かなかっただけだ。


 自分はそう思うことにしました。

 しかし、


 サクッ


 自分が前に向き直ると再び後ろから足音が聞こえます。


 サクッ…サクッ……


 そしてそれはやはり妙に軽快にこちらへと近づいてきます。


 きっと白猫だったんだ、さっきは雪と同化して気が付かなかっただけだ。そう思い込むように心に念じて自分はまた後ろを振り向きます。


 ……


 やはり振り向いてもそこには誰もいません。

 いえ、


 サクッ


 誰もいないはずなのに、雪を踏む足音だけが聞こえてきました。


 サクッ…サクッ……


 視線の先には誰もいません。しかしたしかにそちらから足音だけが聞こえてきます。

 自分は音のする方をよく目を凝らして見ました。


 そこには先程の子供の靴跡がこちらへと続いているではありませんか。


 サクッ


 そしてそこから伸びるように、誰もいないはずなのに、足音とともに靴跡だけが突然新雪に掘られました。


 サクッ…サクッ……


 足音だけが、靴跡だけが、どんどんとこちらへ近づいてきます。


「うっ!うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 自分は情けなく悲鳴を上げてその場で盛大に転びました。

 すると、


「きゃはははははははははっ……」


 子供の笑い声が響き渡り、靴跡は来た道を引き返し走り去っていきました。



 しばらくは呆然と雪の上に転がっていたのですが、その後は特に何もなく、無事コンビニにつくことができました。

 ただまぁ、まっすぐ帰る気分にもならず、コンビニの喫煙スペースでタバコを吸っています。


 あれは子どもの霊のいたずらだったのでしょうか?無様に盛大に驚いて満足してくれたのでしょうか?

 もし最初にあのまま足跡を辿っていたのなら… 途中で振り向かずに追いつかれてしまっていたのなら… どんないたずらをされていたのかと思うと少しゾッとします。

追記



 あの後アパートまで帰ってきたのですが…


 駐車場が子どもの靴跡でびっしり埋め尽くされています。


 …どうしたらいいですか??

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