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第17話 妖精貴族、ミデル公爵の視点2

 エーティンが私の元から去り──()()()。その凶報に激怒し、思わず人間界の屋敷を一つ潰してしまった。


「誰がエーティンの脱走を手引きした!?」


 妖精たちは「トリア」という名を答えた。そこで誰だったかと、ふと考える。


(ああ、エーティンの傍に居たあの女。やはり婚約をした段階で、殺しておけばよかった。……いや、今はそれよりもエーティンが本当に亡くなったのかの確認が先だ。遺体があれば蘇生は間に合う)


 すぐさまクワールツ家に向かおうとしたが、行く手にはローブを羽織った男が姿を現す。


「ミデル王、お待ちください」

「そこをどけ」


 殺気だった言葉によって屋敷の瓦礫が粉々に砕かれ、粉塵が舞う。

 これ以上邪魔をするなら、この男から殺す。そう明確な敵意を向けると、男は深々と被ったフードの中から下卑た笑みを浮かべた。


「エーティン様は存命ですので、まずは怒りを収めてくださいませ」

「……なに?」

「全ては計画通り、生前のエーティン様もこうやって第一王妃に虐げられ、追放されたではありませんか」

「…………」


 この男がいうのは、エーティンの記憶を甦らせるために疑似追体験を行っているというのだ。確かにいわれてみれば、あの時と近しい状況だったかもしれない。

 だとするのなら、トリア(あの女)は──。


「むろん、トリアという娘は『ミデル王に好かれている』という術式を組み込んでおりますので、盲目的に貴方様を慕っております」

「それでいつも私に絡んできていたのか」

「ククッ、さようでございます」

「ふん。いらぬことを」


 思い出すだけで苛立ちが募った。役割だと言われても、エーティンを傷つけたあの女を許す気はない。せいぜい我が領土の肥料として、役になってもらうとしよう。


「今から使い魔を放ちますので、危機的な状況で貴方様があの娘(エーティン様)を救いに現れ保護してしまえば喜びのあまり、すぐに結婚もできるでしょう」

「保護。……確かにそうだな。妖精の国に戻り私の屋敷で囲ってしまえば、エーティンの安全は確実だ。その時にあの女の処罰も彼女に決めさせよう」


 少しばかり溜飲も下がり、八つ当たりに生み出した竜巻を解除した。砂煙が消えると屋敷だった場所は更地になって、死体は肉片も残さすに塵と化したがどうでもよかった。騒ぎに気付いた人間たちが増え、野次馬も増えて鬱陶しいことこの上ない。


「ミデル公爵、これは人類に対して越権行為ですぞ」

「使用人たちや屋敷に居た者たちを殺害した罪で捕縛させて頂きます」

「……くだらないな」


 盟約だか条約を口にする騎士団たちが剣を抜いたので、鬱陶しいと首を軽く捻っておいた。四人とも、何が起こったのか理解出来なかったのか、崩れ落ちる。


 悲鳴を上げる暇もなく殺した後で、簡単に殺しすぎたと後悔した。

 苦しんで殺すべきだった。あるいは大切な者を先に殺して絶望させてやれば、少しは私の気持ちが分かっただろう。


(奪われた者の絶望を――また味わうことになるとは……)


 怯えた視線に一瞥すると踵を返す。騎士達はそれ以上、制止することはなかった。仕掛けてくるのなら、鬱憤を晴らしても良かったがまずはエーティンだ。


「で、エーティンはどこに?」

「すでに妖精の国へ逃げ込んでいます。ククッ、連れ去る手間が省けたでしょう」

「そうだな」


 エーティンを助けるのは、自分しかいない。

 そして今度こそ、彼女と幸せな日々を過ごす。想定とは大きく異なるが、エーティンは私を思い出さないのがいけないのだ。最初から私を思い出し、手を取って助けを求めたのなら、どんな願いだって叶えてあげたい。


(大丈夫。時間はいくらでもある。……今度こそ、悠久の時を共に)


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