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雨降りの巫女と氷結の魔法士  作者: 渡辺 佐倉


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最良の雨の日に

* * *


魔法士の方たちとディーデリヒ様が戻ってきたのはそれからかなり時間が経ってからだった。

魔物の死体の処理をしなければならなかったかららしい。


詳しいことは聞いていないし、ディーデリヒ様も話そうとはしなかった。


「ご無事でよかったです」


けが人は若干出てしまったけれど皆軽傷で死者はゼロだった。


作戦は成功したと聞いたのに、ディーデリヒ様を見た瞬間また涙があふれてしまった。

生きて帰って来てくれて嬉しいと思った。


「スターダストは見られましたか?」


ディーデリヒ様はそう聞いた。

私は「はい」と頷いた。


「はい。キラキラと輝いていました」


と、もう一度はっきりと答えた。


「雪をありがとう」


ディーデリヒ様は言った。


「あの雪があったから、この程度の被害で済んだ」


それが本当のことなのか兵法の基本も知らない私には分からないけれど、そう言ってくれることがひたすらに嬉しかった。


「私の力を上手く使ってくださってありがとうございます」


呪いだとさえ言われた力を使ってくれて、私の力を見つけてくれて、ここまで連れてきてくれて、ありがとうございます。

色々な気持ちを込めたありがとうに、ディーデリヒ様はふっと優し気に笑って私を抱きしめた。


それから「帰ったら、結婚式を挙げよう」そう言った。


* * *


王都に帰ったら、氷結の英雄としてディーデリヒ様は大々的に歓迎された。

類まれなる英雄として、偉大な水魔法士として彼は皆からたたえられた。


私もそれを支えた巫女として慣れない歓待を沢山受けた。


初めての夜会にも晩さん会にも参加した。

私が名義上辺境伯家の令嬢となったからだという事は知っている。


慣れないそういったセレモニーやレセプションでもずっとディーデリヒ様は支えてくださった。



そして―――


結婚式の日が来た。


「真珠が雨のしずくみたいで、本当にきれいだ」


ディーデリヒ様は私のウェディングドレス姿を見てそう言った。

それから、ラウラ先生に「ドレスじゃなくて、新婦を褒めるものですよ」と怒られていた。


教会の入り口で外を見る。


「酷い雨だったら、魔法でどうにかするつもりだったけど、これはこのままがいいね」


そうディーデリヒ様は言った。


外はいわゆるお天気雨の状態で晴れ間なのに雨が降っていて、虹まで出ていた。

まるで今日の私の気持ちを反映しているみたいで少し恥ずかしかったけれど、あの日見た青空に似た空をそのままにしておいた方が良いと思ったのは同感だった。


「そうですね。

いい雨の日ですから」


私がそういうとディーデリヒ様も一際幸せそうに笑った。


END

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