スターダスト
私には何も見えないけれど戦いは始まっているのだろう。
雪は相変わらずしんしんと降っている。
曇天の空は相変わらず薄暗い。
寒さは先ほどまでより増した気がする。
作戦では前線にあちこちの邪木が集まっているらしい。
危なくないのだろうかという気持ちはある。
けれど、まだ勉強も途中の私がいう事に、思う事にもきっと価値は無いのだろう。
後詰に残った研究者の一人が雲を観測して、慌ただしく何かを書き記していた。
せめてそういうもの位手伝えるようになりたいと思った。
人の役に立ちたいと思う気持ちは今も変わらない。
けれど今はあの人の役に立っていることだけをただ願っている。
雲が薄くなった気がした。
私の異能が弱くなったのだと一瞬心配したけれどそうではないらしい。
雲はどんどんと薄くなる。
雪も見えなくなっていく。
ああ、あの時と一緒だと思った。
初めて青空を見た日。
あの人が魔法を使っているのだと思った。
思わずもう一度胸に手を当てて祈った。
その次の瞬間だった。
全ての雲も、降っている途中の雪もすべて消えた。
太陽の光が降り注ぐ。
天を見上げると空高く澄み渡る青空だった。
何かが裂ける様な音が聞こえた気がした。
空にキラキラと光るものが舞い上がる。
目を凝らすと、ずっと先、恐らく前線があるあたりからキラキラ光るものが巻き上がっていることに気が付く。
ああ、これが彼が言っていたスターダストだと気が付く。
太陽が反射してそれはキラキラと輝いている。
目を凝らすとそれが氷の粒の様なものだと気が付く。
「粉砕された邪木の水分がああやって見えている手筈となっております」
研究者にそう説明され、それほどロマンチックなものではないことを知った。
けれど、それはキラキラと輝いていてディーデリヒ様の言った通りスターダストの様だった。
美しい氷の粒が吹き上がるように輝いていた。
その光景にしばらく見入っていると、伝令が後詰に駆けつけてきた。
「作戦は成功です。
巫女様に感謝をとのことです」
私は実際ほとんど何もできてはいない。
それなのにそんな風に言われて、でも何かができたみたいで。
そっと涙が零れ落ちた。




