養子
「また、利点について聞くかい?」
アルノー様は面白そうに笑った。
それから、次の言葉が出てくるのと同時にこちらに駆け寄ってくる人がいた。
「これが利点さ」
こんな面白いものはめったに見れないからねえ。
アルノー様はそう言った。
駆け寄ってきた人はディーデリヒ様だった。
「知っているかい?
彼、冷徹の貴公子ってよばれているんだよ」
けらけらと笑いながらアルノー様は言った。
こちらへ来たディーデリヒ様はそう言って笑うアルノー様をにらみつけていた。
「大丈夫。別に君の婚約者様を盗りやしないさ」
アルノー様はそう言った。
「そんな独占欲むき出しで、仕事放りだしてここに来るなんて、前のお前からはかんがえられないなあ」
ニヤニヤと笑いながらアルノー様は言った。
「お仕事!?
大丈夫なんですか!!」
そうだ。彼らがここにきているのは仕事だからだ。
「大切なものができるってことはいいことだよ」
アルノー様は唐突にそう言った。
「だから、俺も協力してもらおうかなあと思って」
「それと、こうやって二人でこそこそと会うことに何の関係がある!!」
ディーデリヒ様の権幕はすごい。
「いやあ。彼女には俺の妹になってもらおうと思って」
アルノー様は軽い調子でそう言った。
それは私に養子の話をした時と同じ気軽さだった。
貴族が養子をとることはあるとは聞く。
だけど、こんな気軽さで聞くような話なのだろうか。
「そうすればこうやって面白いものが見続けられるだろう」
アルノー様は目を細めた。
それから「それに、困れば実家に帰るという体でこの辺境伯領で彼女をかくまってやれる」と付け加えた。
「本気なのか?」
「少なくとも平民の嫁さんもらうより、婚姻が楽に進むだろう?」
悪い話じゃないはずだ。
とアルノー様は言った。
それにうちの家門は異能の者を縁者にできる。
アルノー様は真剣な顔でディーデリヒ様を見た。
「お前、最初からそのつもりだったのか?」
「まあ、巫女様にその気があれば嫁にもらうという手が無かったと言えば嘘になるがなあ」
思ったよりもディーデリヒ様とアルノー様は仲がいいのかなんて、状況と全然違う事を考えてしまう。
「うちは政略で他国の人間を娶ることもあれば、状況によって養子をとることも珍しくない。
後ろ盾は必要だろう」
「その代わりの水の安定供給か」
「まあ、それもある」
「それ以外になにか?」
「是非巫女殿には王都でお友達を作っていただいて、ええ、この辺境の自然が大好きだというようなお友達を。そして『素敵なお兄様がいるの』とでも言ってご紹介願えればとは思ってるよ」
辺境伯領の嫁探しというのは思ったよりも大変らしい。
貴族のことはよくわからない部分もあるけれど、ディーデリヒ様はすぐに拒絶していない時点で、意味のあるものなのだろう。
であれば、私が口をはさむことではない。
だけど、もしも私が平民の娘で無ければと思ってしまう。
「妹よ!!
君が心配するようなことは何もないから」
アルノー様はすでに私を妹呼びしている。
それが少しくすぐったい気持ちにさせた。




