彼の誓い
「辺境が気に入りましたか?」
ディーデリヒ様はそう聞いた。
気に入るも何も私はこの場所のことをよく知らない。
その通り答えると、「アルノーとは楽し気だったと聞きました」と言われた。
笑っていたかもしれないけれどそれがマナーだからだ。
私が何か言おうとすると、はあとディーデリヒ様は大きくため息をついた。
それから、「違う。言いたいことは、そういう事じゃなくて」と言った。
ディーデリヒ様は舌打ちをした。
そういうことをする人というイメージが無かったので少し驚いてしまった。
「……嫉妬したんです」
困ったように笑いながらディーデリヒ様は言った。
「最初はほんの小さな子供だと思っていました。
運に見放されたかわいそうな子供だと」
ディーデリヒ様は私を見て真剣な顔で言った。
その子供が私だという事はすぐにわかった。
ディーデリヒ様は私の話をしている。
「可哀そうな子供に少しだけ笑顔になって欲しいという気持ちだけで魔法を使った」
それほど深い意味は無かった。
勿論、魔法とは違う異能のことについては知っていたからもしかしたらという気持ちはあったけれど。
淡々と話すディーデリヒ様の話を静かに聞いている。
「でも、空一面が青空になった瞬間、君の瞳が喜びで輝いたんだ」
ディーデリヒ様の言葉が一瞬強くなった気がした。
「それから少しずつ君から目が離せなくなった」
申し訳ないけれど、君の経歴は少しだけ調べさせてもらったよ。
だから、君がどれだけ強い女性なのかは知っている。
静かに言うディーデリヒ様の言葉は私に向けられた言葉で、でも私に向けられた言葉ではないみたいで胸がドキドキしていた。
「いい雨だね」
ディーデリヒ様は窓の外を見て言った。
「この雨をこれからもずっとあなたと見ていたい。
あなたの隣に立つ権利を私にくれませんか?」
ディーデリヒ様はそう言った。
その言葉の意味がわからないほど私ももう子供のままではなかった。
ふわり。
私の周りを異能の力が強く囲んだ気がした。
次の瞬間外の雨が一変した。
「……これはすごい。
雪か!」
外の雨が一瞬で雪に変わっていた。
あの時に見た氷の結晶の様な雪に。
けれど、すぐに我に返って、雪を雨に戻そうと試みる。
数分かかってようやく雪は雨に戻った。
この土地の作物や人々や生き物たちに影響がなければいいと思った。




