彼の信念
ディーデリヒ様の顔がいつもより甘ったるいものに見えた。
そんな筈ないのに。
「知っていますか?
魔法の力を持っている貴族の結婚はその地位よりも異能の力が優先されると」
ディーデリヒ様はそう言って笑った。
「水魔法士の地位は低いその理由はもう知っていますよね」
「場所によっては水が少ないからです」
水が少ない場所では使い物にならない水魔法士は他の魔法士から下に見られている。
「なら、水のある場所を拠点にすればいい」
そうですね、例えば海とか。
ディーデリヒ様はそう言った。
「港という場所は軍事的にも要所となります。
その要所を守る水魔法士。
海があるので少なくとも火と土の魔法士はろくに使えない状況になることが多い」
彼の話はまるで私が居なくても水魔法使いは大切にされるという話をされているようだった。
「実際、沿岸の警備部隊はほとんどが水魔法士だよ」
そこで力を伸ばして権力を手に入れればいい。
本当はそれだけの話なんだよ。
ディーデリヒ様は言った。
「俺一人ならそうやってやればいい」
そう言ってからディーデリヒ様は私を見た。
「うちの水魔法士はうちの領民の出身か寒村の出身者が多い」
多分そんな要所の港では受け入れられない人間ばかりだ。
「俺が何とかしたいのは水魔法士一般じゃなくて俺の元にいる仲間たちだ」
ディーデリヒ様が彼らを大切にしていることはわかっていた。
訓練場もよく整備されていたし研究もしていると言っていた。
ディーデリヒ様に大切にされている人たちがうらやましかった。
そして、その大切にされている人たちを私も大切にしたいと思った。
だから、覚悟を決めよう。
「あの人達の一番役に立てるのは私がここに残ってディーテリヒ様の支援をすることですか?」
私が訊ねる。
一番聞かなければならないことを。
「なんで、そうなる」
がっくりとうなだれた様にディーデリヒ様は言う。
「俺に、そんな力もないと思ってるのか?」
「そ、それは……」
貴族のことは少ししか勉強していない。
そんなこと聞かれても分からない。
「うちの家門だけで、水魔法士の地位の向上は必ず成し遂げると決めている。
それは、君と出会う前からもう決めていることだ」
だから、俺は前線にも立つしなんでもする。
「じゃあ、私は……」
どうするのがこの人の役に立てることなのだろう。
私に青空をくれたこの人に何をすればいいのだろう。




