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雨降りの巫女と氷結の魔法士  作者: 渡辺 佐倉


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凱旋パレード

 パレードは霧雨が降る中行われた。


 絵本の中の騎士様が着ている様な服を魔法士達は皆着て王都の石畳が整然としかれた道を専用の馬車に乗って進む。


 一部の魔法士達は馬に乗りまっすぐに前を見て走る。

 馬車は中からも外からもよく見えるように開け放たれたデザインだった。


 霧雨が降っているというのに、沢山の人だかりができている。

 魔獣に襲われるかもしれないことから解放されることの人々にとっての意味を肌で感じる。


 私は雨のことばかり毎日考えていたけれど、人々が気にしているのは安全に生きられるかなのだろう。

 今も羨望の眼差しで魔法士を見ている子供が何人も見える。


 そして熱狂するように大人たちが歓声を上げている。


 その中に私に対して、キラキラとした目を向ける人たちがちらほらといることに気が付く。

 今まで向けられてきた蔑みの含まれた目ではない。馬鹿にしたような目でもない。

 ただ、ひたすら尊敬の気持ちが込められた視線でこちらを見つめられて困惑する。


 いままで向けられてきた視線とまるで違って、ソワソワする。

 気恥ずかしい様な、それでいて少しだけ誇らしい様な、不思議な気持ちになる。


 私はただそこにいて雨を降らせることしかできないのに、それでも私のことを巫女様だという視線を向けてくれるのだ。


 気恥ずかしさが膨らんで思わず笑みが出る。

 その表情のまま、ディーデリヒ様を見あげると彼は私に視線を移した後、そっと自然な仕草で私の背中を撫でてくれた。

 それはまるで私を励ますみたいで嬉しかった。


 今まで水魔法士があまり活躍できなかったなんて思えない位皆、とても嬉しそうにパレードを見守っていた。


 祝賀会には平民は行けないルールらしい。

 少しだけきれいなドレスを着た人を見てみたいともおもったけれど、私はこの美しい刺繍がされたこのドレスがいいと思った。

 それで、私は思ったよりこのドレスが気に入っているのだと気が付く。


 やりたいことが増えた。

 好きなものも増えた。


 自分の持ち物も少しずつ増えた。


 それがちゃんと嬉しいと感じられるようになったのは最近だ。


 そうラウラ先生に言うと彼女は優し気に微笑んだ。


「大切なものを増やしましょうね」


 彼女は上品に笑うとそう言った。


 ラウラ先生は私のために沢山の本を準備してくれていた。

 一番上にあるのは、挿絵が入っている物語だった。


 夜の星の話らしい。

 美しい挿絵に描かれている星は私の巫女のドレスの金の刺繍の様に輝いている風に見える。


 言葉も私が覚えている範囲のものが多くてこれであれば少しずつ読めそうに思えた。


「本が読めるようになったら移動図書館を呼びましょうね」


 ラウラ先生はそう言った。


「移動図書館?」


 聞いたことのない言葉に私は聞き返す。


「ドラゴンが本棚を担いで地方の町や村を巡回するんですよ」


 大きな大きなドラゴンを飛竜使いが操って、本を届けて回るらしい。

 魔法士の駐屯地などにも呼べば来てくれるそうだ。


 私はドランゴンを見たことが無い。


「雨が降っていても来てくれるのかしら。

本が濡れちゃわないといいけれど」


 私がそういうと、「大丈夫ですよ」とラウラ先生は言った。


 またこのお屋敷で勉強しながら少しばかりの期間過ごした後、どこかへ魔法士の皆さんと行く予定らしい。

 旅先の楽しみが一つ増えた。


 竜が本棚を背負っている姿は上手く想像できないけれど、きっと素敵なんだろうなと思う。

 私は少しずつ、先のことについて考えられるようになっている。それが嬉しかった。

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