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雨降りの巫女と氷結の魔法士  作者: 渡辺 佐倉


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私の力の形

 これは雪というやつだろうか。

 それとも霜というやつだろうか。


 私の周りにはそんなものがふわふわと漂っている。


 神気というのはモヤのような霧の様なものだと思ったので驚く。

 夜霧の様に見えるのはヨイヤミさんだからなのか。


 彼の説明した彼の名にあった神気だと思った。


 私のこれはどうなんだろう。

 水に関係するからこの形なのだろうか。

 それともなんなのだろう。


 ディーデリヒ様は私は雲を呼ぶのではないかと言っていた。

 雲は小さな水の粒や氷の粒でできていると聞いた。もしかしたらそれなのだろうか。


 ヨイヤミさんを見る。

 不運は霧の形をしている訳ではない気がした。


「ヨイヤミさんにもこれは雪に見えますか?」


 ヨイヤミさんはうなずいた。


「これは君には何に見える」


 ヨイヤミさんは自分の周りを漂うものを指して聞いた


「夜霧の様に思いました」


 私がそう言うと、彼は少し驚いて、「そうか。そう見えるかもね」と言った。


「これは私が生まれたときからこの形なんですか」


 これはずっと私の近くにあったのだろうか。


「多分君が君の力をそうだと認識した瞬間からこの形だよ」


 それまでは蜃気楼みたいな空気のずれが見える場合が多い。

 そうヨイヤミさんは教えてくれた。


 私が私の力を認識したのはいつだろう。

 ただずっと何も考えないで目の前の雨を見てきただけだった。


 そう、あの時、ディーデリヒ様が目の前の雨をすべて氷に変えてくれた瞬間、私は初めて私の力を認識したのかもしれない。


 自分の手を見る。

 これは雪じゃなくて多分氷だ。

 あの人の魔法が私の力を形作ったのだと思った。


 それは私にとってとても当たり前のことで、とても嬉しい事でもあった。


 だけど、それをこの人にどう説明したらいいのか分からなかった。

 ヨイヤミさんがそういう事に興味があるかも分からなかった。


 それに普段はこれが彼が見せてくれた青空の証なのだと心の中にしまっておきたいとも思ってしまった。


* * *


 それから毎日ヨイヤミさんと力のコントロールの練習をした。

 それに用意してもらった本を毎日読んだ。


 この国の魔法士について、だいぶ分かった気がする。

 そして、水の力を使う魔法士が“使えない”属性扱いされていたことも知った。

 それでも彼らは毎日訓練を欠かさず今魔獣を討伐している。


 力のコントロールはだいぶできるようになった。

 時々雲の間から晴れ間が見えるときさえあった。


 逆に望めば雨脚は強くなった。


「それじゃあ」


 ヨイヤミさんはそう言った。


 私がどんなに頑張っても力の影響をゼロにできなかったように、彼の周りの夜霧も全く無い状態になることは無かった。

 長くいると周りに不運が降りかかるので別の場所に行かねばならないらしい。


 『また』とは彼は言わなかった。

 ディーデリヒ様も『また』とは返さなかった。


 そういう二人なのだろうと思った。


「それでは巫女様に末永い水の恩寵がありますよう」


 芝居がかった言い方でヨイヤミさんは言った。

 


「幸福な雨があなたに降り注ぎますように」


 私も芝居がかった口調でそう返した。

 それを聞いた瞬間ヨイヤミさんは驚いた顔をしてそれから「すっかり水魔法士の仲間だなあ」と言って笑った。

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