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第ニ話 異世界でのお仕事

「ん、あ……れ…………?」


 目を覚ますとそこには見慣れた風景が広がっていた。


「ここは学校か? そうだよな、変な女神やら異世界転移なんてあるわけないしな……ははは。 にしても人の気配が無いけど、何時も通り帰るか。」


 俺は鞄を持ち家に帰る途中違和感に気付く、信号機や街灯の他に家屋等には灯りが点いているのに対して人の姿が見当たらない。


「なんだよこれ……? だ、誰か居ないのか! 居たら返事してくれー!!」


 怖くなり大声で叫ぶが辺りはシーンと静まり、急いで家に着くとそこには居る筈の無いムキムキマッチョなナイスガイのリゼットが白いエプロンを身に着け料理をしていた。


「リゼット!? 何で俺の家に??」


「お、やっと帰って来たか。」


「何やってんだよ俺の家で!? 父さんや母さんは?」


「そんな事より腹減ってんだろ、飯にするか? 風呂にするか? それとも、オ・レ・か〜?」


「うわあああああ!!」


 リゼットは唐突に乙女の様にクネクネと振る舞うと周囲の背景がピンク色に変わり大量のハートマークが空中を漂い始め俺にキスを迫って来た。


「お……い…………」


「うぅ……ああ…………!」


「おい! 大丈夫か? しっかりしろ!」


「はっ! うわあああああ!!」


 悪夢から逃れる様に目を覚ますが、その時リゼットが俺の顔を覗き込んでおり正夢ではないかと錯覚し恐怖で取り乱してしまう。


「落ち着け! 大丈夫だから、な?」


「は、え……? 俺、帰れたんじゃ……?」


「無理も無いか、あんな怖い目に合ったんじゃあな。 うし、決めた! カザマが元の世界に帰れるまで面倒みてやる。」


「あ、えと……俺まだ混乱してるみたいだ。」


「分かってるって、そうだな先ずは今この世界で起きてる現象について詳しそうな“ジェニファー”を捜すか。」


「ジェニファー?」


「ああ、世界最高位の魔術師と呼ばれてたんだが理由までは分からんが称号を剥奪された上に国を追放されたらしくてな。 力になってくれるかどうかまでは分からねーが、何も行動しないよりはマシだろ?」


「そうだな、それでその魔術師は何処に行けば会えるんだ?」


「今は街でひっそりと占い師をしてるな、場所は知ってるから直ぐにでも行くか?」


 頷くとリゼットは焚き火を消し俺を立ち上がらせ先頭を歩いて行くのを着いて行くと森を抜け街へと続く外道が見えた。


「この道を真っ直ぐ行くと街に着くぜ。」


「あれってスライムか?」


「ああ、安心しなコッチからちょっかい出さなきゃ攻撃してこねえから無視して進むぞ。」


 平原になっている場所にはゼリー状のプルプルした中央には何か核の様な物が見える半透明のモンスター“スライム”があちこちに見えるが戦う必要性が無く、そのまま街の中へと俺達は入る。


「確かこの狭い路地の裏側だったはず……。」


(狭いな、リゼットがギリギリで通れる幅しかないし辿り着ける人は限られてるんじゃ。)


 リゼットは街の入口の近くの狭い道を横歩きしながら入って行くのを俺も着いて行く。


「あー、あったあった此処だ。」


「何か怪しい店に見えるな、黑魔術とかやってそう。」


「そりゃそうだろ、魔術師なんだからな。」


「そうだった。」


 狭い路地を抜けると店の看板には髑髏があしらわれた不気味な雰囲気の黒っぽい建物が建っていた。

 リゼットは手招きすると店の中に入って行き、俺も恐る恐る中へと入る。

 中には怪しげな魔法陣が床に描かれた様な痕跡や海外でよくある謎の仮面やら陶器等が飾らろていた。


「おーい、ジェニファー居るかー?」


「留守かな? 人の気配がしないんだけど。」


「おかしいな、この時間帯なら何時も通りなら居るはずなんだが……。」


「待ってた方が良いか?」


「ただ待つだけじゃ時間を無駄にするだけだしな、うっし街の案内をしてやる。 着いて来な!」


 店を後にしリゼットに着いて行くと漫画で見た様な冒険者ギルドに案内される。


「ここって冒険者ギルドか?」


「お、よく分かったな! そうだ、ここは冒険者ギルドつって数多の冒険者がモンスター討伐や素材の収集を請け負っている場所さ。 それだけじゃないぜ、今は仕事の無い奴にも街中の小遣い稼ぎ程度だが探せば冒険者で無くても受けられる依頼もある。」


「へえ、そうなんだ。」


「金無いんなら最初に案内するのは此処だと思ってな、ちょっくら依頼でも見て行くか?」


「ああ頼む。」


 俺はリゼットと共に冒険者ギルドへと入ると街中での依頼を整理している受付嬢の人に何か仕事が無いかを訪ねる。


「はい、お仕事の依頼ですね。 今はこれらの店の仕事がありますよ?」


「色々有るんだな……ん?」

(この文字、読めるぞ?)


「どうした、何か良さそうな仕事でも見つけたか?」


 リゼットに会った時から気にはなっていたが現地の人が日本語を話している事に加え異世界の筈なのに書かれている文字は明らかに日本語では無いが何故か読める様になっていた。


「これにしようかな、一度やってみたかったし。」


「お、そいつは“ドーナツの真ん中に穴を空ける”仕事だな。 店の住所は東地区の角の店か。」


「こちらの依頼ですね、では受注印を押しましたので仕事が終わりましたらこちらの終了印に判子を押してもらいましたら、またこの依頼書をお持ちくださいね。」


「一日もあれば終わりそうな仕事だし場所は俺が案内してやるよ。」


 依頼を受けリゼットにドーナツ屋に案内してもらい店の中に入ると「いらっしゃいませ!」と店員の女の子達が笑顔で一斉に声を上げる。


「あーその、俺客じゃなくてその……。」

(やばい、女の子と喋った事ないから何話したら良いのか分からねえ!)


 緊張で言葉を詰まらせる俺の背中をリゼットにバシッと掌で叩かれ正気に戻る。


「あー悪い、こいつは客じゃなくてだなバイトしに来たんだ。」


「あっはい、そうですバイトです。 これを渡せば良いんすか?」


「良かった、今人手不足で困ってたんです! 直ぐに入れますか?」


「勿論!」


「じゃ、オレはドーナツでも食って待ってるかな。」


 俺は店員の女の子に店の裏側に連れて行かれ中が空洞になっている円柱の型抜きを手渡される。


「はい、この生地の出来るだけ中央に穴を空けてね。 それと抜いた部分も使うから後ろの方をポンて叩いてこの箱に入れて頂戴。」


「お、おう。」


「じゃ、頑張ってね。」


 俺は狭い個室に入れられ、ベルトコンベアーから流れてくるドーナツ生地が止まったところで型抜きを使い穴を空け抜いた部分を箱に入れるのを確認した店員はドアを閉じ接客に戻る。


(あれ? 俺一人でこれやんの? 眼の前壁なんだけど、他の女の子との作業は?)

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