6話
オレの名前は五十嵐友祈
二十一才無職
ではなくて
今はソウとマロンの家の家政夫
そして、ソウの助手?
家政夫は職業だけど助手って職業なのか?
まあ、どうでもいいか
ソウとマロンはヤクザに追われてガケから落ちたオレを助けてくれた
ソウはカミサマでマロンはアクマだ
ソウの助手をするようになってから分かったことがある
ソウは意外と自分勝手だ
今日だって
『トモキ、出掛けるよ』
と、言われてどこに行くのかも何しに行くのかも聞かされていない
『ソウ、どこに行くの?』
と、聞いても
『行けば分かるよ』
と、一言言うだけだ
多分今だって聞いたところで、答えるはずもない
オレは黙ってソウに付いて行くだけだ
「着いたよ」
ソウが言う
着いた所は大きな鳥居のある神社だった
参拝客もたくさんいてにぎわっていた
「えっ?何?お祭りか何かなの?」
「違うよ、この神社はパワースポットとして有名な所なんだよ、だから、いつも、たくさんの参拝客でにぎわっているんだ」
そう言えばマロンが前に
『人間は小さな神社は願い事叶わなそうだからって大きい神社にばっかり行く』
って、言ってたな
確かに、オレがこの世界に来てから数ヶ月たつけれどソウの神社に参拝客など来たことがない
「先に、お参りするよ」
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お参りを済ませるとどんどんと神社の奥の方に進んで行く。だんだんと人影がなくなり木々かが生い茂っている方向へ進む。
何かオバケでも出そうな感じだ
「ダイジョーブ、オバケなんて出ないから」
ソウはオレの心が読めるのか?
しばらくすると、目の前に立派な洋館が現れた
良く、テレビドラマなんかで伯爵とか公爵とか貴婦人たちがダンスパーテイなどをやっているような建物だ
ソウがドアのまえに立つとドアが勝手に開いた
自動ドアなのか?
いや、そんなわけないか
中から人が開けたらしい
立っていたのは可憐な女の子だった。年の頃は十七、八だろうか
「ソウさま、こんにちは」
中から出て来た女の子が言う
そして、オレの方をチラリと見た
「こんにちは、久しぶりだね、モモちゃん、トモキ、あいさつして」
「こんにちは、五十嵐友祈です、よろしく」
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オレとソウは応接室に通された
さっきの女の子がお茶を出してくれた
「今、父を呼んできますね」
そう言って出て行ってから結構待たされた
だいたいソウは今日訪ねること伝えてあるのかな?
「ダイジョーブだよ、きちんと連絡してあるから、でも、ニシさんは忙しい人だから」
やっぱり、ソウってオレの心読めるのか?
そんなことを考えていると一人の男性が入って来た。若い頃はイケメンで絶対にモテモテだったでしょ。と言うくらいのダンディーなおじ様だ
「お待たせいたしました」
そう言うと、少し物珍しいものでも見るかのようにオレの方を見た
「失礼しました。ソウさまがマロンさま以外の方を連れていらっしゃるのは初めてだったもので、私、西澤太朗と申します」
「五十嵐友祈です、よろしく」
「この間から雇っている家政夫兼助手だよ」
ソウが言うと
「とうとう、マロンさまを捨てるんですか」
「ニシさんまでそんな変なことを言わないでよ、この間、マロンが変なことを言ったせいで、トモキは出て行こうとしたんだから。ボク、トモキに出て行かれるとホント困るんだから」
「失礼しました」
「今までマロンをこき使い過ぎたからね、少しマロンに、楽させようと思って」
「ソウさまは、相変わらずお優しいですね、もっとこき使っても、良いくらいなのに」
はあ?何言ってるの?このおじ様
さらっと何気にひどいことを言ったよ
いやいや、マロンをこれ以上こき使ったらマロン忙し過ぎて死んじゃうよ?あれっ?アクマって死ぬのか?まあ、そんなことはどうでも良いがこれ以上マロンをこき使ったらカワイソウ過ぎる
ソウは神社の仕事の他に、居酒屋を二店舗経営している。結構な数の従業員を抱えていて、従業員の給料計算などの事務仕事もマロンが担当しているし、取引先との打ち合わせなどのスケジュール調整もマロンがしている。マロンはあれでも優秀な秘書だ
「そう言えばモモちゃん、大きくなったね」
「今年、十八になりました」
「もう、そんなにるんだね、ボクたちも年をとるわけだ」
ん?カミサマって年齢あるのか?そう言えばソウとマロンって何歳なんだろう
「やっぱり、神社はモモちゃんが継ぐの?」
「ええ、そうですね、本人も納得していて、来年からK学院大学に通うことになっています」