1話
オレの名前は五十嵐友祈
二十一才無職だ
小学生の時に両親を事故で亡くし、ばあちゃんに育てられた
『カミサマはいつもみているからね、悪いことはしてはいけないよ。まじめに生きて、困っている人には親切にするんだよ、そうすれば、カミサマが必ず助けてくれるよ』
と、言うのがばあちゃんの口癖だった
小さい頃のオレはばあちゃんのこの言葉を信じていた
でも、今はもうこの言葉は信じていない
今までばあちゃんのこの言葉を信じてずっとまじめに生きて来たし、困っている人達には親切にしてきたけれど、カミサマに
助けてもらったことなど一度もなく、現在進行形でオレが困っている
バイト先でトラブルに巻き込まれてクビになり、アパートの家賃も払えなくなり、借金は増える一方
どうにもならなくなり、ネットで"内臓売ります"と言ったところ、ヤクザに命を狙われて逃げている
「何が、カミサマが助けてくれるだよ、カミサマなんてクソくらえだ」
叫びながら走っていたら、急に目の前が真っ暗になり意識が飛んだ
"オレこのまま死ぬのかな、まーいーか、オレを育ててくれたばあちゃんももーいないし、オレが死んだところで悲しむ人もいないし"
そんなことを思っていたら遠くで
「トモキ、まだ死んじゃダメだよ」
と、ばあちゃんの声がしたような気がした
目を開けると二人の男がオレの顔を覗き込み
「ダイジョーブ?」
と、聞いてきた
「えっ?ダレ?」
オレを追っていたヤクザとは違う男達だ
オレを追っていた男達は見るからに"ザ、ヤクザ"と言う感じだった
この二人はそんな感じじゃない
一人は小柄でおっとりとした可愛らしい顔をしている
もう一人はイケメンだが少し冷たい感じがする
「ボクの名前はソウ」
小柄な男が言う
「オレはマロン」
もう一人の男が言う
「オマエ、カミサマなんてクソくらえと言ってただろう」
マロンと名乗った男が言う
「確かに言った、死んだばあちゃんがカミサマが助けてくれるよって言ってたけれど、オレはカミサマに助けてもらったことなんて一度もないからな」
「本当にオマエはカミサマに一度も助けてもらったことなんてないって思っているのか。ソウがこっちの世界に連れてこなければオマエはあのヤクザに捕まっていたんだぞ。ソウが助けてやったのに感謝もしないのか。ソウはカミサマなんだから、オマエ、カミサマに助けられてるじゃないか」
えっ?こっちの世界って何?ソウがカミサマって?
オレの頭は混乱していた
「二人ともカミサマなの?ここはどこなの?」
「ソウはカミサマだけど、オレはアクマ、そしてここはオレとソウが住んでいる世界」
カミサマとアクマが一緒にいるの?これは夢?
「そして、オマエがソウに助けてもらったのは今回だけじゃない、あの事故のときだって、、」
「マロン、それ以上は言っちゃダメだよ、トミさんとの約束があるから」
トミさん?死んだばあちゃんの名前だ
「ばあちゃんと知り合いなの?」