表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/23

ジークハルト6

「お前が嫌でも、お前がしでかした結果だ。本当にバカなことをしてくれた。リステネ侯爵とは、たとえお前が婚約継続を望んだとしても、リリアーナ嬢が嫌がれば婚約は解消することで話がついている」

「父上!」

「あたり前だろう。落ち度はお前にある。一方的にお前が悪い。リリアーナ嬢は王家主催のパーティーで面子を潰されたのだ。潰したのはお前だ。何を思ってあのような行動をしたのかは知らんが…。お前が婚約解消を避けるには、リリアーナ嬢に許してもらうほかに道はない。リリアーナ嬢に許してもらえたとしても、リステネ侯爵の許しがでるかはまた別だがな」

父が非情にもそう告げるのを、わたしは茫然と聞いていた。

「こんやく…かいしょう…」

再び言葉が漏れた。

思い出されるのは、第二王子の誕生パーティーでのリリアーナの表情だった。一瞬の、あの強張った、陰った瞳は、見間違いではなかったのだと…。


父に泣きつき、どうにかリステネ侯爵へ取りなしてもらえるように頼んだが、どうしようもないと首を振られてしまった。

婚約解消はしたくないこと。謝罪をしに伺いたい、リリアーナと会って話がしたいことを、父からリステネ侯爵へ伝えてもらえることになった。


父との話が終わり自室へ戻ると、もう身体に力が入らなかった。倒れるようにソファへ座り、頭を抱える。

「こんやく…かいしょう…」

知らずにつぶやいていた。

どうしてこんなことになってしまったのか。こんなつもりではなかった。そんなことを考えても、どうしようもないことはわかっていたが、後悔のあまり叫び出しそうだった。

「リーナ…」愛しい彼女の愛称を呼んだ。他の誰かが、彼女をそう呼ぶのを聞くなど耐えられない。彼女がわたしではない誰かに優しく微笑みかけるなど、想像しただけで吐き気がする。ましてや、他の誰かと婚姻し、子供をもうけるなど…自分は気が狂ってしまうだろう…。

許してもらえるように、どうにかしたい。彼女に会いたい。何度も、何度でも彼女に謝ろう。

リーナに会いたい…。

リーナのことを考えるうち、夜は更けていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ