表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/23

ジークハルト8

そこに、リリアーナがいた。

毎日、何度も頼み込み、なんとかアランに侯爵家へ連れて来てもらうことができた。

門番にも家令にも、睨まれ阻まれたが、アランがとりなしてくれた。遠くから一目見るだけ…決してリリアーナに接触しない。そう約束して、ようやく敷地の中に入れてもらうことができた。

三か月ぶりに見たリリアーナは痩せてしまっていた。顔色もあまりよくない。

リリアーナに会えた喜びと、やつれてしまったリリアーナへの痛ましさに、胸が軋んだ。

全てわたしが悪いのだ。リリアーナがあんなになるくらい傷つけたのは、まぎれもなくわたしなのだ。罪悪感と申し訳なさと、彼女への愛しさといろいろな感情が自分の中で暴れていた。

庭にあるガゼボの見える茂みに、アランと一緒に身を隠していた。リリアーナに会いたくて、声が聞きたくて、触れたくて…飛び出しそうになる自分を必死に押し止めた。アランとの約束を破れば、次の機会はもらえないだろう…。


リリアーナはクッションにもたれて眠っていた。

側に、彼女の侍女であるミソラが控えている。

リリアーナから目が放せず、彼女を見つめてしまう。しばらく彼女を見つめていると、彼女の頬から一筋の涙が流れた。

「…ジーク…」

そう、かすかな声でわたしを呼び、再びこぼれる涙。

彼女の声が耳に届いた途端、もういてもたってもいられなくなった。胸が締め付けられる。

気がつくと、アランとの約束を忘れて、彼女のもとへ駆けていた。わたしに気づいて行く手を阻もうとするミソラをなんとかかわし、リリアーナのもとへたどり着く。

彼女の顔に手を触れ、親指で彼女の頬を拭った。拭いきれない涙の跡に、胸が苦しくなる。

そして、彼女を抱き寄せた。彼女の身体が知っているより一回り細くなっていることに心がギシリと音を立てる。彼女を抱き締めて、その髪に顔を埋めると、懐かしい大好きな匂いがして、涙が溢れた。

「リーナ、リーナ…」

彼女を抱き締める腕に力が入る。

「……ジーク…?」

ぼんやりと、かすれた声でリリアーナがぼくを呼んだ。目覚めた彼女の身体を一旦離し、瞳を見つめて再び腕に抱いた。寝起きでまだぼうっといているのか、抵抗しない彼女に、すがるように抱きついた。

「リーナ、リーナ、ごめん…ごめん。ぼくが悪いんだ。全部ぼくが悪い。君を傷つけて、泣かせてごめん。…君が好きだ…君しかいらない…ぼくには君だけなのに。本当にごめん。…ごめんなさい。君を愛してる。君がいないなら、ぼくの人生に意味はないんだ。ごめん。リーナ、本当にごめん。君を失ったらぼくは生きていけない。どんな償いでもするから、ぼくの側にいてほしい。許さなくてもいい。一生ぼくを許さなくてもいい…でも、ぼくを捨てないで。お願いだ…リーナ…本当に君だけなんだ。ぼくは本当に愚かでどうしようもない。それでも…君がいないと生きていけない。君がいないことに耐えられない。愛してる。リーナ、本当にごめん…ごめん。リーナ、ごめんなさい。君しかいらない。君だけを愛してる。リーナ、リーナ…」

顔を上げられず、リリアーナに泣きすがる。彼女を抱きしめた腕を離すこともできなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ