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リリアーナ4

わたしが目覚めたことが伝えられ、父が昼過ぎには屋敷に戻ってきた。

わたしの体調を気遣ってくれるが、返事が聞きたいとねだったわたしにキリアス公爵家からの返答を教えてくれた。ジークは婚約継続を望んでいるという。公爵家としての意向ではないのか問うと、ジークハルトは己の行いをひどく後悔しており、わたしに会いたいと言っているらしい。ジーク自身が婚約解消を拒絶しており、婚約関係の継続を強く望んでいると…。

キリアス公爵が父からの申し入れを彼に伝えると、嫌だ、どうにかしてくれと公爵に泣きついたらしい。公爵が息子の恥であるその時の様子をそのまま伝えてきたので、ジークが婚約継続を望んでいるのは本当だろうと言われた。

「そうですか…」

それしか言えなかった。父は、まず療養に専念し、体調を戻してからゆっくりどうするか考えてよいと言ってくれた。悩んだが、わたしが体調を崩したことをキリアス公爵に伝えたそうだ。だから、返事を急かされることはないと。キリアス公爵も心配してくれていたそうだ。公爵夫妻から可愛がってもらっていたことを思い出したが、今は何も考えたくなかった。


それから、ジークから毎日面会の申し入れがあったが、会いたくないと拒否し続けた。ジークに会うことが恐かったし、体調を崩した姿を見られたくなかった。ジークからは、毎日朝と夕の一日二回花が届けられた。メッセージカードさえ受け取りを拒否したわたしに、それでも毎日見舞いの花束が届けられた。使用人に届けさせることはせず、毎回必ずジークハルトが自分で届けに来ているそうだ。

使用人の話だと、ジーク自らが公爵家の庭や温室から花を選んで摘んでいるらしい。

毎日届けられる花束に、ジークハルトがまだわたしを忘れていない、気にかけているのだと実感できた。

自分でもひどい人間だと思うけれど、それでも、まだジークに会う気持ちにはならなかった。

面会もメッセージも受け取らないのに、花束だけは受け取る…そんなふうに、ジークを試すようなことを続けていては、いつか見限られてしまうかもしれない…。でも、まだ許せない…。

ジークハルトに会うことが恐いのは、自分でもどうしてかわからない。でも、恐かった。


数日経っても、わたしは食べられなかったし眠れなかった。わたしが食事を摂れないので、料理人がおやつを作ってくれるようになった。少しでも栄養が摂れるようにと、子供の頃に補食として作ってくれていたような野菜を練り込んだクッキーや蒸しケーキが届けられた。

夜は眠れないので、昼間にうたた寝をすることが多くなった。部屋に閉じこもるわたしを見かねて、晴れた日はミソラがわたしを外に連れ出した。庭のガゼボで過ごすと、日差しが暖かくウトウトする。ミソラは優秀で、知らぬ間に昼寝をさせられている。他の侍女ではわたしを起こしてしまい、昼寝には至らない。

食べられない、眠れない…自分でもみるみるうちに痩せてやつれていくのがわかった。

起き上がれるようになってから作り直したディドレスも、すでにサイズ直しが必要になっていた。

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