リリアーナ1
投稿初心者です。
マイペース更新頑張ります。
よろしくお願い致します。
喧嘩の原因が何であったか…それは、忘れてしまうほど、他愛ないことだった気がする。
喧嘩をして、仲直りできないまま時が過ぎていった。
第二王子の誕生パーティー。
彼から、エスコートの申し出がなかったから、わたしは弟にエスコートしてもらいパーティーに出席した。
彼は、一人で出席するのだと思っていた。
女性は男性のエスコートがなければパーティーに出席することはできない。婚約者や親族のエスコートが必要で、そのためなら、社交界にデビューする前の男性でもエスコート役としてパーティーの出席が許される。
男性は、社交界デビュー後なら、エスコートする女性がいなくても一人でのパーティーが許される。
「リステネ嬢、ごきげんよう」
聞きなれた声が、わたしを名前でなく、家名で呼んだ。
振り返り、一瞬息を飲む。エスコートしてくれている弟の腕に触れている手に、一瞬力が入る。
側にいる弟しか気づかないような一瞬のわたしの変化。
気づいた弟が、一瞬気遣わしげな視線を寄越した。
そこには、彼がいた。わたし以外の女性をエスコートした、わたしの婚約者。
自分の衣装と対になるデザインのドレスを着せた女性をエスコートしていた。
女性は親しげに彼に体を寄せている。女性は必要以上に彼にくっついているように見えた。彼も、それを許している。
「ごきげんよう、ジークハルト様」
声が震えないようにするのが精一杯だった。
その女は誰?
なぜ、わたしではない女をエスコートしているの?
第二王子の誕生パーティーのために、新しいドレスを仕立てさせていると言っていたのは、そのドレスではないの?
なぜ、その女が着ているの?わたしのためのドレスではなかったの?
一瞬でいろいろなことがわたしの中で渦巻いた。
「こちらはカトムバ男爵令嬢だ」
ジークハルトは、わたしの気持ちにかまわず、エスコートしていた女性を紹介した。
それに続けて、女性が話始める。
高位貴族から話かけられてから話をしなくてはいけない。そんな最低限のルールさえわきまえない女を、彼は王族主催のパーティーでエスコートしていた。
女がまだ何か話していたが、話を遮り
「第二王子殿下に挨拶に参りますので、失礼します」
そう言って弟とその場を辞した。
弟とともに第二王子殿下に挨拶と祝辞を送り、パーティーホールへ戻ると、彼がパートナーである男爵令嬢を誘ってダンスに向かうところだった。
「アラン、帰りましょう。殿下への挨拶も済みましたし、わたくし、気分が悪いわ」
弟を促し、わたしたちはパーティー会場である城を後にした。