20あ、やべ、、もろ暗殺隊になっちまってるわ、、
入植者達の家や村のインフラが完成し、先に水路が敷かれた。
むかしからある村と違い、入植地の農家は比較的集まって(近くに)建てられる。
主に防衛面で都合が良いから。
はじめに作った村長宅は大きく、領主が来た時に滞在できるような規模になっている。先に領主邸と言っていたものだ。「わしはそう度々は来られん。なので長の邸にするが良い。儂が来た時は泊めてもらう」と領主様が言ったので、村長邸になった。
リーダーは自分たちにはでかすぎると言ったが、「領様が来た時に滞在される場所だぞ」と泉が言うと理解した。
なので、屋敷の前庭?広場も広い。
領主から村長に指名されたリーダーは”戦える種別”のグループから幾人か候補を選んでもらい、自警団を編成した。
毎朝前庭で訓練し、その後それぞれの仕事に向かう。彼らは変態して戦うので、あまり武器は用いない。
この入植地に住む者達は、それぞれの適性や好みに応じて仕事を選ぶ。
自警団に属するような者の一族は、ほぼ「狩り」だ。仕事の最中でも、訓練の中身を応用して、訓練をしながら仕事をできる。
弱い者達の多くは畑仕事。田んぼは無い。土ができていないというのもあるが、濡れるのを嫌う者達が多かった。
が、
小館の大工が作った広い露天風呂の味を知った村民達は、徐々に濡れることに抵抗を減らしている。
稲作ができれば農業収入が上がるのだ。村長らは可能ならば稲作をできるようになりたかった。
領都からはあまり人は来ない。監視もされず、いいのだろうか?と思う者も少なくはなかったが、村長は「そこまで気にされるほど大きくも強くもない。」と。
たまに泉がふらりと顔を出し、何日か滞在し、サジェスチョンを与えて帰っていく。
ある時、細いのに強い糸を持ってきた。
「オオカミたちの戦闘に利用しろ。利用方法は自分たちで考えろ。」
更に、
「ウサギ人達は、耳が良いのではないのか?もしそうなら、警戒や斥候の一員に一人入れておけばかなり違うのでは?」
とも。
村長達は、その「思考法」「視点」を学んだ。
「もし、泉氏なら、、」といろいろ考えてみるのが面白くもあった。
半年も経てば、皆獣に変態した時に、毛艶が見違えるように良くなっていた。
鳥一族らは、季節の変わり目には抜ける羽を集めておいて、冬用布団を造り、「献上用」とした。
年貢の時期になると気温も下がってくる。爬虫類系達はスチーム暖房の効いた室内か、乾燥小屋で木工、竹や藁のを使ったものなどを作り始める。焼き物小屋で焼き物に精を出す。小館から伝え聞いた技術や工芸等を、更に自分たちで昇華させようと努力した。
年貢の時期、まだこの村は年具を免除されているが、幾ばしかの献上品を納めた。
その後、泉は月に一度程度訪れるたび、村に何がしかの土産を持ってきてくれた。
そして、あるとき、泉は金属の小さな札を人数分500枚ほど持って来た。それぞれに皆のなまえが書いてある。
「これは、我らが領主様から賜われた身分証だ。お前らはこの武国国民ではない。しかし、お前らは今は東武領領民である。お前らの身分は東武領領主あずまたけしのぶただ様が保証してくださる、という証だ。このことに関し、領主様は国王の許可を頂いておる。
どうどうと胸を張ってここに住め。
しかし、忘れるな?お前らが不始末をしたら、領主様の顔に泥を塗る、ということにもなるのだ。
領主様が誇れるような者になれ。」
泉は一人ひとりなまえを呼んで与えた。
熊人への鎖が、変態後の首が太いのでかなり長くなったのは仕方がないことだった。
村の自警団も様変わりしてきた。
変態し獣になっても、戦う時に道具を使うことを覚え始めた。
鋼の六角棒を振り回す熊とか、どう闘えばいのだろうか?
口に小刀を咥えて、走るというより飛び回っている狼の群れから、どう逃れれば良いのか?
しかも狼の群れは強い糸で罠を張りながら。
犬や猫でさえ小刀を咥え、かぎ爪を装備し、襲いかかる。
入植地は僻地なので一般的に盗賊などに襲われやすい。
が、ここは当初数度襲われたが全て全滅させたので、最近は盗賊も来なくなってしまった。
自警団は自分たちの訓練の成果を実地でみてみたいので、盗賊を心待ちにしていたのだが。
敗戦時、旧王都からここに来るまでに多くの魔獣に襲われた。猛獣くらいなら獣人達が群れでかかれば殲滅や撃退はできる。が、魔獣も強力な奴に来られたら、撃退もきびしかった。
しかし、と自警団の皆は今は思う。今なら撃退くらい可能だろう。連携がうまく行けば討伐さえも。と。
実際、泉は訓練を見ていて思った。「今のこやつらならば、この領を襲った攻国の領軍程度であれば、全滅させられるのではないか?」
泉は領都での任務に付いた小館の獣人チームを入植地に連れていき、自警団と交流させた。
「自由に技術を教え合い、お互いを高めあえ。期限は1週間だ。」
その後、領都で小館隊の訓練の様子を見た泉
あ、やべ、、もろ暗殺隊になっちまってるわ、、、
武国の戦闘狂達にとって、暗殺など最も忌避すべき戦法だ。
そんなんで敵の親玉を潰してしまったら、戦闘は起きないのだ。なので絶対にやっちゃーいけない方法なのだ。
他国はいざ知らず、戦争でもほとんど自国側に人的被害が無い武国だから言えることであって、他国の上のものがそんな言葉を放ったら、新月の晩で人生終るだろう。
偵察部隊は暗殺部隊ではない。武国は暗殺をしない。その理由を小館隊の皆に話した。
皆は納得した。
「少人数で終わらすより、莫大な敵を縦横無尽に殺戮するほうが楽しいよな?♪」と、納得していた。
流石武国、それも東武領の部隊である。
領主邸
「どうだ?入植地は」領主
「はい、とても元攻国国民とは思えないほどまでに」泉
「ほう、して、、、ほれ、、自警団はどうだ?」
「・・・・私が見る所、、、、うちの領軍全軍とでいい勝負かと、、、勿論小館隊を含めた全軍で」
「・・・・ますます儂らの出番が無くなってしまうではないか、、、はぁ、、、」
入植地の戦闘員が数が多いからね!!
「そう言えば、、、元攻国の民たちで、うちの国境方面に向かった集団は、もう入植しているんですよね?」ガク
学はすっかりわすれていたのだ。泉も何も学に言わなかったので、思い出しもせずにいた。
「うむ、村は、できたな。・・・が、モフ度は低いぞ?熊とか爬虫類とか鳥とか、モフりたいか?毛艶もまだ良くない。」泉
「・・んー、、まだいいっす、、、」
小館のモフ度がかなり高いので、特にそそられなかった。