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後後58 西の国、上陸


「陸地だな」

「ああ、陸地だ」

「ほんと、陸しかないですね」

「全く陸」

「そのまんま陸」

「土のみ」


船橋から目の先の陸地を見ている司令官、副官、船長、領主様、泉さん、そして俺。


緑色が無い。

畑はおろか、木々も無い。


「粘土質なんスかね?水がないとか?」俺

「いや、北側かなり先に、河口があります」船長

「見た目からして粘土質じゃないなぁ」泉さん

言った俺もそう思ってた。実家百姓だからわかる土を見る目!w


「だけど、なんか土が痩せていそうなんですよね、色味で見ると」俺

「あー、そうかもな、、随分昔だから忘れかけてるが、、、飢饉ときの土の色味にみているなぁ」泉さん

「え?んじゃ干上がってる?」

「うー、、干上がるのもそうだが、、土のちからがなくなっているのも干上がりやすく成るんだよな」


「鉱山の付近とかの土地と似たようなものとか、か?」領主様

「はい、鉱山とは違うと思うけど、、同様なものでしょうな」泉さん


「食いつぶした、のかな?」司令官、続ける

「いや、昔な、阿呆な領主がいて将軍の言う事聞かずに領地を乱開発し、田畑が壊滅したとこがあってなぁ、、結局征伐するしかなくって儂が出向いたのだが、、土がひどかった、、数年間寝かせてやっと幾分耕作できはじめたくらいだった。堆肥などをどれだけ使ったことか、、、

ここから見る限り、その時の色と似ているけどな」


「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」


「それでまだ金属資源でどうにかしようと思って北山領に?馬鹿じゃなかろうか?」領主様

「馬鹿だから、そうしたんでしょうねぇ」司令官


「領民、国民は?」俺

「・・・ここから見える範囲にある民家らしきもの、ほぼ潰れかけていませんか?」船長

「逃げたか、、」泉さん


「林を、森を潰した時点で終わりは決まってるんだけどな、それがわかっている者も百姓には少なくなかったはずなんだがなぁ、、」泉さん

俺もそう思う。


「まぁ、内陸に進軍してみなけりゃわからんだろうが、、、期待はできないな」領主様



結局オレらはまる禿にびっくりして土地に目が行ってしまったが、湾を見ても船らしき船はいない。漁業用だろう、小舟が海岸に何艘も引き上げられているだけが見える。

それを扱うはずの漁民らしき人影はない。



埠頭の近くの建物にも、人影はない。


「兵らしきものすら見えないな」司令官

「逃げたんでしょうか」副官

「だろうなぁ、、」司令官


ーー


農国艦隊と南部諸国艦隊に合流したそれぞれの中型蒸気船からは何の連絡(小型転送陣での手紙)も来ていない。なので問題無いと踏み、

司令官が船長に小舟で偵察隊を出したいと要望し、船長は小舟の用意をした。


東武領兵士と小館部隊が乗り込み、その数艘の小舟はほどなく浜に乗り上げた。

即座に小舟から散っていった数班で埠頭から周辺村落を調査しているあいだに、

農国艦隊と南部諸国艦隊が、それぞれうちの蒸気船1隻づつ連れて合流してきた。


司令官は、中型蒸気船1隻と砲を乗せた帆船2隻が組になって、沿岸の北と南を調査に出した。



いっときほど経って、海岸の調査隊から手旗で安全の連絡を受け、東武領兵士が乗る船から埠頭に着けた。

最も精鋭な東武領兵士達が、下船後に周囲要所をおさえて港の安全を確保した。

その後、農国、南部、の国々の兵士たちを先に降ろし、埠頭が空いたら武国兵達がおりた。


最初に降りた調査隊は、その頃にはもう5里四方くらいの安全確認を行っていた。


調査隊人狼班隊長野上

「人っ子一人いません。死骸もなしです。最近埋めた形跡もありませんでした」

人狼でも最も優秀な連中が調査してそうなのだから、人間が何もいえることはない。



司令官達と俺達は旗艦から下船し、港の司令部であったであろうと思われる、この港の中では最もしっかりしている建物に司令部を構えることにした。


調査部隊は休息を入れるよう、ほかの部隊は各々各所に建物を確保し、輜重部隊は司令部周囲に食事をつくれる場所を確保し即座に食事の作業をできるようにせよ、と司令官は命令を各所にだしていた。


領主様、司令官達は司令部に入り、いろいろ話し合ってるので、オレと泉さんは無用みたいなので領主様に目で抜けると合図して、外に出た。




「なんか、ひりひり感、全く無いですねー」俺

「ああ、こりゃ、戦闘なしなんじゃないか?もう占領地処理状態?」泉さん


「国民もどれだけ残っていることやら、、」

「ああ、多分、ほとんど餓死してるかな」泉さん

・・・・・・・・

俺らは馬を借りて少し出てみた。



街道であったろう道を内陸に向かうと、ほどなく村であったろう集落跡。

その周辺の元は田畑であったろう土地、、

粘土ではない。が、もうガチガチだ。踏み固められた硬さではなく、勝手に固くなったもの。


「ほんっとに土のみだな」

馬を降り、土を手に取った泉さん


「土ってな、土だけじゃだめなんだ。

(うん、知っている、うちも百姓だし)

だから、土の様子を見て、休ませたり、不足している何かを足してあげたり、しなけりゃならない。

川の氾濫の後、土地が豊かに成るのは、そういったものが氾濫によって川から得られるからだ。

ミミズも多くなり、土は勝手にこやされて行く。

それを利用して作物を育てる。

作物を育てると、その養分が作物に取られる。

そこを見極めながら土を使っていく。

堆肥をやりゃ良くなるってもんでもない。堆肥は一部で、それを撒いたあと、堆肥があることによって、いろいろ発生したり寄ってきたり、でその影響で土がよくなっていく。徐々に。


無理やり、何年も何年も無理やり作物を作らされたら、いい加減、土も力を失うわな、、、


ここまでひどくされた畑を見るのは、はじめてだ」


ごめん、化学肥料ばんばん使うと、どーしてもこれ寸前まで行くんですけど、、で、無理やり作ってるから、作物は匂いも味も、こっちの世界のと全く違う別物だったんですけど、、、

泉さんには絶対言えない、、、

でも、山(森の中)の土は最高だったな。


「土の臭いが無いですよね」俺

「ああ、全く無い」




それから北に上り川に行ってみた。


「・・・・・・・・・・」

「ええ、上流に鉱山ありますね、これ」


「・・どこまで馬鹿なんだ、、こいつら、、、」泉さん

怒りすぎて冷静になっちゃってる感じな泉さん。


でも、

ごめん、行動成長期の世界は似たようなもんだった、、

これも言えないなぁ、今言ったらブチ切れるだろうよ。


その後、少し川を遡って見たが、何もなく、支流も見つからなかった。支流があった形跡は、あった。干上がったのだろう。


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