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気配とか察知できんのすごくね?
あの任意同行から数日、いつものように学校から家に帰る道の途中後ろから気配が迫っていることに気が付いた。
「尾行か……」
おそらく警察だろうが人目を気にしているのかわからないがすぐに接触する気はなさそうだ。丁度いい、俺もそろそろ我慢の限界だったんだ、そういうことなら自分から行ってやろうか。
そのまま自宅の前を通り過ぎ付近にある廃工場に足を運んだ。ここはずいぶん前から稼働してないくせに金もないのか撤去されることもなくそのまま放置されている場所で不良のたまり場になってたりする。何度か俺も来たことがあるしな。
今は人がいないようで丁度いいといったところだろう。
上に進んで適当なドラム缶に座り込むと目をつむって待機した。時期に警察が来るだろうしそれまでは待つのみだ。
そのままでいるとカツカツと階段を上がってくるような音が聞こえてきた。音からして複数ではなく一人だけのようだ。
「また会ったわね深黒くん」
「そうですね、こんなところに来るなんてどうしたんです?」
「ちょっと用がある人物がここに来たものだからついてきたのよ。そういうあなたはどうしてここにいるのかしら?」
「何やら付けられていたようなのでここに避難しておこうかと」
「そうなのね」
「ええ、そうです」
お互いに実の結ばない話をする。俺としては退屈しのぎになっていいのだが相手はそろそろ本当のことを言うだろう、その時になったら俺も対応するか。
「深黒くん、この前も来てもらったのだけど今回もまた聞きたいことがあるの。ついてきてもらえるかしら?任意同行として」
「へぇ、この前ほぼほぼ言った気がしますけどね」
「それでもまだあるのよ」
「そうですか。じゃあ任意同行とのことなので俺は帰らせてもらいますね」
「……待ちなさい」
ドラム缶から腰を上げた俺に対してさっきよりも小昇圧を加えるような声音で止めにかかってきた。まあこの任意同行に応じたらそのまま逮捕とかになってただろうしな。
「……あまり手荒な真似はしたくなかったのだけど……深黒狂也あなたには殺人共謀罪が問われています。大人しく同行しなさい、そしたら乱暴しないわ」
「……ふっ……ふふふっ」
ようやくか、その実感に思わず笑みがこぼれてしまった。
「……何を笑っているの?」
「ああ、すいませんようやくここまで来たのかって思ったら思わず」
「……それはつまり罪を認めるってことと取っていいのよね」
「そうですね、ここまできたら特にあらがっても無駄そうですしね」
この廃工場の周りに複数人の気配がある、おそらくは警察のお仲間さんだろう。能力を使えば余裕で逃げれるだろうけどいったん捕まる気分っていうのも味わってみたい。
近寄ってきた刑事さんに手錠をはめられ押されるようにパトカーに押し込められそのまま俺を挟むように座ってきた。実際にやられる経験っていうのは初めてだ、それに前はパトカーに乗れなかったからいい経験だな。
沈黙で包まれた車内はそのまま騒動もないまま警察に連行されていった。
こんなにポンポン進むもんなのかね?




