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考えてたのと違った風になったった。
「交換」
手のひらを上に向けるようにしている俺の手の空気と男を見て能力を発動する。
当然俺が入れ替えたのは男……ではない。正確には男の中といったところか、その証拠に俺の右手には真っ赤な臓器が握られていた。垂れてきた血がポタポタと開いたごみ袋に落ちていく。
俺の能力【交換】は基本的に場所と場所とを入れ替える能力だが俺が見えている場所ではなく壁などで見えない状況だとしても俺が大体認識していたら能力は発動する。
例えば俺の部屋の外から本を能力で取り出そうとすれば位置さえ覚えていたらそれを認識することで交換の対象になる。さすがにその場合その場所……この例の場合は家や部屋のドアを視認してなければいけないが。
ただ初めて訪れる部屋など中を見たことがない場所では能力は発動できない。位置や間取りがわからないからな。それと俺が認識した時と位置がずらされていたら能力は発動せず不発に終わる。
まあ俺が何を言いたいのかといえば服やら筋肉やらで見えなかろうと人間の臓器の位置は大体の人間が同じ、さらに俺はその対象を双眼鏡越しとはいえ視認している。つまり交換で俺は視認した人間の心臓を奪うことができるというわけだ。
そんなことを考えていたらゆっくりと鼓動を続けていた心臓がその動きを止めた。それを確認すると心臓をごみ袋へと突っ込み――――
グシャッ!
右手に思い切り力を籠め心臓を握りつぶした。肉や血が飛び散りごみ袋全体に広がっていく。
丁度頂点まで行き下り始めたジェットコースターから悲鳴が聞こえてきた。
再び双眼鏡で彼らを覗き込んでみると男は血を吐いて倒れ、女性の方も腰を抜かしているようだ。ただ悲鳴でも挙げたのか近くには続々と人が寄ってきているようでこのままなら時期に退場が促されるだろう。
その光景を見て改めて俺が一人の人生を奪ったのだという実感がわいてきた。人を殺めたのは初めてではないがどうしてだろうか今回は前回とは違い高揚感が湧き上がってきた。
……あぁそうか。
「これで俺は追われる身か……」
前回の殺人の時はそういう意識はなかったが今回は違う、犯罪という意識を……やってることが悪だという自覚をもってやった、その意識の差が大きかったんだろう。
「ふふ……」
思わず笑みがこぼれてしまった。目的は達成、これでこれから俺は警察に捕まるかもという意識の中暮らしていくことになるのだろう。つねに全員を警戒したり、いつ捕まるのかと怯えるのかもしれない、自分に捜査の手が伸びてくるかもしれない。
それは、それはとても……退屈しなさそうだ。
『現在テーマパーク内で事件が発生いたしました。ご入場中のお客様は至急係員の指示に従いご退場下さい』
丁度テーマパーク全体にアナウンスが流れる。少しの混乱があったようだがそれも落ち着いたようで今はまとまって出口に誘導されている姿が見える。
「俺も行くか」
ごみ袋を適当にあの男の死体の付近勝つあまり目立たないところに置いておき、交換を使って人気のない場所へ移る。そこからは不自然じゃない程度に出口へ向かう流れにそって移動をした。
出口が目の前になると丁度そこを見ている監視カメラが一つあったので目線を合わせて微笑んで置き。
「交換」
適当な場所とすり替え破壊しておいた。この行動に特に意味はないが強いて言うなら挑発という過去の姿を印象付けておくという目的だろうか。
それを行った後は素直に出口から出て、そのまま帰路についた。
結論:文才がない




