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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.4 「今が良ければオールライト」
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22

ちなみに純粋なヒロイン力で全キャラを比較するとデイジーがダントツで一位です。

「あー……俺は何してるんだろう」


 時刻は夜の9時、ドロシー主催のパーティーを無事に切り抜けたスコットは浴室で項垂れていた。



『はい、それでは今日のスコッツ君の大勝とデイジーちゃんの無事を祝ってー』

『『『乾杯ー!!!』』』


 頼んでもいないのに再びお祝いパーティーを開催され、スコットは頭を抱えた。


『ご安心ください、スコット様。今日の飲み物は全て ノンアルコール で御座います。どれだけ飲んでも問題ありませんぞ』

『……お心遣い感謝しますぅ! 執事さんんん!!』

『うふふふ、ご所望ならちゃんとしたアルコール飲料もご用意致しますわよ?』

『やだぁぁぁぁー! もうアルコールはやだぁぁぁぁー!!』


 昨日は参加出来なかったデイジーも加え、本日のパーティーもそれは賑やかなものになった。

 今朝の苦い経験を踏まえて酒を自重したスコットだったが……



『うぅうううっ! 私は、私は騎士失格だぁぁぁぁぁ……うぉうううう!!』

『オレだって男失格ですぅうう! 男なのに、男なのにあんな情けない泣き方して……うぅうううっ! 皆に迷惑かけて……っ!!』

『泣くなー! お前ら泣くなーっ! 女が廃るぞぉー! 何があっても女は笑っていれば勝ちなんだよ! おら、飲めぇー! 飲んで元気出せぇぇー!!』

『領主様ぁぁぁぁー! ブリジットは、ブリジットはやはり駄目な女なんですぅうううう! 領主様の言う通り、騎士になど、騎士になどなるべきではありませんでしたぁっぁあぁああああ!!』

『うぅうううううっ! うぅうううううっ、笑えません……笑えませんよぉ! オレはアル姐さんみたいな強い女にはなれないんだぁあああ!!』

『……あの、あれ大丈夫なんですかね』

『うーん、大丈夫じゃない?』

『うぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!』

『もうオレは男に、男には戻れないんだぁぁぁぁぁ!!』

『大丈夫じゃなさそうですよ!?』


 アルマが取り出したブランデーを切っ掛けにブリジットとデイジーが大荒れし、ついには服まで脱ぎだしてパーティーどころでは無くなったので本日はお開きとなった。


 スコットは昨日の自分はあんな感じだったのか……と胸を痛めた。



「……でも俺、別に祝ってくれなんて頼んでないよな」


 昨日今日と自分主役のパーティーを開かれたわけだが、彼は一切頼んでいない。


 むしろ今日に至っては反対すらしたが無意味だった。

 ご機嫌のドロシーと上機嫌な使用人達は意気揚々と準備し、結果として悲劇は再び繰り返された……。


「あー……早くこの会社から逃げないとなぁ……」


 パーティーが終わった後、ドロシーにお風呂を勧められたスコットは断りきれずに入浴。

 現在の憂鬱げなバスタイムに至る。


「……でも、あそこまで歓迎してもらえると、やっぱり少し嬉しい……かな」


 このままウォルターズ・ストレンジハウスに残るかは別として、今まで誰かに歓迎された事など殆ど無かったスコットはドロシー達の笑顔と温かい歓迎の言葉を思い出して照れ臭そうに頬を染める。


「……いや、浮かれるなスコット。此処はヤバいところだ! いくら悪魔の力を制御出来るようになったと言っても俺は」

「よ、よう、スコット!」

「ファッ!?」

「オレも一緒に入れてくれよ! 別にいいよな!!」


 スコットが揺るぎかけた決心を再び改めようとした時、浴室にデイジーがやってきた。


 ……裸で。


「ふぁぁぁぁぁっっ!?」

「な、なんだよ! 変な声出すな!!」

「い、いやいやいや! 何で入ってきてるんですか、デイジーさんんん!?」

「な、何って! 男同士だから別に問題ないだろ!? 他のメンツは女ばっかなんだから!」

「いやいやいやいや!!」

「お、女よりも男の裸見てる方が心が落ち着くんだよ! 察しろよ!!」


 顔を染め、恥ずかしそうに身体を隠しながらデイジーは言った。


「そもそも、お酒に酔いつぶれて倒れてたじゃないですか! 大丈夫なんですか!? アルコールが」

「アルコールゥ!? そんなもん5分も寝れば分解されるよ! この忌々しい身体(ボディ)を舐めんな!!」

「で、でも……あっ! す、すみません!!」

「こら、顔を背けんな! 何か……恥ずかしくなるだろ!!」

「むしろ恥ずかしがってくださいよ!」

「何でだよ! スコットはオレを女として見てるっていうのか!?」

「そ、そういうわけじゃ」

「じゃー、気にするな! 目の前のヤツは男だ! オッパイがついてるだけの男だ!!」


 そう言ってデイジーは浴槽に浸かる。


「……!」


 スコットは極力、彼の裸を見ないように心掛ける。


 本人は男だと主張しているが、その身体はどう見ても女性だ。

 その黄金率にも等しい抜群のプロポーションにしっかり実ったバストはスコットの精神に揺さぶりをかけるには十分すぎる魅力があった。


「……なぁ」

「はいぃっ!?」

「……今日は、ありがとな」

「へっ?」

「スコットがオレを助けてくれたんだろ?」


 デイジーは揺れる湯面を見つめながら呟く。


「……」

「オレ、正直言うとスコットのことバカにしてたんだ。社長はベタ褒めしてたけど全然戦わないし、ギャアギャア騒いでるだけだったから……」

「そ、そうですよね……」

「だからスコットに助けられたって聞いても信じられなかった。怪獣の死体からスコットが近づいてきた時も、食われたショックで変な幻覚見てんのかなと思ったよ」

「あー……」


 スコットは思わず顔を背ける。


 無自覚だったとは言え、デイジーが怪獣に食べられそうになってもわざと助けなかったのだから。



(すいません、すいません、デイジーさん。俺のせいなんです。デイジーさんが酷い目にあったのは全部……!)


「でも、アル姐さんから嫌っていうくらいに聞かされたよ。スコットのお陰でオレは助かったって。オレの為に本気で怒って……怪獣を滅茶苦茶にぶっ倒してくれたって」


(違うんです、違うんです。あれはただの八つ当たりだったんです。しかも社長に怖がってもらう為に少し演技も入ってました。あの時の俺にはデイジーさんのことなんて……!!)



 デイジーは罪悪感に苛まれるスコットにそっと近づき、照れ臭そうに言った。


「スコットは凄いやつだったんだな」


 心から感謝しつつも素直になれない彼の不器用な笑顔を見て、スコットの心拍数は一気に上がった。


 そして、自分への嫌悪感を更に強めた。


「す、すす凄くなんてないですよ! デイジーさんの方が!!」

「う、うるさい! 先輩の褒め言葉は素直に受け取れよ! こっちが恥ずかしくなるだろ!?」

「そ、そんなこと言われても……! それに俺は!!」

「あー、くそっ! もう十分温まっただろ!? おら、さっさと風呂から出ろ!」

「ええっ!? ちょ、ちょっと待って」

「いいから出ろ! 先輩の命令だ! さっさと出ていけぇー!!」


 デイジーは顔を真赤にしながらスコットを浴室から追い出す。


「なんでだよ……」


 いきなり入ってきた上に理不尽に追い出され、スコットは大いに困惑した。


「……」


 浴室で一人残ったデイジーは煮え切らない表情で濡れた天井を見つめる。


「……違うだろ、オレ。アイツの背中を流しに来たんだろ……くそっ……」


「あーあ、やだなぁ。心の中は、()()男のはずだったのにな……」


 頬を僅かに赤く染めながら、デイジーは残念そうに本音を漏らした。


「勘違いすんなよ、新入り。オレは全然惚れてねーぞ?」



 chapter.4 「今が良ければオールライト」 end....


同率一位のキャラが人妻ですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 欲を言えば、デイジー入浴時に独特の体の艶めかしさというか、頤から落ちる雫だとかくっきりした鎖骨だとか、等があったら個人的にグッジョブです。場面的に、スコット君は細部を見れなかったと思うのです…
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