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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.20「汝の愛を選び、汝の選びを愛せよ」
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7

「……」


 場所は変わって異常管理局セフィロト総本部。大賢者が特別面会室でドロシー達を待っていた。


「あの子は次のインレに勝てるかしら」


 ドロシーはインレと戦うことを運命づけられている。


 それは彼女が生まれた瞬間から定められていることであり、彼女もそれを受け入れている。かつてはインレに対抗できる魔法使いも少なからず居たのだが、それも100年前の大災害が原因で失われてしまった。今やインレに対抗しうる存在はドロシーと大賢者しかおらず、更に彼女を撃退できるのはドロシーのみだ。


「……私には信じることしかできません」

「……そうね。あの子も彼女達のように勝利できることを祈るしかないわね」


 だが、インレは出現する度にその力を増してきている。


 更にインレは倒されても一定期間で復活してしまう。彼女には死という概念が無く、現れる度に撃退し続けるしかない。それは天使たちも同様であり、いくら滅ぼしてもまたインレと共にこの世界にやって来る。


「もし負けてしまう事があれば……この街ごと消え去るしかないわ。それが()()()()()()()()私達の務めよ」

「……ですが、インレの力が強まる一方でドロシー・バーキンスの力は弱まりつつあります。やはり彼女は……」

「……それでも私達はあの子に頼るしかない。どうしようもないわね」


 大賢者は沈痛な面持ちで紅茶を手に取る。出来ることならその役目を代わってあげたい。もし時を戻せるならば今すぐにでも100年前に戻りたい……


 だが、時は巻き戻せない。


 今の大賢者に出来ることはドロシーの勝利を祈り、そしてこの街と外の世界の均衡を保ち続けることだけだ。


「せめてあの子には……少しでも良い思い出を作って貰いたいわね」

「……そう、ですね」


 サチコの用意した紅茶に一口つける。


「……ふふ、もう冷めてしまったわね」


 冷たくなった紅茶にもう一口つけて大賢者は切なげに笑い、どうか今のドロシーにはその時が来るまで幸せに過ごしてほしいと願う……



 ◇◇◇◇



「しゃ、社長!?」


 場所は戻って老執事の運転する車の中。突然、ブラウスのボタンを外すドロシーにスコットは動揺する。


「大胆になるって言うけど……このくらい?」

「え、えーと……その」

「もっと?」


 臍まで肌を顕にした所でドロシーはスコットに胸を押し付ける。


「ふぅぉっ!?」

「このくらい?」

「だ、駄目ですよ、社長! もうすぐ管理局に着きますしルナさんも見てますから!」

「大賢者様には遅くなるとお伝えしておきましょうか」

「執事さっ……ぬわぁっ!?」

「ふふふっ、酔ったドロシーはもっと凄かったわよ?」


 隣で見ていたルナもスコットに抱きつく。


「どのくらい凄かったの?」

「ふふっ、それはね」


 ルナはスコットの顔を胸に押し付け、愛おしそうにむぎゅっと抱き締める。


「もぎゃあああーっ!?」

「これくらいよ」

「……なるほどっ」

「もがっ! いきなり何するんですか、ルナさ」

「こんな感じねっ!」

「あぎゃーっ!!」


 ルナを見習ってドロシーは勢いよくスコットに抱き着き、開けた胸で顔面をホールドする。


「のわああああっ!」

「そうそう、その調子よ」

「ふふーん? スコッツ君は酔った僕にこんな事されてたのねー?」

「ほやあああああっ!」

「ふふふっ! えいっ、えいっ!!」


 ドロシーは嬉しそうにスコットを思い切り抱き締める。目の前が温かく柔らかい塊で一杯になり、スコットはビクンビクンと痙攣する。


「んふふっ、僕の胸はどう? 気持ちいい?」

「……ッ!!」

「ふふふっ、駄目よドリー。そんなに強くギュッとしたら息ができないでしょう?」

「ふやあっ」


 ルナはドロシーの胸元からスコットの顔を引き抜いて今度は自分の胸で優しく包み込む。


「これなら苦しくないし、いつまでも抱きしめていられるわ」

「むむむ……あんまり変わらないような気もするけど?」

「そんな事ないわ。ちゃんと息ができるもの」

「じゃあ次はそうするから代わって」

「ふふっ、もう少しだけ」

「お義母様ー?」

「うふふふふっ」


 スコットの頭を撫でてルナは幸せそうに微笑む。まるで人形か何かのように二人の魔女に弄ばれるスコットは柔らかい人妻の胸の中で沈黙していた。



(……もう、いいかな……俺、頑張ったよな……)


(やっぱりルナさんも……素敵だなあ……)



 そしてスコットの中で徐々に膨れ上がる欲求。


 そもそもルナが自分を試していると勘ぐったのが間違いだった。今の彼女にそのような素振りは一切見られない。娘の想い人に手を出すような人だと思いたくなかったから、自分にそれだけの魅力があると信じられなかったからその結論に逃げただけだ。


「ふふっ、私の胸はどう? 気に入って貰えたかしら?」


 ここまでされれば受け入れるしかない……彼女は自分に惹かれているという事実を。


「……悪くは、ないです」

「むむっ!」

「そう、良かった」

「ぼ、僕よりお義母様の胸の方がいいって言うの!?」

「誰もそんな事言ってませんよ!?」

「じゃあ、早く僕の胸に帰ってきなさい!」


 ドロシーは両手を広げてスコットを誘う。


「ほら!」

「……あ、あの……」

「早く来なさいー!」

「いや、その、ルナさんが放してくれないんですけど」

「ふふふっ、もう少しこのままでいましょう? ずっと甘えてくれてもいいのよ?」


 ルナはスコットの頭をガッチリとホールドしながら挑発的に笑う。


「むごおおっ!?」

「お母様ーっ!」

「こうしていると落ち着くの」

「だめーっ!!」


 我慢の限界に来たドロシーは顔を真っ赤にしてスコットに飛びついた。


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