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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.20「汝の愛を選び、汝の選びを愛せよ」
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6


(ふやああああああっ!?)



 ドロシーはスコットの行動に衝撃を受ける。


 まさかここまでアッサリと陥落するとは。昨夜、抱き合いながら聞かせてくれた言葉や今朝に見せた優しげな顔は何だったのか。



(ス、スコットくん……そんな……っ!)



 あまりのショックに未だかつて無いレベルで動揺し、その大きな瞳からはボロボロと本物の涙が零れる……


「ふふふ……そう。それなら……」

「でも、あくまで()()()()()()()()なので。過度な期待はしないでくださいね」

「あら」


 スコットは今度はドロシーを強く抱き締め、ぷるぷると震える彼女の耳元で囁く。


「……社長は、普通と違って特別な女ですから」

「……!」


 スコットの一言がドロシーの傷付いた心に再び火を灯した。



(はううううううっ!)



 僅かな時間で何度も地獄と天国を行き交うドロシー。100歳を越える魔女が、自分より遥かに年下の青年に良いように踊らされる。



(こ、このっ……! スコット君め……スコット君め……!!)



 だが、なかなかどうして悪くない。


 普段はスコットを翻弄する側の自分が、今日に限っては翻弄される側だ。いつもならばかなりの屈辱を覚えるものだが



(やっぱりこの人、最高だわ! 惚れ直しちゃう!!)



 今日のドロシーは素直に悦んだ。


「……ふ、ふふふふっ」

「どうかしたの? ドリー」

「何でもないわ、お母様」


 ルナに満面の笑みを向け、ドロシーはムギュっとスコットに抱き着く。


「さっきまでお母様が凄く怖く見えたけど……気の所為だったみたい。ごめんなさい」

「ふふっ、そう。よかったわ」

「うふふふっ」

「ふふふふっ」


 二人の魔女はスコットを挟んで笑い合う。



(あはははー! 何言ってんだろ、俺ー! ヤバーイ! 死にたーい!!)



 勢いとは言え黒歴史レベルの小っ恥ずかしい台詞を吐いたスコットは特大の精神的ダメージを受けていた。



(こういうのはイケメン俳優やコミックのキャラクターが言う台詞だよー! ははははー! きっと二人は内心ドン引きだろうなー! いっそ殺してくれねえかなー!?)



 覚悟を決めたところで長年培養されてきた自己嫌悪は覆せない。ある意味では自分自身が一番の怨敵である彼にとって今の台詞は自傷行為にも等しかった。



(い、いや、もう覚悟を決めろ! このまま意地を貫くしかない……っ! 見ててくれよ、キャサリン!!)



 しかし時はもう戻せない。吐き出した言葉は飲み込めない。スコットは抱きしめた二人の温もりで寿命をマッハで縮めながらも精一杯の強がりをした。


「はっはっは、やりますな。スコット様」


 そんなスコットに老執事は掛け値なしの称賛を送った。



(流石はお嬢様の選んだお相手です。まさかお嬢様だけでなく奥様まで落とすとは)



 ドロシーとルナ。二人の魔女の寵愛を得たスコットのこれからを思うと自然と笑みが込み上げてくる。マリアの反応から何となく勘付いてはいたが、ここまでルナがスコットにご執心だとは。


「今夜も祝杯ですな」

「ふふふ、そうね。良いブランデーを用意して」

「……お酒はやめてください。お願いします」

「僕も今夜はお酒に挑戦してみようかな」

「やめましょう?」

「んやっ……!」


 スコットはドロシーの頬を軽く指で突いて釘を刺す。


「社長にまだお酒は早いです」

「……僕は君より年上なんだけど?」

「でもすぐ酔い潰れて大変な事になるから駄目です」

「どう大変になるの?」


 ドロシーは不敵な笑みを浮かべてスコットに擦り寄る。


「えーと、それは……」

「いつもより大胆になるとか?」

「まぁ……そんな感じですね」

「ふーん?」


 余計な事を言ってしまっただろうか。スコットは嫌な予感を覚えてそっと視線を逸らす。


「どのくらい大胆になるの?」

「……」

「スコッツくーん?」

「……でも、あれは大胆と言うか……いつもより子供っぽくなって歯止めが利かなくなったという感じでして」

「むむっ」


『子供っぽい』という言葉に反応してドロシーのアンテナがピンと立つ。


「子供っぽい……?」


 急にドロシーの声色が変わる。


「……社長?」

「ふーん……スコッツ君には、僕が子供っぽく見えてたのね」

「え、いえ……そういう意味じゃないですよ? 酔っ払った社長が」


 スコットが台詞を言い終わる前にその唇を強引に奪う。


「あら……ふふふ」

「〜!?」

「ん、ちゅっ……はぁ」

「しゃ、社長!? いきなり何す」

「んちゅっ!」

「ほぷぁっ!?」


 ドロシーは間髪入れずに何度もスコットに口付けをする。息もつかせぬ怒涛の連続キッスにスコットは為す術もなく圧されまくる。


「……ふふっ」

「ちょ、社長……!?」

「これでも僕は子供っぽい?」


 挑発的な表情で口元をペロリと舐めるドロシーにスコットの胸が激しく高鳴った。


「本当にスコッ()君は生意気だね? 僕よりずーっと年下の癖に」

「……」

「そんなこと言うスコット君には……わからせてあげなきゃ」


 ドロシーはくすりと妖しく笑い、白地のフリルブラウスのボタンをゆっくりと外した……


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