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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.15 「八十年後のあなたへ」
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知らないほうが幸せなことって割とありますよね。

 キャロライン・マッケンジー

 生年月日:1931年/11月15日

 年齢:17歳

 分類:最優先保護対象人型A種⇒最優先討伐対象人型S種


 彼女は大賢者専属秘書官クレイン・マッケンジー氏と一般人女性ケイト・マッケンジー女史との間に生まれた女性です。記録に残っている最終的な身長は158cm、体重は45kg。潜在的に魔法への高い適正を持って生まれ、将来は魔法使いになる事を目標にしていました。しかし、生まれつき心臓に問題があり、8歳の時に悪性侵食型ラナンクルス心筋症を発病しました。疑似心臟を移植して延命処置が施されましたが彼女と疑似心臟の親和性に難があり、20歳まで生きられる確率は30%でした。1948年11月15日、推定時刻午前10時30分頃、ロンディノス・シティ第13番街区にあるマッケンジー邸前に発生した異界門から現れた肉食獣型亜種異世界種デアヴォロソ・ケイルスに襲撃され彼女は消息不明となりました。彼女の遺体は捜索から30日が経過しても確認できず、クレイン氏が特別な許可を得て所有していたAクラス異界器具である跳躍時計の所在も不明となっており、会議室にて緊急会議が開かれた後にキャロライン・マッケンジーは跳躍時計を使用して現在から別の時代に逃亡したのだと判断され、彼女は最優先保護対象人型A種に指定されました。以降、彼女の自宅は異常管理局の管理下に置かれ、24時間体制で監視されることになります。監視に当たっている職員は彼女の再出現を確認次第、即時保護してください。


 2003年11月15日を以て対象を最優先討伐対象人型S種に指定、監視に当たっている職員は彼女の再出現を確認次第、現地に向かって即刻処理してください。対象との接触、会話、及び保護しようとする試みは恒久的に禁止されます。


 追記:過去の予想通り、事件発生から50年後の1998年11月15日午前10時30分にキャロライン・マッケンジーが再出現しました。彼女は職員に保護された後、即刻病院に運ばれ体内に寄生していた幼体の摘出手術を施されました。しかし幼体は彼女の心臓部に癒着し、更に未成熟の身体から細い触手状の器官を彼女の体内に張り巡らせており、そのままでは摘出が不可能であることが判明。仮死状態にした後に、心臓部を幼体ごと摘出し彼女の細胞から培養された最新型の擬似心臓と代替生体組織を移植して蘇生処置を試みましたが意識が戻らないまま翌日の午前2時に死亡が確認されました。また、彼女は跳躍時計を所持しておらず何かの拍子で時計に触れて彼女だけが着地点に跳躍してしまったのだと思われます。心臓部に癒着していた幼体は貴重な検体として生物部の第一研究室に凍結状態で保存されました。彼女の死亡をもってマッケンジー家獣害事件は終了し、マッケンジー邸の監視体制を解除、邸宅は依然として協会の管理下に置かれます。職員達は跳躍時計の捜索に専念してください。


 追記2:1999年11月15日午前10時30分、キャロライン・マッケンジーの再出現を確認。マッケンジー邸は監視を解除されていた為、彼女は屋敷から出てリンボ・シティ13番街区を放浪していたところをドロシー・バーキンスに保護されました。ドロシーはキャロラインを連れて管理局本部に向かい、彼女の仮死休眠処置を要求。彼女は仮死休眠処置を施された後、管理局が所有する特別収容保護施設に預けられました。彼女が何故、再び出現したかについては現在議論が交わされています。


 追記3:2000年11月15日午前10時30分、特別収容保護施設で仮死状態にあったキャロライン・マッケンジーの生命反応が消失、それと同時に着地点にて彼女が再度出現しました。マッケンジー邸には管理局職員が屋敷の点検のために訪れており、彼女を保護。彼女は管理局が所有する特別収容保護施設に運ばれ、再び仮死休眠処置が施されました。99年の彼女が何故突然死亡したのかについては現在調査中です。尚、体内の幼体は未成熟の状態で死亡しており、その因果関係についても彼女の死因と同様に早期解明に尽力してください。


 追記4:2001年同日、仮死状態にあったキャロライン・マッケンジーの死亡が確認されました。それと同時に着地点にて彼女が再度出現。これにより通常の仮死状態で彼女を保存しておく事が不可能と断定され、今度は冷凍睡眠による長期休眠処置を施されました。しかし全身の50%が凍結したところで体内の幼体が突如暴れだし、未成熟のまま彼女の身体を突き破り逃れようとしましたがそのまま凍結しました。彼女は即死し、幼体も生命活動を停止。この一件で凍結による休眠処置すら行えない事が発覚し、来年以降彼女が現れた場合は保護せずにその場での即時処理が検討される事になりました。活動を停止した未成熟のデアヴォロソ・パイデスは解剖された後、生物部の第一研究室に標本として保管されました。また、今回の彼女の再出現で跳躍時計の能力にある仮説が立てられ、来年以降マッケンジー邸は常に監視される事になりました。


 追記5:2002年同日、キャロライン・マッケンジーが出現。マッケンジー邸を監視していた管理局職員によって処理され、彼女の遺体は生物部の第一研究室に送られました。午後3時頃、デアヴォロソ・パイデスは発生しませんでした。解剖の結果、体内の幼体は卵から孵化した直後の幼生体から一切成長していなかった事が判明。この事から成熟が完了する前に母体が死亡した場合、幼体も同時に死亡してしまう事が確認され、以降彼女は発見され次第即刻処理を優先される事になりました。


 追記6:2003年同日、キャロライン・マッケンジーが出現。彼女はマッケンジー邸に訪れていたドロシー・バーキンスと1時間ほど会話を交わした後、彼女に処理されました。死体は彼女の意向で幼体を摘出された後、マッケンジー家が眠る墓に埋葬されました。来年度からはドロシーが彼女の処理を担当する事が本人の申請によって決められ、毎年11月15日には彼女に連絡を入れる事が大賢者様によって義務付けられました。



 ◆◆◆◆



 追記13:2010年同日、キャロライン・マッケンジーが出現。ドロシー・バーキンスは同日に発生した異界門による騒動の対処の為に不在であり、代わりの職員が派遣されました。職員は彼女の処理を躊躇い、彼女を連れて車で逃走。追跡にあたった管理局職員や警察官と交戦し、数人を再起不能にした後に姿を消しました。逃亡開始から約4時間後、職員は彼女と潜伏していた11番街区の廃ビルに現れたドロシーに無力化されました。しかしキャロラインは職員が処理される数分前に潜伏先から逃がされており、ドロシーによる処理も間に合わず時刻が午後3時になったことで彼女から人型亜種異世界種デアヴォロソ・パイデスが発生しました。街中で発生した為、通行客を数名襲撃し母体へと変えた後に近くにあった飲食店に侵入。そこで新たなコロニーを形成しました。駆けつけた職員達は母体となった民間人を救出しようと飲食店に潜入しましたがパイデスの執拗な攻撃を受けて多くの犠牲者を出し、最終的に飲食店ごと処理するという手段によってパイデスは駆除され、飲食店関係者や目撃者、被害者の親族達を対象とした大規模記憶処理を施すことで事件の沈静化が図られました。その時、ドロシーは先の戦闘で負傷しておりパイデスとの戦闘は不可能でした。この事件以降、彼女の処理を担当するのはドロシー、彼女が何らかの事情で不在の場合は大賢者専属秘書官に限定される事が義務付けられました。


 追記14:2011年同日、キャロライン・マッケンジーが出現。マッケンジー邸で待機していた職員によって処理されました。本年度におけるマッケンジー家獣害事件の報告は以上になります。職員達は来年度に備えつつ、所在が不明となっている跳躍時計の確保に尽力してください。


 追記14α:キャロライン・マッケンジーが邸宅にて処理されず、生物部所属の職員達の独断で第一研究室に秘密裏に移送されていた事が発覚しました。移送された彼女は午後3時を迎えるまで監禁状態におかれ、デアヴォロソ・パイデスが発生したと同時に死亡。誕生したパイデスの亜成体は成体となる前に、仮死休眠処置を施された上で保存されていました。事案発覚後、独断行動に及んだ職員達は即刻処理され、保存されていたパイデスの亜成体も解体処理を施されました。彼らが残したレポートによると、キャロラインはパイデスが体外に出る直前に死亡し、亜成体が発生した後の彼女の遺体には心臓が残されていなかったと記されていました。後にパイデスの解体中に心臓部の形状が彼女の疑似心臟と一致する事が判明し、幼体が心臓部に寄生するのは、母体の心臓を奪う事で初めて生命維持が可能になり、新たに得た心臓を覆うようにして肉体を成長させる為であるという仮説が立てられました。この仮説によって母体が死亡した場合、同時に幼体も死亡してしまう理由に大凡の説明がつく事になり、キャロラインの再出現後は即時処理を徹底する方針が取られる事になりました。今回のような事案の再発を防ぐ為、マッケンジー家獣害事件専門のチームの設立が検討されています。



 ◆◆◆◆



 追記29:2026年同日、キャロライン・マッケンジーが出現。ドロシー・バーキンスに処理されそうになった彼女はその場から逃走し、ドロシーの魔法を受けて重傷を負いながらも屋敷から出たところで警官隊に射殺されました。彼女の遺体の回収を担当していた生物部所属のマチルダ・カーマイン女史は目前で彼女が射殺されるのを目撃し、その場で昏倒しました。本年度におけるマッケンジー家獣害事件の報告は以上になります。職員達は来年度に備えつつ、所在が不明となっている跳躍時計の確保に尽力してください。


 追記30:2027年同日、キャロライン・マッケンジーが出現。マッケンジー邸で待機していたドロシー・バーキンスによって処理されました。遺体の回収を担当していたマチルダ女史は昨年度の一件が原因で重度の心理的外傷を負い、職務遂行能力に不安が残った為に代替要員として姉のブレンダ・カーマイン女氏が召喚されました。本年度におけるマッケンジー家獣害事件の報告は以上になります。職員達は来年度に備えつつ、所在が不明となっている跳躍時計の確保に尽力してください。


 A.A.2027/11/15 担当書記官 プリシラ・ホーラー


それでも好奇心には勝てません。決して。

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