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ここからは砂糖多めの物語をお送りします。
「んふふっ、おはようスコッツ君」
スコットは気まずい朝を迎えていた。
昨夜、眠れずにお酒に手を伸ばしたのは覚えている。
勢いに任せて一気飲みし、そのまま深い眠りに落ちたのも何となく想像できる。
「昨日は凄かったね?」
だが、半裸のドロシーが自分の上に跨っている意味がわからなかった。
「はぁぁぁぁぁ────ん!?」
スコットは絶叫した。
その青い瞳に映るのは薄く頬を染めた金髪の美少女。
美しい金糸のような髪は解けて少々乱れ気味。
ボタンが解けた胸元からは彼女の生意気なバストが覗き、両腕でムニュッと寄せられた禁断の果実はいつもよりも大きく見える。
寝間着の裾からは彼女らしからぬ挑発的な黒い下着が覗き、スコットの視線を惑わせる……
そして極めつきはこのドロシーの表情。
恥じらっているような、誘っているような。何とも表現し難き大変いじらしい乙女の顔と仕草がスコットのハートを粉砕した。
「はわぁぁぁぁぁぁ─────っ!!」
「静かにしなさい」
「はぶぅっ!?」
衝撃のあまり絶叫するスコットの頭をドロシーは軽く叩く。
「な、何で、社長が……っ!?」
「こら、二人きりの時はドロシーさんでしょ?」
そしてくすくすと挑発するように微笑み、顔を真っ赤にする彼に抱きついた。
「じゃあ、続きをしよっか?」
「はふううううん!?」
「僕をこんなにした責任は……ちゃんと取ってもらうよ?」
ドロシーは柔らかく生意気なバストをスコットに押し当てる。
(何があった! 一体、何があったんだ!? 俺が酒を飲んで潰れている間に、彼女と何があったんだぁぁー!?)
昨晩、ドロシーと何があったのか全く記憶にないスコットは滝のような汗をかいて震え上がった。
(ふふんっ、なーんてね。僕を驚かせてドキドキさせた罰よ)
(僕はただ君の寝顔を見に来ただけなのに、君があんなことするから……)
実際の所は寝惚けたスコットに ただ強く抱きしめられて 少しお尻を揉みしだかれて ちょっと押し倒された 程度に留まっているのだが、今のドロシーにとっては刺激的な体験だった。
かくいう彼女も寝ている彼に執拗にキスをしたりと色々と悪戯しているので彼だけを悪く言う資格はあまりない。
(僕をこんな意地悪な子に変えたのは君なんだからね? スコット君)
それでも今日はスコットをイジメたい気分だった。
「せ、責任ってなんですかぁぁぁー!?」
「責任は責任だよ。見れば解るでしょ?」
「いやぁぁぁぁーっ!!」
寝ている間にドロシーと 一線を越えてしまった と勝手に想像したスコットは両手で顔を押さえる。
(うううっ! ついに社長に手を出してしまったのか……! しかも酒に潰れている間に! 最悪だ! 最悪すぎる……!!)
女のような悲鳴を上げてメソメソと泣くスコットを満足気に見つめた後、ドロシーは彼を開放する。
「それじゃ、朝食にしましょうか。お腹空いたでしょ?」
「……食欲なんてないです」
「駄目よ、ちゃんと朝は食べなさい。一日で一番大事なんだから」
ガチャッ。
「はっ!?」
「あ、誰か来たね。ルナかな?」
「ちょっ、早く退いてください! 見つかったら……!!」
「はいはい」
ドロシーは名残惜しそうにスコットから退いて胸元のボタンを閉める。
「あら、おはよう。二人共、よく眠れたかしら?」
ルナがニックを抱えて現れる。
ほっこり笑顔のドロシーと、気まずそうに目を逸らすスコットの姿にルナはうふふと微笑んだ。
「……やるじゃないか、スコット君」
ここで何かを察したニックが悔しげに言い放った。
「ニックさぁぁぁ────ん!?」
「あはは、ごめんね。僕はニックくんの事も嫌いじゃないんだけど」
「やめてぇぇぇー! そういうこと言わないでぇぇぇー!!」
「い、いいんだ。気にしないでくれ……! 君達が結ばれる事に私が文句をつける資格はない……! どうか彼女を幸せにしてやってくれ、スコット君!!」
「おい、やめて! やめてください! 心が折れる!!」
「うふふ、それじゃ朝食にしましょうか。美味しい目玉焼きを焼いてあげるわ」
「食えるかぁぁぁ────!!!」
スコットは今日も叫ぶ。
魔女達はうふふと笑い、ニックは大きな瞳に切なげな光を灯す。
悪魔の切実な叫びと共に、彼の忙しくも充実した一日が始まった……
chapter.12 「天使と悪魔とエイリアン」 begins....