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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.10 「夢では全てがうまくいく」
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紅茶がメインですが、私は緑茶もそこそこキメます。いいですよね、ニポンが誇るグリーンティーも。

「くっ!」


 徐々に圧され始めたインレは不愉快そうに魔法を放つ。


「そんな顔をしたインレは初めて見たよ」

「……」

「今日のインレは感情的ね、素敵だわ」


 ドロシーはインレに言われた台詞を笑顔で言い返す。

 一対一で戦っていた時とは真逆の展開になってインレは目を見開く。


「調子に乗らないで、セオドーラ!」


 周囲に白い槍を展開してその切っ先をドロシーに向ける。

 槍の表面には魔法障壁を突破する赤い呪文を刻み、例え全力のドロシーであっても命中すれば無事では済まない。


「今の貴女に、これは防げないでしょう!」


 白い槍をミサイルのように射出、インレらしからぬ殺意が込もった攻撃にドロシーはニコリと笑った。


「ようやくその気になってきたわね」

「そのようだな!」


 ドロシーに迫った白い槍を追いついてきたニックのジャッジメント・ブレイドが切り払う。


「!!?」


 攻撃を切り払ったニックにインレは驚愕した。


 あの槍を()()()()()に防がれるとは思いもしなかったからだ。


「お前は……ッ!」

「凄いでしょ? 彼はニック君。異世界で勇者をやってた人だよ」

「……勇者、ですって?」

「そう、勇者。女の子でも憧れちゃうよね」

「ッ!!」


 『勇者』という発言に反応して動きを止めたインレに無数の金色の槍を突き刺す。

 ドロシーの槍にも赤い呪文が刻まれており、ここでようやくインレにダメージが通った。


「それでも……彼ほどのトキメキは感じないわ。残念だけど」



 ────バゴォォンッ!



 串刺しにされて動きが鈍ったインレにスコットの一撃が炸裂、思い切り吹き飛ばされる。


「……っはっ! 見たか、コノヤロー! もう一発キツイのを打ち込んでやったぞ!!」


 助走をつけて放った渾身のストレートをお見舞いしたスコットはご満悦だった。

 そんな彼の姿にドロシーも頬を染め、ストンとニックの隣に降り立つ。


「ありがとう、ニック君。それと……僕は君のことも好きだからね?」

「ああ、気にしないでくれ。正直に言ってもらえるほうが嬉しいよ」


 ニックは何処か傷ついているような哀愁を漂わせながら剣を確認する。


「だ、大丈夫でしたか、社長!」

「僕は君の方が心配だけど?」

「ぜぇ……ぜぇ……大丈夫です。このくらい、ゴフゥッ!!」


 両腕と肋骨が折れているのに全力疾走してきたスコットはドス黒い血を吐く。

 自分の命よりもインレをぶん殴る事を優先する彼にドロシーは惚れ直した。



(もう……無茶しちゃって。僕が近くにいないと落ち着かないんだね、この人は。いいよ、ずっと一緒に居てあげるから……)


(今夜は寝かせないわよ、スコット君)



 もうこの人しか居ない。


 ドロシーの中でスコットの存在は初恋の相手から運命の伴侶にランクアップ。

 宿敵のインレの事など記憶の片隅に追いやって 愛するスコットとの幸せな時間 を妄想した。


「……でも、僕はここまでだけどね」


 しかしドロシーは小さく頭を振ってインレを睨む。


「……いつになったらアイツは倒せますか?」

「このままだと一生かかっても倒せないね。インレは僕以上の化け物だから」

「では、お手上げなのか?」

「方法はあるよ」


 ドロシーは胸に手を当てて意識を集中させる。

 彼女の周囲に巨大な魔法陣が発生し、それと連動するように幾重もの魔法陣が浮かび上がる。


「これは……」

「今から僕は()()()()()を使うわ。それを使えばインレの身体を破壊できるの」

「……それならもっと早く使ってくれませんかね」

「あはは、本当だね。でもスコット君、これは」


 そこに殺到する白い槍。スコットは咄嗟に青い腕を翼に変化させてドロシーを包み込み、更にニックが自らを盾にする二段防御で凌いだ。


「上手く制御しないとこの街ごと吹き飛ばしちゃうの。それにインレはまだ元気だから使っても回避されちゃうのよね」

「……つまり?」

「何とかインレの気を引いて動きを封じて。これを躱されるともう後がないの」

「無茶言ってくれますね!!」


 可愛い顔で 後がない と仰るドロシーにスコットは突っかかる。


「でもやるしか無いんですね!」

「うん、お願い。死なない程度に頑張って」


 悪魔の翼を腕に変えてスコットはインレを見据える。

 勇者の鎧を大きく傷つけながらも槍を凌ぎきったニックはボロボロになった剣を捨てて拳を握った。


「……というわけです。ニックさん」

「ああ、それじゃあ頑張ろうか。スコット君」

「ところで素朴な疑問なんですけど、今まで社長はアレと一人で戦ってたんですよね?」

「そうね」

「どうやって倒してたんですか?」


 胸に魔力を集中させるドロシーにスコットは聞いた。


「……()()()()僕の方がインレより強かったから、一人でも何とかなったのよ」

「……そうですか」

「でも、インレは年々強くなって」

「あ、もういいです。それじゃ行ってきますね!」


 サラリと恐ろしいことを言いかけたドロシーを残してスコット達はインレに突撃した。


「聞きましたか、ニックさん!」

「ああ、恐ろしいな!」

「逃げるなら今ですよ!?」

「君もな!!」


 絶望的な戦いを任されながらも何故か二人は活き活きとしていた。



「……ついに仕掛けてきたわね、セオドーラ」


 笑顔で此方に突っ込んでくる狂人達を無視しながらインレは再び翼を広げる。


「でも、今の貴女に制御できるかしら? 私はまだまだ」


 余裕たっぷりに何かを言おうとしたインレの頭部に青い剣が突き刺さる。



「あの剣は……」

「おーっす! ドリーちゃん、お待たせぇー!!」

「待たせたな、マスター」


 ドロシーの真横を白い子兎がしがみついたアルマとブリジットが通り過ぎる。



「「────後は任せろ!!!」」



 二人は同時に言い放ち、スコット達に続いてインレに突撃していった。


「……本当に」


 ドロシーは愛するファミリーの姿を見て薄っすらと涙を浮かべる。


「……最高よ、みんな」


 そう言って胸部の紋章から()()()()()()を召喚する。

 これまでは絶望と孤独の象徴だった忌々しき杖が、今日の彼女には希望と充足の象徴に見え……


 ドロシーは誇らしげな表情で最強の魔法杖【ウヴリの宝杖】を手に取った。


でもメインはあくまで紅茶です。紅茶は偉大ですから。

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