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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.10 「夢では全てがうまくいく」
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「……ブルー、何のつもり?」


 駆けつけたスコットの姿を睨みつけてインレは言う。


「さっきからブルーって呼んでるけど誰のことだよ? 俺の名前はスコットだ」

「君に取り憑いてる悪魔君のことじゃないかな」

「ああ、なるほど」


 スコットは悪魔の腕を見て納得するが、悪魔は両手を上げて『何のことだか』とでも言いたげなジェスチャーを取る。


「……違うみたいですね」

「酷いわ、ブルー。ようやく出会えたのに」


 インレは大きな翼を広げてスコットを威圧し、凄まじい殺気を叩きつける。

 今まで対峙してきた相手とは比べ物にならないほどのプレッシャーをぶつけられてスコットは思わず硬直し……


「インレを傷つけちゃったみたいね。どうする? このままだと君は……」


 口元を大きく裂かせてまるで悪魔のような獰猛な笑みを浮かべた。


「……どうして笑ってるの?」

「え、俺……笑ってますか?」

「気づいてないの? 大丈夫? ひょっとしてスコッツ君て」


 二人の会話を遮るように銀色の剣でインレが斬りかかる。

 悪魔の腕はその剣を殴って払い除け、インレの身体を掴んでその動きを封じた。


「……危ない子なの?」


 悪魔に捕まったインレにドロシーは魔法を撃ち込む。彼女の体は真横に吹っ飛んでゴロゴロと地面を転がっていった。


「……それでも社長よりはマシだって断言できますよ」


 ドロシーの発言にスコットは言い返す。


「ふふふっ」


 スコットの返事を聞いてドロシーは幸せそうに笑う。

 緊張で張り詰めていた心が一気に解れ、いつもの調子を取り戻した彼女の瞳には歓喜の光が灯った。


「やっぱり貴方は最高よ、スコット・オーランド」


 両腕をインレに向けて魔力を集中。既に紋章の輝きは弱まっていたが、彼女にはもう関係なかった。


「あ、名前で呼びましたね。もう二度と呼ばないんじゃなかったんですか?」

「フルネームは例外よ、スコッツ君」

「それじゃあ俺もドロシーって呼びま」

「駄目、社長と呼びなさい」


 スコットが自分を救いに駆けつけ、こうして自分の隣に居てくれている。


 それだけで十分だったのだ。


「ブルー、邪魔をしないでくれる?」


 ゆらりと立ち上がったインレが苛立ちながら言う。


「私はセオドーラに用があるのよ」


 両腕をかざし、手の平に魔力を込めながらスコットに向ける。


 もし魔法が放たれれば最後、彼の体が爆散するのは想像に難くない。彼女にはそれだけの圧倒的な力があるのだ。


「嫌だと言ったら」

「殺されるよ? スコッツ君」


 一触即発にして絶体絶命の状況に置かれながらスコットは何かを言おうとしたが、ドロシーに遮られる。


「願ったり叶ったりです」


 だが、彼は笑いながらそう言ってのけた。


 スコットに向けて放たれる魔法弾。眩く輝く金色の光弾は彼の挑発的な笑顔に向かってまっすぐと直進。


「そんなこと言わないでよ」


 命中する前にドロシーが光弾を同じ魔法で迎撃……



 キュドドドォォーン!



 凄まじい爆発が起き、スコットの身体が爆煙に包まれた。


「……」


 インレは視界を遮る煙を睨む。いつしか彼女の顔から笑顔は消えていた。


 煙を突き抜けてスコットがインレに殴り掛かる。爆炎に巻かれて服がやや焦げているが、彼の表情は依然として笑顔のままだった。


 インレは苛立ちながら包帯で白い巨腕を生み出して攻撃を受け止める。


「はっはっ、やっぱり効かないかっ!」

「……!?」


 先の戦いでは容易く押し返せていた筈の悪魔の腕と白い巨腕の力が拮抗している。


「いや、これは……もしかしていけるか?」

「図に乗らないで」

「ぐあっ!」


 インレはその事に若干違和感を覚えながらもう片方の翼を巨腕に変化させて殴り飛ばした。


「……っはっはっ!!」


 だがスコットは殴り飛ばされながらも両腕で白い巨腕をガシッと掴んで強引に引き寄せる。


「ッ!?」

「社長ーッ!」


 そしてインレの体を思い切り上空に放り投げて合図した。



「やるじゃない、スコッツ君」


 スコットの合図を受けてドロシーは魔法を連射、無数の魔法弾がインレに殺到する。


「……っ! このっ!!」


 インレは身体を再生させて反撃に移ろうとしたが、彼女の足を悪魔の腕がガシッと掴んで勢いよく地面に叩きつけた。


 ドロシーとスコットの容赦ない連携攻撃でインレは再び地に伏した。ダメージを受けている様子は無いが、彼女の表情は更に険しくなる。


「私を、舐めるな! こんな攻撃でっ」

「舐めてねぇよ、この化け物が」


 スコットは立ち上がろうとしたインレに向けて拳を振り下ろす。

 彼女の体は深く地面にめり込み、美しい肌と銀色の髪は一気に泥に塗れた。


「だからこうして全力で殴ってるんだよ。反撃される前に全力でなっ! わかってるんだよ、俺の力が! お前に通じないことぐらい! 俺じゃお前を倒せないぐらい……わかってるんだ!!」

「……だったら、邪魔をしないで! 私は貴方に用は無いのよ!!」


 何度も拳を振り下ろして追撃する悪魔の腕を巨腕で受け止め、ついにインレは目を見開いて激昂。


「貴方もいい加減に大人しくなりなさいっ!!」


 圧倒的な力で悪魔を跳ね除けてスコットにパンチを叩き込む。


「ぐがぁっ……!」


 悪魔の腕によるガードが間に合わず、インレの攻撃はスコットに直撃。

 その両腕と肋骨を何本か砕かれ、口から大量の血を吐き出しながらも彼は歯を食いしばって堪えた。


「でも……そんなの、がはっ! そんなの、関係ない……っ!」


 スコットは片目に宿る青い光を炎の如く激しく揺らめかせ、悪魔の拳にギュウッと力を込める。


「俺は、お前を……!」


 そしてがら空きになったインレの胴体に向けて……


「絶ッ対に殺すと決めたッッッ!!」


 両腕を犠牲にした渾身のカウンターパンチを打ち込んだ。



 ────バゴンッッ!!



 悪魔の拳はインレにクリーンヒットし、その小さな身体を軋ませながら浮かび上がらせる。


()()()()()っ!」


「手を出したんだからなぁぁ────っ!!」


 そしてついに魂の叫びを上げ、スコットは追撃のアッパーカットでインレを天高く打ち上げた。


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