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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.10 「夢では全てがうまくいく」
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17

「アルマァアアーッ!」


 ドロシーは絶叫しながら魔法を放つ。


「ああ、あの子の名前も素直に呼ぶのね。傷つくわ、セオドーラ」


 魔法が命中したインレは大きく吹き飛ばされる。


「アルマさんっ!」


 黒煙に巻かれながら落下するアルマをスコットはキャッチし、ドロシーも急いで彼女の所に駆け寄った。


「アルマ、アルマッ!」

「……おーす、ドリーちゃん。大丈夫か……?」

「自分の心配してくださいよ! こんな……ッ!!」


 アルマの腹部には大穴が開き、黒焦げになった内部(はらわた)が覗く。

 あまりの状態にスコットは絶句し、ドロシーの表情も大きく歪んでいく。


「あー……気にすんな。全然、痛くねーから、ごふっ!」

「アルマ、しっかり!」

「畜生ー……油断したぁー……」


 アルマは悔しそうに歯を噛みしめる。


 近接戦闘が取り柄の彼女が近接戦で敗北したという事実と、自分の力ではインレに対抗できないという現実を改めて突きつけられたからだ。


〈きゅっ〉


 ドロシーの肩に乗った白兎がアルマに飛び乗り、その傷を癒やしていく。

 だが白兎の力でも大きく抉れた腹部の治癒に時間がかかり、中々傷が塞がらない。


「アルマ、駄目よ! まだ行かないで! まだ……!!」

「行かねえよ……そう、簡単にくたばるか……」

「アルマさん!!」


 ドロシーは再び杖を構えてインレを睨む。

 スコットは今まで見たことのない彼女の怒りに満ちた表情を見て背筋が凍った。


「スコット君……アルマをお願い」


 そう言ってドロシーは周囲に擬似魔法杖を展開、魔法を連射しながらインレに突撃していった。


「しゃ、社長……!」

「ああ、くそ……っ! 仕方ねぇなぁ……」


 アルマは辛うじて動かせる血塗れの右腕でスコットの襟元を掴む。


「アルマさん……!?」

「……ちょっと、頼むわ。非童貞……」

「……!」

「あたしの代わりに……あの子を……!!」


 息を荒げながらアルマはスコットにそう言い残して意識を失った。


「ア、アルマさん!」

「……全く、無茶をする子うさぎだ」

「あっ!?」


 ブリジットがスコットからアルマを取り上げる。

 彼女にしがみついていた白兎がアルマに飛び乗って回復を補助し、一気に傷が塞がっていく。


「……」

「何をしている、スコット」

「あっ……」

「行って来い」


 ブリジットは棒立ちしているスコットに静かな口調で発破を入れる。


「……はい!」


 スコットは身を翻し、急いでドロシーの元に向かった。


「……本当に軽いな。ちゃんと食べているのか?」

「彼女は大丈夫か!?」

「む、ニックか。見てのとおりだ」


 泥だらけになったニックがアルマを心配して駆けつける。


「ああ、丁度良い。コイツを車まで運んでやってくれ」

「えっ?」

「頼んだぞ」

「お、おい!? 待て!」

〈きゅんッ〉


 ニックの肩に乗っていた白兎がブリジットを追って飛び出す。

 アルマを任された彼は数秒ほど立ち尽くした後、急ぎ車の所へと向かった。



「あぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「うふふっ、今日は怒りん坊ね セオドーラ」


 ドロシーの魔法をインレは楽しそうに弾き落とす。

 彼女の両腕から伸びる白い包帯が魔法弾を次々と弾き、その身体に一発も当てられない。


「でもいい加減に気付きなさい? その魔法では私を傷つけられないわ」

「……ううっ!?」


 魔法弾を弾きながら伸びた包帯がドロシーの杖を拘束。

 メキメキと音を立てて圧し折っていく。


「私にだけは最初から()()()()()()()()()()? セオドーラ」

「うらぁぁぁぁあぁあああっ!」


 スコットが全力で放つ悪魔の一撃がインレに叩き込まれる。


「でないと……他の子達が困るわよ?」


 だがその一撃も白い包帯の腕で受け止められ、軽々とスコットは放り投げられる。


「うるさいっ!!」


 ドロシーは圧し折られたアルテミス・ファク=シミレを放棄し、素早くエンフィールド・メルヴェイユを取り出して魔法を放つ。


「何を躊躇しているの?」

「うるさい、うるさい!」

「本当に……今日のセオドーラは可愛いわね」

「────切り裂き、屠れ!」


 ドロシーの背後から飛び出したブリジットがインレに接近。


(インフィ)(ニトエ)(スパーダ)絶刃(ゼーデルヴェ)!!」


 剣先に魔力を凝縮させて一閃。青く発光する刃でインレの身体を切り裂いた。


「でも、お前は不愉快よ。消えなさい」

「ッ!」


 インレは身体を切り裂かれても意に介さずにブリジットを攻撃。

 解けた包帯を槍のように尖らせ、彼女の身体を滅多刺しにする。


「あぐぅうっ!」

「ブリジット!!」

「ふふっ」


 更に包帯で大きな腕を生み出して思い切り叩く。

 ブリジットの身体は地面を跳ね回り、血の跡を残して動かなくなった。


「お前もそこで大人しくしてなさい」

「この……野郎ぉぉおおおおっ!!」


 ブリジットに冷たい視線を向けるインレにスコットは悪魔の腕を伸ばす。


「ふふふ、だからー……」

「あぁぁぁぁぁぁぁああっ!」


 悪魔の腕はインレの身体を拘束。そのまま持ち上げて勢いよく地面に叩きつけ、追撃のアームハンマーが炸裂した。



 ────メゴォンッ!



 大きなクレーターが出来上がるほどの強烈な一撃、あのヒュプノシアすら耐えきれなかった悪魔の理外を越えた威力の攻撃。


「どうしてわかってくれないのかしらね? 貴方達の攻撃は効かないって」

「……くそっ!」

「ふふふふっ」


 ……その全てを打ち込んでも、インレには傷一つ負わせることが出来ない。


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