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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.10 「夢では全てがうまくいく」
222/542

16

「うぉぁぁぁぁぁああああっ!」


 悪魔の拳が銀色のドロシーに叩き込まれる。

 衝撃で大きく捲れ上がる地面、あらゆるものを粉砕する悪魔の一撃……


「……ッ!!」


 その青き豪腕は少女の片腕から伸びる包帯状の白い巨腕に受け止められた。


「残念ね、こんな形で出会いたくなかったわ」


 少女は地面を軽く踏む。踏まれた部分には金色の紋章が浮かび上がり、巨大な石柱が勢いよく迫り出した。


「がはっ!!」


 スコットは防御も取れずに石柱に打ち上げられる。


「スコット君!」


 ようやく身体が動いたドロシーは少女の頭部を狙って魔法を放つ。


「そう、あの子の名前はスコットと言うのね」


 顔面を魔法に吹き飛ばされた少女は大きく後ろに仰け反る。

 顔半分を吹き飛ばされても彼女は余裕を崩さない。


「いいお名前ね、セオドーラ。私も気に入ったわ」


 銀色のドロシーは瞬時に顔面を再生、満足気な笑みを浮かべながら再びドロシーと顔を合わせる。


「その名で……僕を呼ぶな!!」

「どうして? ()()()()()()()()()()()()? 私達の」

「うるさい!!」


 急ぎ杖をリロードして構え直す。だがドロシーが魔法を放つ前に銀色のドロシーは素早く接近し、魔法杖を払いのける。


「しまっ……!」

「ふふふ、今日のセオドーラは感情的ね。素敵だわ」

〈きゅうッ!〉


 ドロシーの肩に乗った白児兎が銀色のドロシーの顔に張り付き、その身体を眩く発光させる。


「あら、これは……」



 ────キュドンッ!



 視界を塞がれて動きが鈍った銀色のドロシーの胴体に威力を抑えた爆発魔法を放つ。


 吹き飛んだ彼女の顔面を蹴って白兎は離脱し、すばしっこい動きでドロシーの足元に戻った。


「……この兎は、あの女の魔法ね」


 腹部から青白い煙を出しながら銀色のドロシーがルナを睨む。

 

 ドロシーに向けるものとはまるで異なる嫌悪を剥き出しにした眼差し。その表情も明確な敵意が滲んでいた。


「助かったわ、お義母様……!」


 窮地を脱したドロシーは魔法を連射するが、いくら魔法が命中しても瞬時に再生してしまう。


「……あの女は おかあさま と呼ぶのね、セオドーラ。不愉快だわ」

「僕の母親はあの人だ! お前じゃない!!」

「いいえ、セオドーラ」


 ここで銀色のドロシーは初めてドロシー以外の相手を標的に定めた。


「貴女の母親は私よ」


 魔法を回避して背中に白い包帯の翼を生やし、銀色のドロシーは凄まじいスピードでルナに接近する。


「し、しまった……!」


 銀色のドロシーは一瞬で距離を詰め、ルナを葬ろうと白い腕を伸ばす。


「……させませんわ」


 彼女の腕がルナに届く前にその動きをマリアの影が拘束する。


「……」


 空中で動きを封じられた銀色のドロシーは忌々しげに二人を睨んだ。


「……あの子は私の娘だ。ルナ、お前のじゃない」

「いいえ、あの子は私の娘よ。貴女には渡さないわ……()()()


 銀色のドロシー、インレを封じたマリアの影が形状変化してその身体を刺し貫く。

 全身を串刺しにされてもインレはまるで動じずに目だけをマリアに向けた。


「あら、ごめんなさい。痛かったかしら?」


 マリアはインレを挑発しながら地面を靴先でトンと叩く。


 影が勢いよくインレを投げ飛ばし、空中に放り投げられた彼女の身体にブリジットの魔法剣が突き刺さる。


「……全く酷いことをする奴らね。お前達は、私の……」

「ぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!!」


 剣で貫かれたインレに飛びかかるスコット。

 目を見開きながら腕に力を込め、ドロシーに酷似した美しい顔に拳を振り抜く。


「ねぇ、ブルー? 貴方もそう思わない?」


 青い悪魔に優しく微笑みかけながら、インレは殴り飛ばされた。



 ドゴォンッ!



 大きなクレーターが出来る程に地面に激しく叩きつけられる。

 しかしインレはダメージらしいダメージを受けておらず、その余裕も全く崩せない。


「んっ……」


 インレは窪みから怠そうに起き上がり、体についた埃を払う。


「困ったわね、私はセオドーラに用があるのに」

「はあっ!!」


 起き上がったインレの身体をニックが大剣で切り裂く。

 包帯状に解けたドレスが僅かにズレた身体を元に戻し、彼女は小さく溜息を吐いた。


「くっ……!」

「これじゃいつまで経ってもあの子と落ち着いてお話が出来ないわ」

「化け物め……!!」

「……失礼ね」


 その発言に気分を害したインレは足元を強く踏み、巨大な石柱を召喚してニックを攻撃する。


「ぐぉああっ!」

「まぁ、いいわ。お前達の相手にも飽きてきたし……」

「うらぁぁぁぁぁっ!!」

「……そろそろ、黙らせてやろうかしら」


 黒刀で斬り掛かってきたアルマをじろりと睨みつけてインレは呟く。


「はっ、黙らせてみろ! クソ天使が!!」

「その汚い言葉遣いは何処で覚えたの、アルマ? ()()()にでも教わったのかしら」

「……うるせぇ! さっさと死ね!!」

「馬鹿ね、私は死なないのよ」


 アルマの振るう黒刀を容易くへし折り、インレは不敵に笑う。


「ただしお前は死ぬかもしれないけどね?」


 へし折った黒刀の刃をアルマの胸に突き刺す。


「……がふっ!!」

「とりあえず今日は大人しくしていなさい」


 インレが彼女に突き刺した刃を指で軽く弾くと、その黒い表面が徐々に赤熱化……



 ────ギュドォンッ!



 次の瞬間に爆発し、アルマの身体は爆炎に包まれながら吹き飛んだ。


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