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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.10 「夢では全てがうまくいく」
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13

「挨拶代わりよ、受け取っておきなさい」


 ドロシーは天使に杖を向けながら挑発する。


〈……ふ、ふふ……ふっ……〉


 顔面を魔法で破壊されても天使は笑い続けている。

 バラバラと白い石膏のような破片を落とし、不気味に笑いながら15番街区に落下した。


「笑い声までムカつくわね」


 ドロシーは落下してくる天使に向けて魔法を連射。

 その白い身体は彼女の放つ高威力の禁術魔法を受けて破壊されていく。


〈ふふふっ……!〉


 そして再び魔法が顔面に命中した所で天使を覆う白い外皮が一気に剥がれ、金色に輝く本体が露出した。


〈あはははははっ〉


 本体は空中で身を翻し、頭から生える4枚の翅を広げてストンと地面に着地。


〈……ふふふっ〉


 目鼻口が揃った女性的な顔に満面の笑みを浮かばせてドロシーを見つめる。


 降り立った天使の体長は6m。全身を覆っていた白い石膏のような外皮が剥がれて少し縮んでいるが、今までの天使よりも遥かに巨体でその顔には鼻と口がある。

 体型も女性的で先程までの天使とは一線を画する存在感を放っていた。


「……」


 ドロシーは現れた天使を睨みつけ、手にした杖をギュッと握りしめる。


「そのムカつく笑顔を、今すぐやめさせてやる」


 そして天使に向かって魔法を放った。


〈ふふっ〉


 天使はおもむろに手をかざし、その手のひらに金色の紋章を浮かび上がらせる。


 キィンッ


 天使が手のひらから放った小さな光弾はドロシーの魔法とぶつかり合い……



 ────ギュ、ドドドドドオオオオオオオオン!!



 一瞬眩く発光した後、凄まじい爆発を引き起こした。


「ッ!!」

〈ふふっ〉


 爆風に怯んだドロシーに天使の手が伸びる。爆風と爆煙をまるで意に介さずに天使は彼女との距離を詰めた。


「させるか! (インフィ)(ニトエ)(スパーダ)(デモリ)(ッシュ)!!」


 ブリジットはすかさず剣をかざして大量の魔法剣を召喚し、天使に向かって射出。


 だが天使は体中に剣が突き立てられても全く怯まない。笑いながらドロシーに手を伸ばし、その手が彼女の目前に迫る。ドロシーは後退りながら杖から魔法を発射。放たれた魔法が天使の顔面に命中、その右半分を吹き飛ばした。


〈あはははっ〉


 それでも天使は止まらない。


「うおおおおおおっ!!」


 突き出した腕がドロシーを捉えようとした瞬間にアルマの黒刀が天使の腕を切り落とす。


「あたしの可愛いドリーに触れるなぁぁぁー!」


 続けてアルマは素早く両足を切断、立っていられなくなった天使は大きく前に倒れ込む。


「あぁぁぁぁぁあっ!!」


 そこにスコットが放った悪魔の拳が炸裂。天使の身体は大きく吹き飛ばされ、地面を転がり回った。


「ドリーちゃん、大丈夫か!?」

「ありがとう、大丈夫よ」


 焼き切れた術包杖をリロードし、ドロシーはふぅっと息を整える。


「今日のアイツは積極的ね……、油断したわ」

「うぉぁああああああああっ!」


 殴り飛ばした天使に向かってスコットは叫びながら突撃した。


「スコット君!? 待って、止まりなさい!!」

「ぁぁぁぁぁあああああっ!!」


 ドロシーの制止も届かずに彼は拳を振りかぶり、地面に伏した天使を殴りつける。



 ────バゴォンッ!



 地面にクレーターが発生するほどの強烈な一撃が天使の頭部に炸裂。

 その巨体はビクンと痙攣し、微かに悲鳴のような音を上げたがスコットは何かに突き動かされるように殴り続ける。



(殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ……早く()()()を殺さなきゃ……!)


(はやく……殺さなければ!!)



 スコットは全身を駆け巡る身に覚えのない衝動に突き動かされて天使を殴り続ける。

 彼の片目に宿る青い光は激しさを増し、まるで燃え盛る豪炎のようだ。

 激しさを増す青い炎に呼応しているかの如く悪魔の腕の攻撃は苛烈になっていった。


 まるで彼に宿る青い悪魔が、その存在を心から憎悪しているかのように。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

〈……ふふっ〉

「ッ!!」


 一方的に殴り続けられていた天使は小さく笑いながら大きく翅を広げ、悪魔の攻撃を跳ね除ける。


「何っ……!」

〈……アナタ、は〉

「!?」

〈……あと、で……〉


 天使は頭の翅を激しく羽ばたかせ、凄まじい突風を発生させてスコットの身体を吹き飛ばした。


「うわぁぁぁぁっ!」


 吹き飛ばされたスコットは建物の壁を突き抜いていった。


「スコット君!!」

「あの馬鹿! 一人で突っ走りやがって!!」


〈……ふふふっ〉


 天使は半壊した顔面と切断された両足を再生して立ち上がる。

 身体に突き刺さった剣も迫り出すように抜け落ち、その傷も瞬時に塞がった。


「……やはり、私達の攻撃も通じないか」


 ブリジットは再び剣を構え、アルマも舌打ちしながら黒刀を構え直す。


〈ふふふふ、ふ……ふふふ〉


 天使は4枚の翅を広げてふわりと宙に浮く。

 そして再びドロシーに狙いを定め、天使は凄まじいスピードで彼女に接近する。


「……来るぞ、子うさぎ!」

「うるせー! 言われなくてもわかる!!」


 迫る天使を迎撃すべくブリジットは大量の魔法剣を召喚して射出する。


 しかし天使は殺到する青い剣の群れを容易く回避。ブリジットが剣を放つと同時に駆け出していたアルマは天使が回避した隙を狙って黒刀を振るう。


「うらぁぁぁっ!」

〈ふふふっ〉


 鋭い黒刀の斬撃は天使の翅に受け止められ、その黒い刃が大きく欠け落ちた。


「くそっ!」


 天使は大きな腕でアルマを叩く。彼女の身体はその一撃で弾き飛ばされ、近くの民家の壁を突き破って土煙の中に消えた。


〈ふふっ……〉

「アルマッ!!」


 ドロシーは距離を詰めた天使に向けて魔法を発射。

 魔法が着弾した天使は激しい爆炎に包まれて地面に落下するも、素早く体勢を整えて起き上がる。


「くっ、まだまだ!!」


 そこに殺到するブリジットの魔法剣。天使が微笑みながら4枚の翅を広げると青い剣先は空中で静止、キリキリと音を立てながらぐるりと反転。その剣先をドロシー達に向ける。


〈あはっ!〉


 天使が愉しげに声を張り上げると共に、煌めく青い剣の雨が一斉に放たれた。


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