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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.10 「夢では全てがうまくいく」
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12

この話に出てくる天使は夢に出てきた怪物が元になっています。

 場所は変わってリンボ・シティ1番街区 異常管理局セフィロト総本部 賢者室。


「……天使門(エンジェル・ハイロゥ)の発生から30分が経過。天使の反応も30%未満にまで減少しています」

「損害は?」

「……現時点で確認できているのは6人です」


 大賢者は沈痛な面持ちで空を睨む。

 

 天使は不定期にこちら側にやって来ては人間の命を奪い取る。

 その目的は現在に至るまで不明で、天使門(エンジェル・ハイロゥ)異界門(ゲイト)の関連性も不明。

 わかっている事は天使門は必ず雲ひとつない晴天の日に空に開く事、そしてドロシーの助けが無ければ天使に対抗出来ないという事だ。


「……彼女が協力的でなければ、今頃この街は滅んでいましたね」


 何故ならドロシーの発動した魂魄体封殺呪文(ソウル・ブレイカー)が無ければ此方の攻撃が相手に通じない上に、その魔法を扱える魔法使いが彼女くらいしか()()()()()()()()()()()


「あの子は必ず力を貸してくれるわ。管理局(わたしたち)を嫌っているけれど、この街は心から愛しているから」

「……天使の反応が20%まで低下」

「そろそろね。15番街区に向かわせた処理班に連絡、すぐに撤退準備をさせなさい……親玉が出てくるわ」

「わかりました」

「……それと」


 サチコの方に振り返り、大賢者は真剣な表情で言った。


「もしもドロシーが()()と接触してしまった時は……すぐにSクラス緊急処理コードを発動しなさい」



 ◇◇◇◇



「このぉぉぉぉー!」


 ジェイムスはコルネリウスの法杖から大威力の風属性攻撃魔法を放ち、天使の群れを吹き飛ばしていく。


「先輩、本部から連絡が入りました!」

「何だって!?」

「すぐにここから退避! 移動しろと……!!」


 ロイドから本部の撤退命令を聞き、ジェイムスは舌打ちしながら杖を収める。

 既に天使の数は十数体にまで減少し、上空の天使門からはもう新たな天使が這い出てくる様子もない。


「……くそっ、総員退避ー! 後はドロシー達に任せてすぐにここから離れろー!!」


 15番街区に集まった部下達に伝え、ジェイムスは急いでその場を離れる。


「で、ですが……!」

「いいから離れろ! ここからはアイツらに任せるしか無いんだよ……!!」

「……ッ!」

「ヘリ部隊、聞こえてるな!? 今すぐ隔離結界障壁を解除して15番街区から離脱するんだ!!」


 急な撤退命令に納得がいかないロイドの背中を押しながら撤退するジェイムス達。

 ドロシーは彼らの背中を何とも言えない顔で見送った。


「……さて、ここからね」


 近づいてきた天使を魔法で撃ち抜き、ドロシーはすうっと深く息を吸い込みながら空を見上げる。


「お、終わったのか……?」


 周囲から天使が居なくなったのを見てスコットは警戒を緩める。


「……馬鹿野郎、ここからが本番だ」

「え?」

「気を引き締めろ、スコット。()が出てくるぞ」


 戦いが終わった気でいる彼にアルマとブリジットが釘を刺す。


「……そろそろ来てしまうわね」

「奥様も準備なさってください。ここからは奥様にも頑張って頂きますわよ」

「ええ、わかっているわ。私達にしか出来ないことだから」


 少し離れた位置でマリアと戦いを見守っていたルナが呟く。

 両手に傘を持って黄色い雨からルナを守っていたマリアからも笑みが消え、表情が僅かに殺気立つ。


「く、くそう! 何でオレまで此処に来なきゃ行けないんだ! オレなんか頼られても困るぞ……!!」


 アルマに無理矢理連れてこられたデイジーは車の中でガクガクと震えていた。


「そう仰らずに。デイジー様のお力が無いと、ここからが困るのです」

「うううっ! お腹痛い……!!」

「おや、食あたりですか? それともあの日ですかな?」

「うるせー、変態ジジイ! ストレスと緊張からに決まってるだろ!!」


 運転席でスタンバイしていた老執事の発言にデイジーは涙目で突っかかる。


「……何だ、この気配は」


 ニックは周囲を包み込む得体の知れないプレッシャーに身構える。


 既に15番街区から天使は居なくなったというのに鎧はチリチリと音を立て、まるで()()()()()()()()()()に身震いしているかのようだった。


「……奴って一体ッ」



 ────ドクンッ



「……ッ!!」


 再びスコットの背中が疼く。今まで感じたことのない強烈な痛みに思わず彼は蹲った。


「がっ……はっ!?」

「おいおい、大丈夫か? 急にどうした、非童貞……うおおっ! 何だぁっ!?」


 スコットの背中から生える悪魔の腕が激しく地面を掻く。


「な、何だ……! 何だこれは……!?」


 悪魔の腕に今だかつて無いほどの力が漲り、スコットにも殆ど抑えきれなかった。

 全身から溢れ出る力の奔流に飲まれ、彼はただただ身を捩らせる。


「うぐぐぐぐ……がっ!!」

「おいおい、どうしたんだ!? 何かコイツ変だぞ!」

「私にわかるものか! 私は医者ではない!!」


「っがぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!!」


 そして悪魔は天に向かって咆哮した。



 ゴォォォォォォ……ン



 悪魔の叫びが空に届くと共に鐘の音が鳴り響く。

 不気味な鐘が何度か響いた後、金色の輪の中心で渦巻く白い穴から眩い光を放ちながら 巨大な天使 が姿を現す。


〈ふふ……ふふふふ……ふ……〉


 新たに出現した巨大な天使はだらりと街を見下ろし、大きな目を見開いて不気味に笑う。


〈ふふふふふ……ふ……ふふふっ……〉


 その金色の瞳はドロシーの姿をしっかりと捉え、彼女に向かって愛おしそうに両腕を伸ばす……



 ────ドドドォォォォォン



 そんな天使の顔面に、ドロシーは容赦なく魔法を撃ち込んだ。


軽く今でもトラウマです

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