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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.8 「言うのは簡単? やるのはもっと簡単だよ」
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『そう、まずは彼らを仲間にしてあげよう』


 デモスの号令と共にヤリヤモ達は触覚を上げ、その先端を青く輝かせる。


「!」


 それを見たジェイムスは両腕の袖口から素早く小型の杖を取り出し、杖先から凄まじい衝撃波を放つ。


 ジェイムスの魔法は怪光線をかき消しながらヤリヤモ達の身体を吹き飛ばす。

 先制の衝撃波に続けてジェイムスは二発目の魔法を発動。ヤリヤモの周囲に不自然な風の渦が発生……


「ああ、二回も魔法使っちまった。まぁいいか……正当防衛だ」


 次の瞬間、彼女達を巨大な風の縄が捕縛した。


『!!』

「せ、先輩!」

「見ての通りだ。13番街区の人々を優先鎮圧対象に指定、あの光線を受けないように注意しながら無力化しろ。殺さないようにな」

「りょ、了解です!」

「イエッサー!」

「上空のヘリ部隊、聞こえるか! あの宇宙船を中心に13番街区を包囲するように隔離結界障壁を展開、奴らを13番街区から出られないようにしろ!!」


 ジェイムスは先程の魔法で焼き切れた折りたたみ式の小型魔法杖を破棄し、コートから愛用の杖を取り出す。


「さて、とりあえず俺達の仕事はコイツらをこの13番街区から出さない事だ」

「あの宇宙船はどうしますか?」

「知らん、()()()()に任せる」


 そう言ってジェイムスは拘束魔法から逃れたヤリヤモの動きを風のロープで封じる。

 彼の魔法を合図にして他の職員も杖や武器を構えて散開し、頭部の触覚に注意しながら次々と無力化していった。


『……そんな能力を使える種族がいたのか』

「ああ、魔法使いっていうんだ。覚えておけ異星人」


 13番街区を囲うように展開したヘリコプターの胴部から真下に向かって黄色い光弾が放たれる。

 地面に着弾した光の弾は眩く発光し、デモスの超大型UFOごと13番街区全体を包み込むような巨大な障壁が形成された。


「……って聞こえる訳ないか」


 ジェイムスは少し照れくさそうに笑い、動きを封じられて尚もウネウネと動いて光線を放とうとするヤリヤモ達の生意気な触覚を小さめの風のロープでビシッと拘束した。



「むむむ……っ!」


 ヤリヤモ達が次々と無力化されてデモスは顔をしかめる。


「何だあの能力は……! それにこの船周辺に発生した強力な反応……彼らもディフェンサーと同様の技術が扱えるのか!?」

「よ、よくわからないが追い詰められているようだな! 観念して彼らを元の姿に戻せ!!」

「うぐぐ……!」


 追い詰められたデモスの表情に焦りの色が浮かぶ。


「し、仕方ない! あまりこういう手段は使いたくないが……最終手段だ!!」


 デモスは慌てて制御パネルを操作する。


「諦めろ! お前の負けだ!!」

「いいや! 負けていない! 彼らも全て私の仲間にしてしまえば……!!」


 ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン……


 船全体が揺れるような振動と駆動音。デモスのUFOの底面に巨大な砲門が出現し、莫大なエネルギーをチャージする。


「な、何をするつもりだ!?」

「最大出力の同族砲だ! 地面に着弾した瞬間、あのウィクスコに居る全ての種族が私の仲間となる!!」

「何だって!? そ、そんなものが……!」

「やはり同調性のない個性に囚われた種族と相互理解を図ろうとしたのが間違いだった! 最初からこうしておけば……!!」

「や、やめろぉぉー!」

「みんな私になれぇぇー!!」


 この星に来てから何一つ思い通りに事が運ばず、普段の冷静さを失ったデモスはついに頭が痛くなるような強硬手段に出ようとしていた。


「同族砲、発射……」


 トントン。


「むっ?」


 同族砲の発射ボタンを押そうとしたデモスの肩を何者かが突付く。

 彼女が後ろを向くと、目と鼻の先に悪魔の腕が待ち構えていた。


「なっ────……はぶぁあっ!?」


 悪魔の腕はデモスの額に軽めのデコピンを放つ。


 悪魔らしからぬ優しい攻撃だがそれでも彼女の身体は吹き飛び、メインデッキ中心にある大きな柱にビターンと叩きつけられた。


「……いってぇな、コノヤロー」

「スコット君! 目が覚めたのか……!!」


 軋む身体に顔を歪めながらスコットが立ち上がる。


「大丈夫か!?」

「……体中痛くて死にそうです。マジでこいつの拳半端ねぇ……」

「……むぎゅう」

「くっそー、この社長モドキめ。後で覚えてろよ……」


 気絶したデモスを睨みつけながらスコットはペッと血を吐き捨てる。


「危なかった……もう少しで奴が街に住む人々を全て仲間に変えてしまうところだったよ」

「……ギリギリでしたね」


 転がっていたニックを拾い上げてスコットはホッと一息つく。


「とりあえず、もうニックさんは頭に被りません」

「はは……本当に申し訳ない」

「でも、これからどうしましょう。肝心のデモスは気絶してるし、このまま宇宙船を放っておくわけにも……」


 ガシャン。


 不意に聞こえた鎧の擦れるような音。スコットが振り向くと、辛うじて生きていたシュバリエの一体が折れた剣を振りかぶりながら斬り掛かってきた。


「くそっ!」

「なっ! まだ生き残りが……!?」


 スコットはギリギリで斬撃を回避。


「大人しくやられてろよ! この鎧野郎がっ!!」


 悪魔の腕でシュバリエを粉砕し、今度こそトドメを刺した……


 だが千切れ飛んだシュバリエの腕がメインデッキの制御パネルに命中。

 深々と基盤に突き刺さり、バチバチバチと音を立てて回路をショートさせる。


「あ……」

「うぉぉぉい!?」


 >ヴェーッ! ヴェーッ! ヴェーッ!<


 鳴り響く警告音。非常事態を知らせる青いランプが赤色に変わり、メインデッキを覆い尽くす程の膨大な数のパネルが出現した。


「な、な、何だ! 何が起きてる!?」

「わかりません! でも何かヤバそうなのはわかります!!」



 ゴゴゴゴゴゴゴ……ガキョン


 ギュイーン、ギュイーン、ギュイン


 ガココココンッ



 船全体が揺れるような駆動音と共に13番街区に向けられていた砲門からは青い光が消え、替わりに赤い稲妻が充填されていく。

 続いて船全体が変形し、ステレオタイプな円形飛行物体から鋭角的なパーツが突き出した攻撃的な形状に変化。格納された砲門全てが展開する。


「……」

「……」

「これ、ヤバくね?」


 グギギギギギォォォォン……


 13番街区上空に現れた巨大な鉄の悪魔は唸り声のような禍々しい異音を上げて空を震わせ、無数の砲門から伸びる赤いポインターで街全体を覆い尽くした。


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