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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.8 「言うのは簡単? やるのはもっと簡単だよ」
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仲間の真の力を体を張って引き出す主人公の鑑。これぞ王道ですよね。

「……!」

「ど、同志……」

「シュ、シュバリエが……! 一体、何なんだアイツは!?」

「あー! あー!」

「くっ、もっと数を増やせ! 船に乗せた全個体を向かわせろー!」

「落ち着け、同志! 数を増やせばいいというものではない! 侵入者の戦闘力はシュバリエを大きく上回っているんだ!!」

「うぐぐぐぐ……っ!」


 切り札のシュバリエがスコットに蹴散らされてデモスは大いに取り乱す。


 他のヤリヤモも既に平静を欠いており、たった一人の侵入者相手に追い詰められたデモスはある決断を下す。


「……仕方ない。お前達は全員ディ・ヴィーゲ(揺り籠)の中で休眠状態に移行しろ、私が直接侵入者と接触する!」

「な、何を! 正気か、同志!?」

「無茶だ! 殺されてしまうぞ!!」

「何を考えているんだ!?」

「いいからすぐにディ・ヴィーゲに入れー! これはビッグオーダーだ! 逆らう者は船から放り出すぞ!!」


 デモスは触覚をピンと立てながらヤリヤモ達を突き放す。


 同志に絶対命令権であるビッグオーダーを行使され、配下のヤリヤモは目に涙を浮かべながらもそれに従った。


「ううっ! 同志……!!」

「案ずるな、私にはちゃんとした作戦がある!」

「気をつけて!」

「殺されるんじゃないぞ!」

「私のアストラルは常に同志達と共にある! 死ぬことは無い!」


 ヤリヤモ達がUFOのメインデッキから出ていくのを見送った後、一人寂しく指令席に座った。


「……んっ」


 そして首をポキポキと鳴らし、顔を軽くマッサージしてシャキッとした顔つきに戻す。


「……よし、頑張ろう」


 ヤリヤモ族の長として鳴けなしの気合を入れ、デモスは司令席の向きを入り口へと回転させる。


「本当に別種族(たにん)とは話が合わないものだな……」


 13番街区の様子を映すディスプレイを切なげに眺めながら、迫りくる侵入者を一人で待ち構えた。



「おらぁっ!」


 最後のシュバリエを叩き潰し、青い悪魔は誇らしげにガッツポーズを取る。


「ふー、そこそこ数はいましたけど……やっぱり大したことなかったですね」

「……本当に強いんだな、君は」

「強いのは俺じゃなくてこの悪魔ですけどね」


 スコットがそう言うと悪魔の腕は嬉しそうにサムズ・アップしながら彼の体内に戻っていった。


「さて、デモスの居る場所は何処ですかね」

「……それらしい反応がある部屋を見つけたぞ。この先の通路を右に曲がって直進してくれ」

「少し気になるんですけど、ニックさんの目には一体何が見えてるんですか?」

「色々見えているよ。説明するのは難しいが……」

「ふーん……」


 ふとニックの内部がどうなっているのかが気になったスコットは中を覗き込んでみる。


「な、何をするんだ!?」

「いや、ちょっと気になりまして」

「や、やめろぉ! 私の中を覗くんじゃない!!」

「……ひょっとするとニックさん、ヘルメットみたいに装着出来るんじゃないですか?」

「何だって!?」


 ニックの内部は空洞で人の頭がスッポリ収まる程度のスペースがあった。


 後頭部付近には意味有りげなスイッチもあり、好奇心が刺激されたスコットはそのスイッチをポチッと押してみた。


「うぬおっ!?」

「うおっ、開いた!」


 スコットの予想通り、スイッチを押すとニックの後頭部が展開する。


「な、何をしたんだ! 私に何をしたぁ!?」

「……どうして頭だけでも大丈夫なんだろうとずっと思ってましたが、そもそも頭が本体で身体は飾りだったってことですね」

「どういう意味だね!?」

「つまりこう……」


 スコットはニックをヘルメットのように頭に被る。

 展開した後頭部が閉じて彼の頭部をすっぽりと包み込んだ。


『うおおおおっ!?』

「ほら、こんな感じで。ニックさんは自分を装着した人をサポートする喋るヘルメットとして改造されたんですよ」


 ここでスコットはようやくニックの正しい扱い方を知る。


『な、何だこれは! 妙な感覚だ……! 私の中に、君が入って……!!』

「あ、やめて! それ以上言わないでください! ごめんなさい、すぐ脱ぎますから!!」


 グギギギ……


「ん、あれ? えっ?」

『ど、どうした?』

「いで、いでででででっ!」

『?』

「と、取れない!!」

『何ィ!?』


 だが、ニックはスコットの頭部にガッチリと固定されて取り外せなくなっていた。


「ちょっとぉおおおー! 何で取れなくなってるんですか!? ふざけんなよ、畜生ー!!」

『どうして私が怒られるんだ!?』

「ニックさんでどうにか出来ませんか!?」

『ど、どうにかと言われても……うーん』

「ちょっ、えっ!? 頭が勝手に……」

『むむっ?』

「あれ!? 今度は腕が勝手に! ちょっ、身体が勝手に動くんですけど!?」

『まさか……』


 ブンブンブンッ、ビシィッ!


「な、何だ! 何この動き!? 何で勝手に妙な決めポーズ取ってんだ!!?」

『ああ、なるほど!』

「何ですか!?」

『どうやら私の意思で君の身体を自由に動かせるみたいだ』

「えっ」


 自分の意思に関係なく勝手に身体が動くスコットはニックの言葉に冷や汗をかく。


『なるほど、なるほど……これが私の能力か』

「え、ちょっと待って? あれ?」

『装着した者をサポートするのではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のがこの身体の正しい使い方のようだな』


 ニックの正しい扱い方……ではなくその真の異常性。

 それは装着した相手の身体を新しい自分の肉体として操縦するというとんでもないものだった。


「……」

『……』

「何じゃそりゃぁぁ────!!」

『お、落ち着け! 大丈夫だ、ちゃんと後で解放するから!!』

「今すぐ解放してくださいよ! 何か頭がボーッとしてきたんですけど! マジで嫌な感じがするんですけど!!」

『ま、まぁ待て! まずは君の体をデモスの居る場所まで運んでいくよ!!』

「外してからにして……ってちょっとぉおー! 」


 ニックはスコットの身体で勢いよく走り出す。


『……ふふふ』

「に、ニックさん?」

『ふはっ、ふははははははっ!』

「ニックさぁーん!?」

『はーっはっはっは! 走るのって気持ちがいいなぁー、スコットくぅーん!!』


 久し振りに自由に動かせる肉体を手に入れたニックは『ふはははは』と上機嫌に笑いながらデモスの待つメインデッキへと猛ダッシュした。


まぁ、その力で酷い目に遭うんですけどね。

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