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「むむむ……アレは」
UFO内部でヤリヤモの一体がドロシーの姿を発見する。
「まさか……アレが船を攻撃したのか?」
「馬鹿な、ディフェンサーを起動していなかったとは言えこの船に損害を!?」
「だが、着弾箇所から計算された弾道から導き出された地点にいるのは……!」
ドロシーの姿を大型ディスプレイに表示する。その姿を見てデモスは目を見開いた。
「あれは……我が同族か?!」
映し出されたその姿はまさにデモスと瓜二つだった。
金糸のように煌めく髪に、風になびく頭頂部の触覚器官。
淡い宝石のようなルワン色の大きな瞳、妖精のように整った目鼻立ちに小柄な体格。
そしてキラリと輝く丸メガネ……
「どう見ても同族だ!」
「あんな所まで逃げていたのか!?」
「馬鹿な、どうして同族が私達を攻撃するのだ!?」
どう見ても同じ種族にしか見えないドロシーに攻撃されたヤリヤモ達は混乱する。
「いや、待て! 違う! よく見ろ……あの胸部を!!」
「「「!!!」」」
ヤリヤモの一体がドロシーの胸部分に注目……
────ぽよよんっ。
画面一杯に拡大されたそのバストはその小柄な体格には不釣り合いなまでに豊かに実っており、デモスを挑発しているかのように生意気に揺れる。
「「「……」」」
ヤリヤモ達は無言でデモスの胸を見る。
「別種族だーっ!!」
「なんだあの大きさの母性器は! 私達よりも遥かに大きいぞ!?」
「だ、だが交信器の大きさは私達が勝っている!」
「いや、共振器や交信器の大きさは問題ではない! 問題はあの顔だ! 同志とそっくりじゃないか!!」
「同志が攻撃されたのはきっとコイツが原因だ! コイツが原住民を困らせている大罪人に違いない!!」
「うぐぐぐぐ……!」
デモスは顔を真っ赤にしながら声を張る。
「同志達よ、船の全砲門を全て奴に向けろー!」
「同志、それはやりすぎ……でもないが! 落ち着け!!」
「吹きとばせー!」
「全砲門を斉射すればこの星が住めなくなってしまう! それではここまで来た意味がないぞ!!」
「うぐぐぐぐっ! だが、このまま見逃す訳には……!!」
「そうだ! 今こそ同志の種を受け継いだ彼等の出番だぞ!!」
「その前にまずはディフェンサーの展開だ! あと二発も奴の砲撃を受ければ浮いていられなくなる!!」
「こ、こちらに高速で接近してくる物体を発見!」
ドロシーの存在に気を取られていたのか、ヤリヤモは船に接近する現地生命体の反応に気付くのが遅れる。
「何者だ!?」
「わからない! 恐らくは近くのウィクスコに住んでいた原住民だと思うが……」
「な、何だ!? このアストラル反応は……尋常ではないぞ! 有り得ない!!」
「まさかこの船に攻め込む気か! 一人で!?」
「そんな馬鹿な、確かにこのアストラル反応は脅威だが船を落とせる程でもない。第一、この高さまでどうやって飛ぶ気だ」
ヤリヤモ達はこちらに向かってくるスコットに怪訝な視線を向けた……
「どうやら向こうも此方に気付いたようだぞ!」
「みたいですねぇ!」
「どうする気だ!? まさか此処から」
「その、まさかですよっ!!」
スコットは力の限り地面を蹴り、信じられない大跳躍を見せた。
「うおおおおおおおおっ!?」
「あぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」
一飛びでデモスのUFOと同じ高さまでブッ飛んだスコット。
物理限界やら法則やらあったもんじゃないデタラメな身体能力にニックは驚愕する。
「き、君は一体何者なんだ!?」
「俺も良くわかってません!」
「何だって!?」
「ただ……ッ!!」
背中から生えた悪魔の腕は大きな翼へと瞬時に変形し、文字通り悪魔のような禍々しい姿になって大空を舞う。
「……とんでもないのを身体に宿してるのはわかります」
「……あの腕は変幻自在なのか?」
「そうみたいですね……」
スコットは悪魔の翼で雄々しく羽ばたきながらUFOに接近するが……
「! 待て、そこで止まれ!!」
「?」
いざ船内に乗り込もうとした瞬間にニックが制止する。
「どうしたんですか?」
「……この大きな船を覆い尽くすように金色の壁が張られている」
「き、金色の壁? 何ですかそれ」
「それも凄まじく強力なエネルギーを秘めている……これは触れただけで消し飛ぶな」
「いや、その……俺には何にも見えないんですけど……」
ニックの視界にはUFOを包み込む金色のバリアと多数のパネルが表示され、全てのパネルに【DANGER】と書かれている。
異世界出身である彼には何のことだかさっぱりわからないが、パネルの一つに表示される赤文字のDANGERと荒ぶりまくる棒グラフで 触れればマズイ という事だけはわかった。
『見えないのか?』
『ええ、何も』
『うむむ……私にはハッキリと見えるんだが……』
「「「……!!!???」」」
船内のディスプレイで様子を見ていたデモス達は呆気にとられていた。
「な、なななな!?」
「何だ、今のジャンプは!?」
「そ、それどころか……単体でエアレイドしているぞ! どういうことなの!?」
「お、落ち着け! ディフェンサーがある限りは奴は船に侵入出来ない! 最高出力のディフェンサーだ、触れただけでクォーツまで分解される!!」
『うーん、とりあえず殴ってみますね!』
「!!?」
ディスプレイに映るスコットは片羽を変形させて再び大きな腕を形作る。
「ま……まさか」
『待て待て! 大丈夫なのか、片羽で!?』
『うおっ、おっ! 飛びにくい! 危ねえっ!!』
『当たり前だ! それにこの壁に触れると危険だ! 殴った腕が吹き飛ぶぞ!?』
『殴ってみればわかりますよ! それで死んだら笑ってください!!』
「奴は正気か!?」
『んじゃあ、行くぞぉぉぉーっ!!』
スコットはふらつきながらも腕を大きく振りかぶり……
─────パキィィィィンッ
唸る拳の一撃で、最大出力のディフェンサーに大穴を開けた。