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幻騒のカルネヴァーレ ~Carnevale of Phantasm~  作者: 武石まいたけ
chapter.7 「憎い憎いも好きのうち」
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2

「うーん……」


 代金を払って喫茶店を出たスコットは考え込んでいた。


「俺、何か悪いことしたかな……?」


 特に問題を起こしてもいないのにスコットの脅威レベルは4まで上がっている。

 ()()街で暴れたりはしたが、彼が暴れてくれたお陰で少なくとも2回は二桁区(ダブルナンバー)が救われているというのに。


 それなのにこの結果は納得がいかない。


「……やっぱり、社長と一緒に居るからか」


 そこで思い当たるのがドロシーの存在だ。


 辞める辞めると言いながら彼はまだウォルターズ・ストレンジハウスでお世話になっており、先日はメンバーの一員として仕事に臨んでいる。

 特に目立ったトラブルも起こしていないのに脅威レベルが上がった原因は恐らく彼女達と行動を共にしているからだろう……


「よし、社長に辞表を渡そう! 色々とお世話になったけどやっぱり俺にあの会社は合わない!!」


 等と本気で思っている彼は今日こそ彼女に辞表を叩きつける決心を固め、輝ける新生活に向けて力強い一歩を踏み出した。


 ────ゴォン!


 そんなスコットの脳天に空から落ちてきたボーリング玉サイズの()()()が直撃した。


「はぁぶぁっ!?」


 頭部に強烈なダメージを受けたスコットは頭を抱えて地面を転がりまわる。


「あだっ、あだだだだだだだぁーっ! あ、頭っ! 頭がァッーッ!!」


 脳天を電流のように駆け抜ける激痛に悶え苦しむ彼の目の前にゴロゴロと転がってくる()()()

 そのボーリング玉サイズの謎の物体は丸い双眸をパッチリと開き……


「やぁ、はじめまして! 私の名前はニック! いきなりの事で混乱するだろうが、ちょっと話を聞いてくれないかな!?」

「うわぁぁぁぁぁあっ!?」


 畳み掛けるようにしてスコットに話しかけてきた。


「驚かせてしまったのなら大変申し訳無い! だが見ての通り私も非常事態なんだ!!」

「いや、見ただけじゃ何一つ状況が理解できませんけど!?」

「くっ、駄目か! やはり()()()()の人間に私の話は通じないのか……!!」

「いやいや! まずは状況説明してくださいよ! それと俺の頭に落っこちてきたことを謝れ!!

「説明は後だ! とりあえず私を拾ってすぐにこの場を離れてくれないか!?」

「はぁ!?」


 ボーリング玉サイズのSFチックなフルフェイスヘルメットにも見える謎の物体。


 ただの機械にしてはやけに人間臭く、まるで中に()()()()()()()()()()()()()()()高度なコミュニケーション能力を備えていた。


「え、ええと」

「急げ、殺されてしまうぞ!!」

「え、何ですって!? 殺される!? どういう事!!?」

「早く、ここで死にたくないなら私を……!」


 ────ズシンッ。


 謎の物体と言葉のドッジボールに励んでいるスコットの前に、銀色に光る甲冑を身に着けた()()()()()()()が着地する。


「……!」

「……な、何だ?」

「早く私を拾って逃げるんだァ────ッ!!」


 頭のない重剣士が巨大な剣を振り上げるのと同時に、スコットは地面に転がるナニカを拾い上げて反射的に横に飛ぶ。


 ズガァンッ!!


 振り下ろされた剣は道路を裂き、通行人や建物を真っ二つにしながら数十mにも渡る長大な裂け目を刻んだ。


「なっ!?」

「急げ、すぐに第二撃が来る! 早く奴の剣が届かない距離まで離れるんだ!!」

「ああもう! 何なんだよぉぉーっ!!」


 スコットはナニカを脇に抱えて猛ダッシュする。


 彼の生存本能は悪魔の腕を呼び出して戦うよりも即座に逃げることを選び、とにかくその場から全速力で逃走した。


「……」


 重剣士は地面を裂いた大剣を徐に引き抜いてガシャンと肩に担ぎ、走り去るスコットの後を追うように歩き出す。


 だが、数歩進んだ所で重剣士の背中に大口径の特殊麻痺弾が命中した。


「よし、確保ォォォォーッ!!」


 身体が麻痺して膝をつく重剣士に特殊魔導装甲隊員が突撃する。


「うおおおーっ!」

「よくもやってくれたな、畜生ー!!」

「この一桁区で暴れるとはいい度胸だ! このまま異常管理局に突き出してやる!!」


 最新型の強化外骨格(スケルトン)に身を包んだ隊員達が一斉に重剣士に襲いかかる。


 装甲車も一撃で破壊するパンチでぶん殴り、大型トラックを軽々と持ち上げる豪腕で抑え込んで瞬く間に無力化した。


「隊長、確保しましたー!」

「よくやったぁ!」


 白い強化外骨格に赤く01のマーキングを施された部隊長がフェイスガードを上げて誇らしげに言う。


「俺達から逃げられると思ったか、バカモノめ! 異常管理局(セフィロト)の精鋭は何とか退けたようだが、生憎この俺が指揮を取る部隊はそれ以上の精鋭だぁ! 鍛え抜かれた純粋人類の力を舐めるなよ!!」


 部隊長は取り押さえられて身動きが取れない重剣士を大きな拳でぶん殴り、ガハハと無駄に大きな笑い声を街中に轟かせた。


「おい、そいつの武器を取り上げろ!」

「了解です! く……っこのっ!!」


 ギギギギギギ……


「くそっ、何だこの力は……!? 全然、放さないぞ!」

「ええい、仕方ない……高出力レーザーブレードの使用を許可する! そいつの腕を切断しろ!!」

「了解しました!」


 隊員の一人が腕部に格納されたレーザーブレードを展開する。

 決して大剣を手放さない重剣士の右腕を切り落とそうとレーザーで形成された刃を近づけるが……


「……」


 重剣士は手首をぐるりと一回転させ、フェイスガードごと隊員の頭をかち割った。


「あっ、ぱっ!?」

「何っ!?」


 グギギギギギ……


 神経を麻痺させる強力な麻痺弾による銃撃を受け、更に複数の特殊魔導装甲隊員に取り押さえられているのに重剣士は悠然と立ち上がる。


「ば、馬鹿……」


 ブゥンッ!


「────なっ??」


 そして手にした大剣で周囲を薙ぎ払い、自分を拘束する隊員ごと部隊長を両断した。


紅茶飲んでると定期的にフザケた話を書きたくなるんですよね。

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