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父さまの逆襲

お読みくださりありがとうございます


「ただいま~」

玄関ホールに入っていくと、兄さんが待ち構えていた。


「おかえり、リナ。手紙、ちゃんと殿下に渡してくれた?」

「うん、兄さんの言いつけの通り、殿下に、私が帰宅してから手紙を読むようにと父さまから託けですって言って渡したよ。」

そういうと、よしよしと、頭を撫ででくれた。


「着替えたら、話を聞かせておくれ。」

 そう言って自室へ戻って行った。


 私も部屋に戻り、兄さんメイクを落として着替える。

着替えを終えると兄のもとへ行き、早速、一日の報告をした。


 兄は帝王学の講義を受けたことに、驚いていたが、内容を聞かれたので、兄も興味があるのかと、少し詳しく話をすると、もういいと言って、途中で止められた。


興味のないものを無理強いしてしまったのかな?と黙っていると、兄はため息をつき。

その講義は、殿下と二人で受けることの方が問題になるかもしれないのだと言った。


今のところ周囲に知られていないなら問題は無いが、リナが嫌ならば、きちんと断りなさいと助言をくれた。

約束してしまったので、あと一回だけ、殿下に付き合って受けると話すと、そうかとだけ小さく返事をした。


それから、母さんの突撃があり、お茶会に行く時用のドレスの案を見せられたのだが、かなり派手なものであったので、あまり目立ちたくないから、派手さを抑えたものにしてほしいとお願いした。


そうこうしているうちに夕食の時間になり、食堂で家族と食事をとる。


「リナが王城勤務に決まってから、ジルドが早く帰ってきてくれて、嬉しいわ~。」

と、母さまはルンルンと呑気に話している。


父さまは帰りの馬車の中で午後の詳細を聞き、またもや険しい表情になり、私の頭を黙って撫でていた。


父さまは、母さまの言葉で、その話を思い出したのか、食事を一旦やめて私を見て、

「リナ、大丈夫だ。手は打ったから、安心して明日は登城しなさい。」

と、帰りの馬車の中で言っていた言葉を、もう一度言った。


「今日は初日で慣れていなかったし、力不足であるから、大変だと感じてしまったけれど、殿下の役に立てるように精進するから、私は大丈夫よ。父さま、ありがとう。」

リナは、ニコッと微笑んで返事をした。


母さまが

「リナ、仕事は、頑張るのよ。」

と、優しく気遣い。

兄さんがその様子を見て目を細めていた。



翌日、殿下の執務室に行くと、殿下の隣に見覚えのある男が立っていた。


「あれ?カイル?」

そう彼に声を掛けると、殿下がカイルを驚いた表情で見た。


「よう、リ、アルム。今日からよろしく。」

「よろしくって?」


そう話しながらカイルの近くへと歩いて行くと、カイルの後ろから、ひょっこり顔を出した殿下が話し出した。


「おはよう、アルム。彼は、第一王子、アレクシス殿下の近衛騎士 カイル・モーリスだ。兄上の命により、今日から君の警護を任されたそうだ。」

爽やかに殿下が話し掛けてくる。


「あ、エドワード殿下、おはようございます。え?僕の警護ですか?」

「そう、アルムの警護だって、昨日、大臣がアレクシス殿下に相談したみたい。」

そうカイルが言うと、チッっと、カイルの背後から、舌打ちがした。

気のせい?


何で私に警護?と考えていると、

「な~、その、君たちはどんな関係なんだい?名前で呼び合っているようだけど、し、親しい関係なのか?」

イライラした口調で、殿下が聞いてきた。


でも顔は、あの王族スマイルである。

「彼は、俺の姉、マリア・モーリスの婚約者です。それに領地が隣同士で、家同士も仲が良いので、赤子の頃からよく遊んでいます。かなり親しいです。」

そうカイルが淡々と返した。


「へ、へぇ~。」

と言い、殿下はカイルを王族スマイルでジッと見ていた。

口元が数ミリほど引き攣ったが、誰も気づかない。


カイルは殿下を見ないで、何か面白いことが起きているのか?

早く詳細を話せといった心の声、全開で、こっちを見て来る。


そんな空気などお構いなしに、私は仕事へと意識を切り替え、進行する。


「では、仕事を始めましょう。」

空気を無視してスケジュール確認をしだし、書類整理に取り掛かった。


昨日のように、頻繁に殿下が私を呼びつけていると、カイルが

「殿下、少しよろしいでしょうか。なぜそのような事で、アルムを呼びつけるのですか?」

と、聞いた。

 ズバリ聞いちゃった。


「さっきの案件は、アルムに聞かなくても、よさそうな事をわざわざ聞いているようでした。それと、資料を持っていくのは、俺が居る時は、俺に言ってください。それくらいなら俺にも出来ますから。アルムが行ったり来たりしすぎて、辛そうです。」


天の声!ありがたや~

この微妙な距離の移動、椅子から立つ座るの動作、地味にキツカッタノデス。


そう心の中で思っていると

「え、そうか、そうなのか、アルム、辛かったのか。すまなかった。つい、君と近づきたくてしてしまった……許してほしい。」


 殿下が私との距離を縮めたかった?

 臣下と仲良くしたいのかな?

そう言ってからの殿下の呼びつけの頻度が、ガクッと減ったのです。


 ああ、有難い。

すると、どういうことでしょう?

あっという間に書類整理が終わってしまいました。


「書類整理も終わったし、そうだ皆でお茶でも飲まないか?」


殿下が提案し、近衛が侍女に伝えるべく、扉へと近づいたのだけど、それをカイルが制止し、

「休憩時は、大臣の許へアルムを連れて行くように、アレクシス殿下から申しつけられておりますので、連れて行きます。よし、リ、アルム行くぞ~。」


カイルがそう言いだしたので、殿下は慌てて、

「待て、まだだ、まだ休憩ではないぞ。仕事はある。山ほどある。そうだ、先日、バラ庭園に母上が植え付けした新しい品種のバラを見に行く予定だったのだ。」


と言い終えるか終えないかに、カイルが

「すみません、殿下、午前のスケジュールは書類整理のみのはずです。アルムは執務の手伝いが職務ですから、バラ庭園へは、近衛を連れて、殿下、おひとり行ってください。それでは、午後の執務に間に合うように戻りますので、失礼いたします。さあ、リ、アルム行くぞ。」


そうカイルが言うので、私は殿下にペコリと頭を下げ、そそくさとカイルの後について執務室を出た。


大臣室でカイルと父さまと、弁当を食べて午前中の出来事の雑談をする。

父さまはカイルから話を聞くとカイルに盛大な拍手を送り、褒め、大満足だと笑っていた。

 父さまが嬉しそうであったので、私もニコニコしていた。

 時間が余ったので大臣の仕事のお手伝いもした。


その日の午後は殿下の勉強の時間になっていて、何かのレッスンがあったようで、私に一緒に来てほしいとお願いされたが、カイルが執務には関係ないと突っぱねて、私は執務室で後日用の書類整理と殿下の回されている案件のまとめを一人でした。


 殿下が戻り、今日中に済ます書類作業もまとめておいたので、仕事はすぐに終わってしまった。

カイルに押し切られ、本日の業務は終了となり、カイルと共に大臣室へ移動した。

かなり早い時間だったので、父さんの書類の手伝いをさせられた。

カイルは送り届けて直ぐに、本来の自分の持ち場へ帰っていった。

そして、早く仕事の終えられた父さまと一緒に早々に帰宅し、一日が終わった。


家では、父さまは上機嫌で母さまと共に沢山笑っていて、話を聞いた兄さんは遠くを見つめ、何かを憐れむ表情をしていた。


日に日に殿下がピリピリしてきていた以外変わりはなく、その日常は、お茶会の前日まで続いた。

この日常は、少し寂しいような気もするが、殿下にバレないように父さまが手を打ってくれたのだ。

 致し方ない。



お茶会前日。

いつも通り、午後の書類整理も終え、帰宅しようとしていると、

「殿下、明日、俺は休みを貰っていますので、こちらへは来ません。」

と、カイルが殿下に告げた。


「あぁ、休みの件は大臣から聞いている。お前は明日、兄上の仕事だろ?ずっとそっちに居てくれていいのにな。」

 イライラ口調で殿下が話す。


 最近、執務室の、殿下の雰囲気がよろしくない。


 フーとと、カイルが息を吐き、

「いえ、明日は、殿下もご存知かと、俺の従弟、ハロルドのお見合い茶会が開かれるので、その手伝いに出る予定で、ですのでアレクシス殿下の警護も休みです。リナも、やべっ。」

 うっかり口を滑らせた。


「え?」

「えっと、それでは俺達はこれで失礼しーー」

カイルが挨拶をしているのを遮り、殿下が

「待て!アルム、そのお茶会、妹君も参加するのか?」

と、リナに聞いてきた。


「あ、はい。母さまが約束をしてしまいましたので。」

そう答えると、


「そ、そうか…………。」

悲しげに呟いた。




次はお茶会。

公爵家子息ハロルドが登場します。

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