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初勤務1です

お読みくださりありがとうございます。

おかしな点は、ブラックホールへ投げ入れてください。


はあ、起き上がりたくない。

今日から王城勤務である。


ノック音と共に侍女が顔を出し、起きているのを確認すると、支度に取り掛かる。


「リナ様、今日からアルム様のお洋服をお借りするとのことでしたが、こちらでよろしいでしょうか?」

そう言って、兄さんの昨年着ていた洋服の一式を見せる。

さらに、これも必要ですよねと、さらし布、厚め生地の下着に、底上げ靴、あれ、結構重たいのよね……も見せた。


「うん、それでいい……。あ~行きたくない。エマ、どうにか行かなくていい策はないかしら?」

「そうですね、直ぐに思い浮かぶ策、当日となりますと、仮病を使われる方が多いようですが。」

「仮病……。」


「ですが、リナ様の場合、仮病はご家族の凄まじい反応による妨害と、周囲への混乱が生じますので、愚案でございます。他の策をお考え下さい。」


 そんなこと分かっている。


「自分で思いつかないから聞いたのに。」

「朝食のお時間でございます。」

「うぅ、エマが冷たい。」


食堂に行くと、既に父さまと兄さんが席に座り、食事を待っていた。

「おはようございます。父さま、兄さん。」

「ああ、おはよう。」

「リナ、おはよう。」

席に着いてボーっとしていると料理が運ばれてきた。


「リナ、今日から私の馬車で一緒に出勤するからね、早く準備をするように。」

 うぅぅ、父さま、行かなければならないのですね。


「……はい、分かりました。」

悲しい顔をする娘に、申し訳なさそうな顔を向ける父。


兄は父を見かねて、

「大丈夫。あいつは何も出来ないから、これまでもそうだった。心配いらないよ。」

と、妹に聞こえないように父に小声で伝えた。


リナは食事を済ませ部屋に戻り、兄に似せるように、エマが目尻と眉に仕上げのメイクを施した。

私にはあり、兄には無い左目の泣き黒子を化粧で消し、男らしく凛々しく見える様に、眉を濃くし、目尻が少し釣り上がって見えるようなキリっとした印象のメイクを施す。

兄が着用している同型の細長い四角フレームの度数の無いメガネをかける。

これで、目元の黒子もフレームで完全に隠せる。


 王城であるので周到にせねば。


昔はメイクがなくても、双子のように似ていた兄妹だが、年齢を重ねるごとに、背は伸び、身体つきや顔つきも、兄は男らしくキリっとしていき、妹は体や雰囲気も女らしさが出で、目元の黒子も濃くなり、柔らかい顔立ちになっている。

 殿下の命令は、アルムへの変装が本当にもう限界だと思っていた矢先の事であった。


こんなことなら二年前、他人に変装が見破られた時に、殿下のお遣いもさっさと断っておけばよかったと、今さら後悔していた。

先日の定期報告をもって、変装して登城するのをやめると、兄には告げてあったのに。

 それなのに、こんなことになるなんて……。


メイクが終わり、玄関ホールへ降りていく。

そこには兄がいた。


「父さまは先に馬車に乗っているよ。」

そう言って兄は、父から殿下に渡すよう言われたという、手紙を渡してきた。

手紙を渡すときに一言そえるよう伝言を頼まれた。


馬車に乗車すると、父さまが王城内の部屋の位置や勤務等の詳細を話してくれた。

それから、今日の昼食は、屋敷のコックに弁当を頼んで持ってきたので、大臣室で一緒に食べるようにと言った。

父さまが居てくれると本当に心強い、その場で感謝の言葉を伝える。


殿下の執務室は、報告の時に行くので、良く知る道順だ。

馬車が城に着き、大臣室への分かれ道で、父さまと別れた。

そして、ついに殿下の執務室の前まで来た。


トントン、ノックをして、兄の名を名乗り、来たことを告げ、部屋のドアが開いくのを待つ。

いつもの報告の時よりも、じっとりとした汗が滲み、緊張していた。


扉が開いたので、中に入ると、いつも奥の執務机の所に座っているはずの殿下が、扉の近くまで来ていた。


短すぎないプラチナブロンドの髪をキッチリ後ろに流して固め、凛々しい眉に金色の大きな力強い瞳の整った顔立ちで、背が高く、ここは草原だったかな?と思わせるくらいの爽やかさを醸し出す王子様がそこに立っていた。

後ろの大きな窓から入る光に反射して一層キラキラしすぎて、目を背けたくなる。


「やあ、いらっしゃい。さぁ、こっち、おいで。」

そう言って、誘導してくれるのですが……。


殿下、気のせいでなければ、私の腰に、掌が当たっております!!

それに腕を回している手で肩を抱いていますよね?


おーい、力が強いよ。

 私、男装してアルムと名乗っていますし、認識は男のはずですよね??


内心では、滅茶滅茶混乱しておりますが、今の私は外見が兄さんです。

冷静沈着、無表情、自分の大切な人以外には、無関心を貫かなければなりません。

しかし、この部下に対する殿下の行いは、通常運転なのだろうか?


 どうなの、これ?

チラッと壁際の体格の良い近衛に目を向けると、目線を全力で逸らされました!

 んん?それはどういう反応なのですか?


しかし、そのまま手を引かれ、力を籠められ腰を押されているので、強引に奥へと不可抗力で進む。

 その時の私は、もう何も考えまいと無表情です。


殿下の机の真横に小さな机と椅子が用意されていて、ここが今日から君の席だよと、案内されました。

 腰から腕が手が外れて、心底ホッとしましたよ。


「さあ、座って。」

殿下はそう言って椅子を引き、今度は強引にリナの両肩を手で押さえ、椅子に座らせた。

そそくさと、殿下も自分の机に行き、座ります。

座ると、殿下の横顔がとてもよく見えます。


その時、自分が部屋に入ってから、殿下に挨拶をしていないことに気が付きました。


ガタっと、慌てて立ち上がり、

「エドワード殿下、本日から執務の補助をさせていただきます。アルム ハートフィルです。微力ながら、精一杯務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。」


男の兄さんに似せる様に声を精一杯低くし、その場で、挨拶をした。


「うん、よろしく。」

そう、さっきの強引な感じとは違い、ニコニコしながら殿下は返事をしてくれたが、いつもと違う、違い過ぎるエドワード殿下の態度に、リナはかなり戸惑っていた。


それからぎこちないながらも、殿下のスケジュールの確認を始め、父さまから預かった手紙を渡す。

それから、書類整理のお手伝いが始まった。


 室内は終始無言であった。

兄さんは、お気に入りの人以外は必要以上に喋らない。

だから、私語は悪なのであるスタイルで、オーラを放ち、真剣に仕事をこなします。

これはアルム変装時のルールです。


領地や父さまの手伝いを兄さんのサボり時や二人が忙しい時に、私は兄さんに変装させられ駆り出され、手伝わされていたので、こういう仕事もそこそこは出来るのです。

といいますか、無理矢理、叩き込まれました。


父さまや兄さんは、交換ごっこが大いに役に立つと喜んでいましたが、私からしたら、えらい迷惑な問題を押し付けられ、嫌な思いをすることの方が多かったので、何とも理不尽でした。

しかし、学んだ経験がこんな形で役に立つとは、無駄ではなかったのだと、この時、報われました。


そんな事を考えながら、結構な時間、黙々と作業をこなしていますと、

何やら先程から殿下がソワソワしだし、チラホラと私に指示を出し始めたのです。


「アルム、そこの資料を持ってきてくれる?」

「これでしょうか。」

「アルム、ここの所、どう思う?」

「この件でしたら~」

「アルム、ここきて、これを確認して。」

「えっと、これでしょうか…」


あれ?あれ?なんか呼ばれる頻度、さっきからもの凄く多くなっていない?


「アルム、アルム、アルム…早く。」

「は、はい。今行きます。」


何でそんなに呼びつける…疲れるわ。

そう心の中で思っていても、顔にも声にも出しませんよ。

 無表情ですよ。


相手は殿下ですから、文句も言えませんし。

でも、それって私を呼ぶ必要ありますか?という案件で呼ばれると、イラっと顔に出そうになってしまいます。

しかし我慢です!相手は殿下ですから。


突然、ドンドンと大きなノック音が部屋に響いた。




初出勤長くなったので、2分割します。

後程、投稿します。

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