番外編のエドワードside:最高に幸せな男 2
お読みくださりまして、ありがとうございます。
最高に幸せな男1の続きです。
エドワード視点です。
俺や家族はすこぶる忙しく、リナになかなか会えない…そんな折だった。
「あれ?リナ、まだ講義の時間じゃないよね、どうしたの?これから、どこか行くの?」
王城に、リナが講義時間より早く来ていて、通路でバッタリ出くわしたのだ。
偶然、そう、あくまで偶然ね。
息が上がっているのをバレないようにしないと。
「ごきげんよう、テッド。会えて嬉しいわ。私は、マリ姉から預かった手紙を渡しに、内務大臣室と宰相室へ、お遣いを済ませに行く所なの。」
「さ、宰相室だと!」
宰相室にはあいつが居るではないか……俺は気がついている。
明らかにリナを狙うハイエナのような男がいることに。
あいつだ、新宰相補佐 ハロルド!!
カイルからは、あいつはリナを諦めたと報告が来ている。
王城でリナと話しているのを時々見かけるのだが…。
その時のリナを見つめるあいつの目、絶対にリナを諦めていない。
俺は死んでも譲らんぞ!
「わ、私も一緒に行こう。」
俺は、口許がひきつるのを隠すように王族スマイルを作り、無意識にそう口走っていた。
まずは大臣室。
トントン。
「私です、兄さんに手紙を届けに来ました。」
「入れ。」
リナが入室を願い、大臣が嬉しそうな声で返答した。
扉を開け、リナに続いて入室すると、俺の事を大臣とアルムが忌々しいといった様子で、睨みつけてくる。
「殿下の入室は、許可しておりませんが。」
アルムが毒を吐く。
大臣が後ろで深く頷いてる。
クソッ、この性悪鬼畜親子め、強引に結婚を早めたことを、まだ根に持っているのか。
俺はドアの前で立ち止まり、
「オホン。大臣、入室の許可をいただきたい。よろしいか?」
と問う。
「ええ、王族ですし、御勝手にどうぞ。」
大臣が頗る爽やかな笑顔を向けて、雑に返してきた。
クッ、厭味ったらしい……いかんいかん、義父さんになる人だぞ。
心を穏やかに接しなければ、フー。
俺は冷静を装い、そそくさとリナの近くへ寄って行く。
「兄さん、これを昨日、マリ姉から預かっていたの。今日、王城で渡すように頼まれたわ。ねえ、マリ姉とは、うまくやっているのよね?もっと沢山会って、話を聞いてあげて欲しいの。」
手紙を受け取り、即座に読み始めたアルムに向って一生懸命に話すリナだけれど、あれは全く耳に入っていないと思うぞ。
ん?手紙を読むアルムの顔色が、もの凄くヤバくなっていっている。
あのアルムがあの表情!?
いったい、あの手紙には、何が書いてあるんだ?
あらら、慌てて大臣に駆け寄ってる。
おあっ、大臣も真っ青!?
あの手紙、何だ?
欲しい!
大臣が震えた声で話し出した。
「アルム、お前、ばらしたのか?」
「いいえ、これは我が一族の最重要内分です。まだ話しておりません。」
「では、なぜこのことを――」
と、言い掛けた時、バッと勢いよくこちらを振り返り、大臣が俺を見た。
うん、マズイって顔に出てるよ。
大臣にしては珍しく、動揺しているな。
これは、かなりバレてはいけない、ハートフィル侯爵家の秘め事なのだろう。
し、知りたい!メッチャ、知りたい!
そんな俺の眼差しを察したのか、オホンと大臣は咳払する。
アルムがすぐさまそれを察知し、リナに手紙の返事は直接マリア嬢へ直接するからと告げ、俺達を部屋からサッサと追い出した。
チェッ、いつか秘密を掴んでやる。
次に向かったのは、宰相室だ。
あの害虫、ハロルドが居る。
気合を入れるぞ、オォー!
ドアをノックし、リナが手紙を届けに来たと、用件を告げるとドアが勢いよく開いた。
嬉しさを隠しきれていない表情のハロルドが、自らドアを開け、出迎えたようだ。
ドアの後方で、宰相室に手伝いに来ている文官達が、話をしている。
「あいつ、さっきまで死んだ魚のような目で、書類整理をしていたのに、いきなり花が咲いたような笑顔になった。あんな顔出来たんだな。」
「俺なんて、あんなに早く動くあいつを、ここに来てから初めて見たよ。」
コソコソと話しているのが聞こえてくる。
「リナ、どうしたんですか?手紙とは、先日の返事を直接届けに来てくれたのですか?」
弾んだ声でハロルドが尋ねる。
返事だと?リナ、こいつと、手紙のやり取りしているのか???
俺に隠れて……まさか!まさか、こいつと浮気か!?
そんなことないよね? ねえ、無いって言ってよ~。
ハロルドが、リナの後ろから入室してきた俺に気が付いたようで、目が一瞬、光を失う。
あっ、これか、死んだ魚のような目。
だが、すぐ持ち直し、紳士の対応で、貴族の微笑みを浮かべ、部屋に招き入れる。
「殿下もいらしていたのですね。さあどうぞ奥へ、今、お茶の用意をいたしますので。」
と丁寧にハロルドは接客した。
フッ、害虫であるが、さすがの対応だ。
次期アーハイム公爵よ。
リナを長居はさせないぞ。
こいつとリナを近くに居させたくないし、話をさせたくない。
俺は、リナ限定で心が極狭なんだよ。
「その必要はない、リナ、もう手紙を渡したのだろう。さあ、講義室へ向かおう。」
俺はリナの手を引いて、すぐさま部屋を出ようとすると、
「殿下、しばしお待ちを。手紙の返答を急ぐようならば、リナにお願いしたいので。」
そうハロルドは言い、手紙を即座に開けて、読み始める。
すると、ハロルドは目を見開き、口を手で覆い固まった。
そして、リナを見据えると、即座に距離を詰め、両肩を掴み、力強い口調で懇願し始めたのだ。
「リナ、私にはもう時間が無いんだ。頼む、私の話を聞いてくれ。このままでは、また手遅れになってしまう。それだけは嫌なんだ!」
部屋中の者が視線を向け、何事かと驚いてこちらを見ている。
そんな鬼気迫るハロルドを宥めるリナ。
「ハロルド、落ち着いて。いったい手紙には何が書いてあったの?マリ姉は何て?」
その言葉は、ハロルドには届いていない。
そしてハロルドが…。
「私は、君の事が好きなんだ。だから、このまま、殿下と結婚してほしくない。頼む、私のことを考えてみてくれないか?最後の最後に、婚約者の居る君へ、酷い要求だとは分かっている。それでも、悪あがきをさせてほしい。このまま、何もせず、指をくわえているのだけは嫌なんだ。私の本当の気持ちを知ってもらいたかった。君にことが好きだ……後悔はもうしたくないんだ。」
部屋に沈黙が流れ………………ない!!!
俺が叫んだ!
「お前、よくも婚約者の俺の居る目の前で、そんなことが言えたな。」
俺は、カーっと頭に血が上って、ハロルドの首元を掴みかかっていた。
ハロルドは掴んでいる俺の手を外そうとしながら、
「分かっている。殿下が婚約者であることも、殿下の気持ちも、彼女の気持ちも、全て分かっているんだ。それでも、それでも私の気持ちを知ってほしくて、私の事も考えてもらいたいたかったんだ!」
俺とハロルドのもみ合いに、リナはアタフタしてしまっている。
そこに、
「君達、そう言ったことは、他所でやってくれ。それに女性を困らせている。やめたまえ。」
細長い手足で顔が小さく八頭身の抜群なスタイルなのに、髪が薄毛で頬がこけ不健康そうな男が、俺とハロルドの間に割って入り、引き離した。
「さ、宰相様……すみません。」
ハロルドが着崩れた服を整え、申し訳なさそうに謝る。
「アーハイム殿、休憩をあげるから、きちんと話しておいで。さあさあ、ここからとっとと出てって。」
そう言って、宰相室から、3人は追い出された。
宰相室のドアの前で、腹立たしさの消えない俺は、ハロルドにもう一度食ってかかろうとした。
しかしそこへ、
「あ、いたいた、殿下ー探しましたよ。陛下がお待ちです。急いで、円卓の間へ―――」
と、そう叫びながら、意気揚々と俺達の手前までダミアンがやってきた。
だがしかし、並々ならぬこの場の雰囲気に気づき、逃げ腰になり歩みを止めた。
俺は、今ここを離れられない。
リナとこいつを二人きりなんて、絶対にさせないぞ!
ダメだ、ダメだ。
ハロルドに睨みをきかせる。
俺は、怒りのオーラを纏い、解き放つ。
くらえ、威嚇のメンチギリ!
俺が威嚇攻撃をしている間、あぁ、うぅと言い右往左往しているダミアンの後ろから、カイルが近衛を数人引き連れてやってきていた。
「あ~あ、やっぱり姉さんは凄い、大当たり。殿下、会議ですよ~。皆がお待ちです。」
そうカイルが言った後、近衛達に羽交い絞めにされて、俺は連れていかれた。
その時、リナへ耳打ちする、カイルの声が聞こえた。
「リナ、気持ちを伝えた奴には、きちんと返してやれ。どんな答えでも誠実にな。伝えるってのは、凄く勇気がいるんだから。」
その言葉に、リナはコクンと頷いた。
あれ?カイル、もしや、もしや、お前も……いや、言うまい。
俺は不機嫌顔のまま、会議に参加した。
そこには内務大臣も出席していた。
不機嫌であった俺だが、話が進むにつれて、とびっきりのご機嫌ヤローとなっていった。
何故ならば、先日起こった問題の大半を、内務大臣が引き受けてくれると言うのだ。
さらに、リナとの結婚への協力も惜しまないと言う。
何だ?何が起きたのだ、大臣よ?
手紙か!?先程のあれか、いったい何が書かれていたのだ?
まぁいいや、キャッホー!これで百人力じゃー。
ありがとう、お義父様!お世話になりますぅ。
会議が終わり、俺はウキウキスキップをしながら、執務室へと戻った。
だが、ハタと思い出す。
そうだった、それどころではない。
あいつとリナは、どうなった?
周りを見渡しながら
「キーラン、居るかー?」
と、声を掛ける。
ヒョコッと、柱の影から、黒ずくめの小柄な男が姿を現した。
「おります。」
「報告を。」
「かしこまり。あの後、リナ嬢は、アーハイム殿と回廊のすぐそばのベンチへ移動し、お話しされていました。結果から言いますと、告白のお返事は断りました。」
「よっし!」
拳を握りしめ、グッと力を入れ引く。
よしよし、結果は分かりきっていたのだが、これはチョー嬉しい!!
キーランは続ける。
「そして、しばし2人で歓談なされた後、握手をし別れました。」
「そうか、あいつは諦めたのだな。」
「あ~と…あれは、まだ諦めてないでしょうな。悩みが出来たら、お互いにまた手紙で相談しあうと、約束させられていましたから。リナ嬢は、少々、危機感が抜け落ちておられるようですな。」
知ってる……ちょっとばかり、鈍感で、危なっかしいんだよ。
でも、それが可愛くて、守ってあげたくなっちゃう所でもあるんだよね~。
分かってないなぁ、キーランは。
「その目。我には理解しがたい思考であると、返しておきましょう。」
「なぜ、俺の心が分かるんだ。声に出ていたか?」
「いいえ、殿下は、リナ嬢の事になると、思考が読みやすいので。」
「そ、そうなのか……まあよい、また報告を頼む。」
「御意。」
そういうと、キーランは、また柱の陰に消えていったのであった。
よし、これで、全力で結婚準備へ取り掛かれるぞー!!!
殿下、強い味方(義父)をgetしました。
次回で、殿下sideは終わりになります。




