番外編(前半):娘よ、まずいことになっています
再び、お読みくださりまして、ありがとうございます。
書き足りなかった部分、番外編を書きました。
完結時から1年は経過しています。
本日、我が家、ハートフィル侯爵家のお庭で、小さなお茶会を開いています。
参加しているのは、私こと、リナ ハートフィル侯爵令嬢。
ソフィア チェスター伯爵令嬢、 シャーロット モントローズ辺境伯爵令嬢。
そして、クリスティーナ リンジー子爵令嬢である。
「あら、そのネックレス、イエローダイヤモンドで、私とお揃いね。ソフィア。」
リナがニヤニヤしながら話す。
「まあ、本当ですわね、お揃いですわ。さすが、親友ですわね。」
両手をパンッと合わせ、嬉しそうに話すシャーロット。
「ククッ、2人とも止めてよ。ヒィー、見てよ、あのソフィアの顔、可笑しいったらありゃしない。」
クリスティーナがソフィアの不機嫌顔を見て、ゲラゲラ笑う。
いつもは、おちょくる側のソフィアだが、今のリナとシャーロットの遠回しの揶揄いに、ソフィアは、もう突っついてきたかと、仏頂面になったのだ。
ソフィアは大きく息を吐いた後、
「ええ、この1年逃げ回っていたのだけれど、ついに直接、プロポーズされたのでね……逃げられなかったわ。王族の申し出には、逆らえないわよ。」
「あんなに警戒していたのに、ソフィーが追い込まれたなんて、アレクシス殿下もやるわね。」
「いったいどんなプロポーズだったの?」
リナが感心し、クリスティーナが質問する。
王妃様のお茶会以来、アレクシス殿下はソフィアに猛アピールをしていたのだ。
それを良しとしないソフィアは、アレクシス殿下のスケジュールを入手し、絶対に出会わないように対策していた。
もちろん、プレゼントや手紙も軽やかに、お断りであった。
プレゼントは、無難な理由付けて突っ返し、お誘いの手紙は、その日は用事が~から始まり、手紙を見るのが怖い、手を痛めていて返事が書けないなど、可笑しな理由も使い、断り続けたのだ。
一緒に考えるのが少し楽しくなってきていたのにな。
「先日、ほら、例の事件があったから、しばらく、王族は忙しいだろうと、久々に羽を伸ばしに王都の本屋に足を運んだのよ。家にある本も、こもりきりだから、全て読み終えてしまって。完全に油断したわ。店を出た瞬間、殿下に捕まったの。そして、その場で即座にプロポーズされたわ。断れないのが分かっているくせに、逃げ出さないように、わざわざ多くの民たちの目の前でね。」
掌を握りしめて、悔しそうに話すソフィア。
「ソフィー、アレクシス殿下と結婚するの、そんなに嫌なの?」
リナは、心配で、思わず聞いてしまった。
ソフィアは、きょとんとした顔をしてから、ゆっくり首を振り、
「嫌ではないわ。顔も頭もいいし、一緒に居て絶対に退屈しないし、話も合うから楽しいし、公務で色々な国に連れて行ってくれると言っていたし。それに、リナと姉妹になれる。」
えっ、それって、イイ事だらけじゃない!?
「ただ、私が彼に負けたみたいになっているから、心底悔しいのよ。」
最後は憎々しく顔を歪めて語った。
「そ、そうなのね。」
ソフィアが、嫌々、婚約を承諾した訳ではない事が分かり、リナは一安心する。
「それより、あの事件、凄かったわね。宰相補佐、国宝すり替え売却未遂。ずっと、ここの所、王家に関わる事件が続いていたけど、あれは流石に、陛下も気に病んだでしょうね。」
あの事件とは、宰相補佐官が、王家の国宝と言われる品々の中から、数点をすり替え、盗み出していて、その国宝を闇ルートで売り飛ばそうとしたものであった。
すり替え品は巧みに作られていたそうだ。
実はこの事件、我が家は把握済みであった。
兄さんが公表したがっていたものの1つだ。
あの時は、まだ、宰相補佐は盗むまでしかしていなかったはずなのだが……。
「知っている?宰相補佐、仕事の鬼こと宰相様の威圧的ストレスで、かなり気が滅入っていたらしく、憂さ晴らしで国宝の偽物を作って、すり替えて、盗み出していたそうよ。盗み出すのと贋作がバレないことが、二重の快感になっていたのですって。」
そう、情報通のクリスティーナが話す。
「あら、それなら、なぜ国宝を売ろうとしたのかしら?」
シャーロットが疑問を口にした。
そう、なぜ売ろうと考えたのか。
「借金があったそうよ。ポーカー賭博に、のめり込んでいたらしいわ。そこで、負けが続いて、にっちもさっちもいかなくなったと聞いたわ。」
「さっすが、ソフィー。そこまで調べられるとは!この事件、国宝が絡んでいるから、情報がほとんど出なかったのよね。」
クリスティーナが感心する。
実は、このポーカー賭博に、我が家が絡んでいるとは、口が裂けても言えない。
盗品を売らせるために、ポーカー賭博で負ける様に仕向けていたなんて。
絶対に、絶対に言ってはいけない!
ちなみにポーカー賭博を運営していたのは、王妃の弟の嫁の弟、国立研究所長の義弟だ。
かなり儲かっていたようで、裏社会にも繋がりがあるようだ。
これまた厄介な案件だ。
おそらく、前回のエドワード殿下管轄区の下水道整備の欠陥問題の件が片付きそうになので、我が家の者が、次を仕掛けたのだろう。
殿下は、リナポンコツのくせに、仕事だけは出来るから忙しいと、兄さんが嘆いていた。
リナポンコツ??
察しのよい人は気付いていらっしゃるだろう。
そう、あのプロポーズから1年経つが、リナは、エドワード殿下と、結婚出来ていないのだった。
未だに婚約者のまま、ハートフィル侯爵家でのんびりと過ごしている。
あのあと、我が家のモットーは、有言実行になのだと初めて聞かされ震えた。
「その事件の売買先の闇ルート、どうやら、元ギ国の王太子が関わっているそうよ。」
何それ、凄く知りたい。
そう、元ギ国王太子、こいつは、私が殿下と婚約して暫くして、ネペジル国、第8王女と電撃結婚をした。
あの光のような速さには、正直驚かされた。
ちなみに、第6王女は、ハヴィ国 第5王子と婚約した。
第5王子は、他の兄弟王子よりも少ないが側妃が9人いるので、10人目のめでたい妃となるようだ。
しかも正妃。
正妃、よかったですね~と、ソフィアの品の良い声が聞こえてきそうだ。
あの王妃様のお茶会の後、ソフィアが私達のギ国訪問での事を、殿下達に聞かれて、仕方なく答えたと話していた。
そのせいなのか、彼らが電撃結婚してから3ヶ月後には、ギ国の王太子は王太子ではなくなり、王族でもなくなっていた。
確か、表向きは病気の為、公務が出来ず、静養すると言って、ギ国の田舎町へ移り住んだとなっている。
実際は、軍事国家、シュタルク帝国の最高指揮官、大元帥の愛娘に手を出したとか……。
正確には、大元帥とその娘の滞在時に、娘の体を触ったり、抱きついたり、関係を迫ったり、耳を舐めたりしたため、シュタルクの大元帥が激怒し、ギ国を滅ぼそうと軍を動かしたので、怒りを治めて貰うために、王太子を嫁共々、引き渡したと風の噂で聞いている。
元王太子は立場を利用し、私利私欲で、見境なく同じことを繰返していたのか。
ペネジルの王女と結婚もしたのに……最低だ。
いくら、大元帥の娘が絶世の美女であっても、シュタルク帝国に手を出すのは、不味いと分かるだろうに。
「あれ?ギ国の元王太子は、今、シュタルク帝国に捕まって居るんじゃなかったの?」
「逃げたらしいわよ。嫁を囮にして。」
マジか!?
「今は、闇組織ドクラと関りを持っているそうよ。今回の事件も、他国に運び出すのに、元王太子の持っていた情報から脅されて、請け負うはめになったって、実行犯が自供しているって。おそらく、元王太子だったから、そのツテや情報を、ドグラにうまく利用されているのでしょうね。」
はー、とんでもねーな、元王太子。
「それより、さっきから静かだけど、シャーリーは、どうなったの?この前の例の決闘から。」
ソフィアの言う、この前の決闘とは、モントローズ辺境伯とフィリップによる、騎士団訓練場での一騎打ちである。
王妃様のお茶会後、私達は話し合い、シャーロットは、フィリップと、お友達から始めてみることとなった。
この通り、彼女は人見知りが激しいので、2人で会うにも一杯一杯になってしまうという事で、デートには必ず、私かソフィアが、フォロー要員でお供していた。
強烈なフィリップの接近には、注意と言う名の鉄槌を入れていたのだが、半年過ぎたくらいには、割とふたりきりでも話せるようになってきていた。
そんなある日、モントローズ辺境伯夫人が伯爵に口を滑らした。
娘が男性と会って、ふたりで会話が出来るようになったと。
それを聞いた伯爵は、騎士団へ特攻。
フィリップに決闘を申し込んだ。
決闘は、やはりと言うか、フィリップが負けた。
ただ、かなりの激戦、接戦だったようだ。
さらに、伯爵に強くなるために自分を鍛えて欲しいと願い出たらしい。
それを気に入った伯爵は、教授することを約束した。
つまりは、婚約者に仮内定である。
「決まりそうなの?」
心配そうに聞くリナ。
「ええ、不本意ながら……。」
下を向くシャーロット。
「フフッ、シャーリー、友達の事を笑えなくなったわね。」
ソフィアがお返しだと、皮肉を言う。
「クリスは?」
「あら、皆さんに言っていなかったかしら、私、今日からピッタリ30日後に結婚しますの。お相手は、グランツ商会の跡取りよ。庶民との結婚だから、大規模ではないのだけど、結婚披露会、来てくれるかしら?」
驚いた、いつの間に??
「グランツって、大商会じゃない。いつそんな話になったのよ。大規模じゃないって言っても、クリスのことだから、凄そうね。ぜひ、参加させてもらうわ。」
「私も!クリス、おめでとう。」
心から喜ぶリナとシャーロット。
「いつ言ってくれるのか、ハラハラしたわ。クリス、おめでとう。」
ソフィアがそう言うと、
「今日言うつもりだったのよ。やっぱり、ソフィーは知っていたか~サプライズにしたかったの。だって、皆には色々驚かされっぱなしだったから、仕返しよー。」
そういうと、得意気な顔をして、クリスティーナは高らかに笑った。
「彼とは、王都の屋台で知り合ったの。立ち食いして歩いていると、たまに顔を合わせて、だんだん話すようになって。市井の情報収集しているのを手伝っていたら、すっかり仲良くなったのよ。正直、貴族の噂話より、面白い話がたくさん聞けて、楽しかったの。それが商売に活かせるなんて、最高じゃない?気が付いたら、プロポーズをこっちからしてしまっていたわ。そしたら、そういうものは、男からするものなんだって、彼からの仕切り直しになったの。もちろん、即承諾したけど。」
おめでとうと、皆で、お祝いの言葉を送る。
ワイワイと詳しい話を聞いていると、そこに、客人が現れた。
前半は、女子の報告会でした。
まだ、娘も男も出てきません。
会話の中にだけ、男は出てくる感じでした。
後半に続きます。




