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母と娘の大事な話

お読みくださりありがとうございます

誤字報告もありがとうございます。

助かります。



 お茶会の前日、ハートフィル侯爵邸では、朝から母さまによるリナのお茶会ドレス最終チェックが行われていた。


 バタバタと動く夫人がいる部屋の隅で、カイルがテーブルに腰かけ、優雅にお茶を飲んでいた。


木犀のパーティションの隙間から顔をだし、リナがカイルに話し掛ける。


「なんで、今日もカイルがうちに居るの?」

「ん?だって、俺はお前の護衛任務を命じられているから。」

「え、そうなの?前から思っていたけど、カイルは何から私を守っているの?」

「え、何から?お前の敵から?」

「敵?誰それ??」


 試着も一段落したので、居間に移動し、カイルとお茶を飲む。


「お前、あの男爵令嬢の話、聞いたんだってな。」

「えっ、なんでカイルが知っているの?」

「フィリップと王城で会って、少し話をしたから。それで……大丈夫なのか?」

「何が?」

「お前の事だから、自分のせいだとか思い悩んだりとか。」


 そうか、皆、私の性格を考えて、このことを黙っていたのだと、今更、気づかされる。

 気を使わせてしまっていたのね。


「それはもう済ませたことだわ。ただ、マリ姉に嫌な思いをさせてしまったことが、気がかりなんだけど。」

「済ませたって、思い悩んでたのかよ。ああ、あの時か、そうか、そういうことだったのか。それより、姉さんのことだけどさ、気に病むことは全くないぞ。あの時、こんな経験したことないから、楽しくてしかたがないって、心から喜んでいたからな。」

「へ?」


「だから、お前は、自分の気持ちが示すままに、好きに動いていればいいんだよ。」

 カイルは、目を合わせずに、ぶっきらぼうにアドバイスした。


 ありがとう、カイル。

 心の中で呟き、ゆっくりとお茶を口に運ぶ。

 温かな空間に、カップの音だけが聞こえる。


 そこへアルムがフラりと帰ってきて、横を通りかかる。


「あれ?兄さん何でいるの?仕事は?」

「ああ、あまりにも疲れたから、昼に少し休憩を貰ったんだ。」


 アルムがリナの横の椅子に腰かける。


「嘘だね。アルム、逃げてきたんだろう?」

 カイルが目を凝らして、話す。


「そうだよ。アレクがいつもは、クソ王女の担当なのに、今朝やって来た第6王女がアレクに一目会ったとたんに心酔して、追いかけまわし始めたから、あいつをエドワードのもとへ行かせない役目が出来なくて、大堤防が決壊しているんだ。大惨事なんだよ。あの国の王女は、みんな、クソなのか?」


「アレクシス殿下は立ち回りが巧いから平気だろうが、エドワード殿下の近衛は、アルムが居ないんじゃ、今頃、大変なことになっているだろうな……権力に物を言わせて横暴な振る舞いの王女様だろうから、止める方も無暗に手を出すと、不敬罪になるからな。死人が出るかもしれないぞ。」

 カイルがぼやく。


「わかっているよ。このお菓子を食べて、ちょっと昼寝、休憩したら、すぐ戻るつもりだから。はぁ、本当にバカの相手は最悪だ。早く国に帰って欲しい。」


「あの、兄さん、私が代わりましょうか?」

 リナは男装して代ろうかと、なぜかそんな案を出していた。


「え?本当に?じゃあ」

「ダメに決まってるだろう!アルムも、何のために俺がここにいるか、分かってるよね?」

「分かってるよ。冗談だよ。カイルは堅すぎる。」

「え?何のために、カイルはここにいるの?」


 リナがアルムに質問すると、カイルが慌ててアルムを見るが、気にしない様子で話し始める。


「昨晩、王妃の侍女が休憩中にお喋りしているのを、王城内を探し回っていたクソ王女が聞いちゃったらしいんだ。エドワード殿下には想い人が居て婚約が決まっているから、イザベラには勝目が無いとか噂していたそうだ。それを聞いたあのバカが、相手は誰だと詰め寄って暴れたそうだ。それで何があるか分からないからって、念のためカイルを寄こしているんでしょ。」


殿下の婚約者が決まっている!?

そのために、私のところに来た???


混乱しながら、とりあえずカイルに確かめる。

「そうなの?」


 リナが聞くと、カイルが気まずそうに頷いた。

よく分かっていない中、会話を続ける。


「その……王女は、そんなにもエドワード殿下の事を、熱烈に想われているのねぇ。」


リナが胸の突っかかりを問うと、アルムが、

「そうだな。ぼやぼやしてると、そのうち、取られるぞ。我が国の道を通りたければ、殿下と結婚させろとか言いだしかねないからな、権力振りかざして脅しをかけるのは、あの国の奴らは得意だから。」

「うわぁ、ありえそうで面倒くさいなそれ。」

 と、カイルが言い、アルムと大きな声を出し、笑いあっている。


 その隣で、リナはショックを受けていた。


 もし、そんなことを言われたならば、エドワード殿下でも結婚を断ることは出来ないのではと……悲観していた。


アルムがいない間に何かあったらまずいのでは?

 リナは、すぐにアルムを家から追い出し、王城へ戻らせた。


 アルムが遅くに帰宅した時には、さらに疲れていて、王女への悪態をこれでもかと、ついていた。


 その夜、リナは昼間に兄の言った言葉が引っかかり、夕食後も自室の机に座り、黙って何時間も考え込んでいた。


 殿下はリナの気持ちをいつまでも待つと言ってくれたけれど、本人の意志とは関係なく、待つことのできない状況に追いつめられるようなことも起こりうるのではないのか……。


婚約者が決まっていると言う話も……自分以外なのでは?


「殿下が誰かと結婚してしまう!?」


 それを想像した時に、殿下の隣に、自分が居ないことが、とても悲しく感じた。


 またもや胸が苦しくなり、涙がこぼれる。


 ***


トントン。

 どうぞというと、母さまが部屋に静かに入ってくる。


「まだ部屋の明かりがついていたから、明日は王城でお茶……泣いていたのね。何かあったの?母さまに話してごらんなさい。」


 コクンと頷き、自分の気持ちを母さまに打ち明けた。


 殿下が誰かと結婚してしまうと考えると心苦しい。


 誰かと一緒の所を見ても、胸が締め付ける様に苦しくなり、その相手を嫌悪してしまう。


 殿下の言葉や顔をふと思い出したり、殿下の行動や気遣いに嬉しくなって、つい笑ってしまう。


 殿下に会いに行きたいと思ってしまう。


 殿下に対してのこの想い……自分はどうしてしまったのか、どうしたらよいのか分からない。


「それはね、リナはエドワード殿下に恋をしているのよ。誰か一人の男性を心から想い、お慕いしていると、自然となってしまう気持ちなの。そう、リナはエドワード殿下が好きなのね。」


「私が、エドワード殿下の事を好き……。」


 その言葉に、リナの中で、カチッとピースの嵌る音がした。


 そして、殿下のクシャっとした笑顔が思い浮かび、トクンと心臓が跳ねた。


 最初は何とも思っていなかった。

 むしろ、思考が読み取れなくて、スゴく苦手だった。


 仕事を手伝うようになって、臣下を大切に想う、優しい人なんだと知った。

 それから、話をして、楽しくて、ギャップにもドキドキして。


 いつも一生懸命で、時々抜けていたり、斜め上な行動したり、変なことで落ち込んだり、妙に自信家だったり、意外に感情が隠せなていなかったり、急に、可愛かったりして……。


 こんな変わっている私のことも、大切に、大切に扱ってくれる。


 これまでの想いを真剣に伝えてくれて、心から嬉しかった。


 私の方こそ、もっと傍に居させて欲しいと、離れたくないと思っている。


 ああ、いつのまにか、こんなにも私は、殿下の事を好きになっていたのか……。


 気持ちを確信したと同時に、自分が何をしなければならないのかも、自然と思い浮かんだ。


 “恋は機会を逃すと消えてなくなるって、もたもたしていると生き遅れる。相手に少々悪いと思っても、惨めな思いをしても、みっともなくても、後悔するよりよっぽどましだから、逃したくないと思ったら、手を伸ばして掴め!”


 ソフィアの力強い言葉が頭をよぎる。


「母さま、明日のお茶会ですけれど、お願いしたいことがあります。」


 そう決心を告げ、お願いをすると、母さまはそのことに了承してくれた。

 そして、静かに立ち上がり、リナの頭を撫でると、おやすみなさいと挨拶をして、部屋を出ていった。


 気持ちがスッキリして、リナは、明日の為にとベッドに入り、眠りについたのだった。



遂に、リナが恋を自覚しました。

次回から王妃様のお茶会です。

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