アルムの勉強会と和解
お読みくださりありがとうございます
家に戻り、兄の部屋の扉をノックする。
トントン。
「リナです。」
「どうぞ。」
相変わらず、兄は執務机に座り、分厚い難しい本を読んでいる。
随分と古めかしい書物のようだ。
貴重なものだろう。
「兄さん、エドワード殿下から伝言です。今日から王妃様のお茶会まで、私と代るようにって。」
「え?何で?」
「兄さんは、天敵だからって。」
「天敵?誰の?ああそうか、王妃様のお茶会で、王女が来たんだね。」
「あいつ!?えっと、ネペジル国の第8王女、イザベラ様が来ました。」
「分かった。はああああぁぁ、すっげぇー嫌だな。」
と呟き、兄さんは肩を落とした。
「今回のお茶会って、確かアレクの相手探しのはずだよな?イザベラは、エドワード狙いだろ。何で招待されているんだ?他にあの国から王女は来ていないのか?」
「エドワード狙い…………。」
リナが無意識に呟く。
アルムは聞き逃さない。
アルムがニヤリと笑い、話を続ける。
「そうだよ。イザベラはエドワードが13歳の時から纏わりついているんだ。確か、うちの領地に来る前からだ。あの時のエドワードは鍛錬や勉学に、鬼人の如く打ち込んでいたんだけど……それをあいつが邪魔しまくっていたから、エドワードに即座に嫌われていた。空気の読めない、何を言っても分からないおバカだから、手に負えなくてな。他国の王女だから、扱いが厄介なんだ。自国の令嬢なら、今頃、王妃様によって永遠に会うことのない修道院へ送られてるだろうな。」
殿下がイザベラに微塵も興味が無いと言うことに、リナは内心ホッとした。
何故自分はホッとしたのかと、首を傾げる。
分からないので、とりあえず放置する。
会話を続けよう。
「6年前からお慕いしているなんて、エドワード殿下の事を身も心も、深く想っているのね。領地で会った時と、外見がかなり変わりましたものね。」
「リナ、エドワードから聞いたの?テッドとして、昔会っていたこと。あれは、クククッ、外見変わりすぎだよな~。ただし、イザベラは内面ではなく、外見に一目惚れしたはずなんだよ。確か、顔がメッチャ好みだって話しだったはず。顔自体は、そこまで変わってないからなのかな。」
「えっ?そうなの?」
「覚えてないのか?あれから、殿下に何度もあったんだろ?」
「いいえ、会ってないわよ。領地でも顔をよく見てなかったから、記憶になくて。次にあったのは定期報告の時だから、もう今の感じだったし。」
「嘘だろう、エドワード……あいつ、本当に何してたんだ?」
何やら兄が呆れた表情で止まっている。
「1度、精神的に壊してみるか……。」
兄が怖いこと言い出した。
「止めてあげて。短期型究極ダイエットになるだけだから。」
つまらんといった顔の兄さん。
「それで、他の王女も来ているのか?」
「まだ城には着いていないわ。予定では、両王女とも、お茶会の前日に来るはずだったみたい。確か、もう一人は第6王女が来るって言っていたわ。」
「第6か、まだましかな。リナはネペジル国の王族について知っているか?」
「いいえ、知らないわ。ネペジルについては、西海へ抜けるのに通過しなければいけない国っていう程度しか聞いたことなくて。」
「そうだよな。では少し教えてやろう。」
兄の説明によると、ネベジル国は、西海へ通過する為に通らなければならない道を保有する国、その認識はあっているという。
まあ、ウェルト王国の隣の隣の国が接している小国なのだが、ネペジル国は豊かな資源があるわけではないので、近隣国から買い付けた原料を加工した製品の交易や、外交により巧く渡り合っている国なのだそうだ。
外交の手段のひとつに王女の輿入れがあり、他国に無闇に攻め込まれないよう送り込まれる。
ネベジル国は、王様に王妃が数人いる国である。
側妃や愛人ではなく、王妃が第何王妃として扱われているのだ。
現王には、第1から第5王妃までいる。
そして、子供は生まれた順に第1王子、第1王女と位を賜っていく。
現在、王子は9人、王女は13人いる。
王女は各国に輿入れされ、王子はより優れた者が王のさじ加減で次期国王に任命され、その他の王子は王に近い立場の臣下となり、それぞれが、自国の高爵位の貴族の婿に入る。
競わせるということもあり、各王妃が独自の教育を子供たちに施すことになっていて、育てる王妃によって、当たり外れがあるようだ。
なぜ兄がこんなに詳しいのかと言うと、以前、テンペストの大会がネベジル国の隣国で開催された際、その日程がアレクシス殿下のネペジル訪問の公務が近かったため、一緒に連れて行かされたそうだ。
その際に、ネペジル国のテンペスト仲間達がお国事情を詳しく教えてくれたのだと言う。
第3と第4王妃の王女は教養が無い、王子にしか手を掛けていない。
第1王妃の子は権力を傘にし、振る舞いが横暴である。
しかし、教養だけは一流教師のお墨付き。
第2王妃の子は男女共に性格もよく優秀なのだと、
酒の肴に面白可笑しく聞かされたらしい。
それと、アレクシス殿下に側近の役目も押し付けられたから、何人かとは、直接会ったそうだ。
ちなみに、今度来る、第6王女は第5王妃の2番目の娘で、以前の公務では会ってはいないが、良くも悪くもないと聞きかじっているそうだ。
ごくごく普通との評価だった。
イザベラは、第1王妃の末娘で、第8王女、第1王妃の末娘だから甘やかしが酷いらしい。
その上、彼女は勉強嫌いで、第1王妃お抱えの一流教師陣が匙を投げたらしく、おつむも嘆かわしいと、兄は言っている。
「リナ、気を付けろよ。まあ、エドワードが守ってくれるだろうけどな。」
リナは兄のその言葉にドキッとする。
またもや心がじわっと温まる違和感を感じ、胸に手を当てる。
「さてと、現状を把握してくるかな~。」
「あっ、うん頑張ってね。」
「心配か?」
「ええ、少し。」
「フッ、あいつは全く心配いらないよ。昔から頭の中は、リナしか住んでない。」
そう言って、アルムは話を切り上げ、共に部屋を出た。
***
翌朝、兄と父さまをお見送りした後、急に予定が空いてしまったため、何をしようかと考えていると、客人の訪問があったと知らせが来た。
聞くと、カイルとマリ姉であると聞き、居間へ通すように伝えた。
居間に行くと、2人は注がれたお茶に手も付けずに、黙ったまま、リナを待っていた。
「2人とも、どうしたの?兄さんは王城へ行ってしまってるし、カイルは王女が来ているから、忙しいのでは?」
「アルが居ないことは知っているわ。私達、この間の事で、リナに謝りに来たのよ。騙すようなことをしてしまって、ごめんなさい。従兄の頼みとは言え、リナの気持ちを考えないで良かれと思って、勝手に行動してしまったことを謝りたくて。本当にごめんなさい。」
「ごめん。」
マリ姉とカイルがテーブルに着くかもと言うくらい頭を下げる。
「謝るのは私の方だわ。あの後、色々と知ることがあって、私があのような態度をしていた理由に、決着がついたの。ハロルドにしてしまったことが、酷いことであったと気づいて、今では反省しているの。だから、あの時、誰の言葉にも耳を貸さなかった私の方こそ、謝らなければならないのよ。ごめんなさい。」
リナも深々と頭を下げた。
そして、お互いに許しあい、和やかに話し始める。
「そうだ!リナ、王都の植物園に行きたいって言っていたよな。今日は一日暇なのだろう?今から行くか?」
カイルが提案してきた。
「行きたい!行ってみたかったの~。」
「じゃあ、善は急げね。早速出かけましょう。」
そうマリ姉が言うと、3人は、あっという間に馬車に乗り、植物園へと向かったのである。
この時の私達は、あの人に偶然会ってしまうなんて、
一欠片も予想していなかったのです。
終盤に突入しております。
特に意味のない設定ですが、テンペスト界では、アルムとアレクシスは有名人です。
本人達が強者であるのはもちろんの事、テンペスト始まって以来の名勝負を繰り広げた アルム父と現国王陛下の子供達だからと言う理由もあったり、無かったり。
本当に特に意味のない謎設定でした。




