エドワードside : 俺は叫びたがっている
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エドワード視点です。
帝王学改め、王妃教育講義を終え、いつものように和やかにリナとお茶をしようとウキウキしている際に、リナから自白を受けた。
自分はアルムではない、リナであり、これまで王家を騙していたことを謝罪され、自分達に罰を下すよう懇願した。
だから、自分は王子妃には相応しくないと、ブローチを返された。
一瞬、目の前の彼女は何を言っているのだろうと、脳内の情報処理が追い付かず、思考を飛ばしてしまっていた。
その間に、リナは部屋を出て行ってしまう。
カイルもリナの言葉に、しばし停止し、動くのが遅れたようで、部屋を出て行ったリナを追う為に、慌ててドアへ駆け寄っていた。
カイルがドアに手を掛けた時、ふと思い出したように、エドワードに声を掛けた。
「殿下は、よろしいのですか?」
その声にエドワードは我に返った。
ハッ!今、リナは何と言った?
騙していた?誰が誰を?
相応しくないから、受け取れないだと?
絶対に、そんなの総てが間違ってるじゃん!
ちゃんと伝えないと!
言われたことを理解し、慌てたエドワードが、テーブルの上に置き去りにされたブローチを鷲掴み、もの凄い勢いで立ち上がり駆けだす。
カイルが開けていたドアの横を突風の如きすり抜ける。
「どこへ行った?」
前を向いたまま声に出す。
「殿下、おそらく大臣室だと。あっ、ほら、やっぱり、あそこ、あの通路に向かっているの、リナですよ。」
直ぐ後ろについてきていたカイルが遠くを指さしながら、そう答えた。
なりふり構わず、駆け足で急ぎながら、カイルの示す方向へ向かい目をやると、リナが王族の住まう棟から大臣室のある棟へ向かう回廊へ向かおうとしているのが見えた。
どうやらかなり出遅れてしまっていたようだ。
リナ、足早すぎるよ。
これではまずいと、エドワードは廊下の窓に駆け寄り、窓から身を乗り出し、叫んだ。
「リナー、リナー、待ってくれ、止まってくれ!」
自分が呼ばれているのに気づいたようで、リナがキョロキョロと声の主を探している。
よし、気づいた。早く僕の想いを知らせないと。
あっ、俺の方を見た。
よしよし言っちゃえ。
俺は叫んだ。
「リナー、リナー、僕はまだ君に伝えていない、だから話を聞いてほしい。」
その時、さっきの室内の扉付近に居た、俺の近衛騎士、ダミアンがカイルの背後に追い付いた。
「殿下は何をなされているのですか?」
ダミアンが肩で息をしながら、カイルへ聞く。
「思ったより、リナが遠くにいってたから引き留めようと、声を掛けているんだ。」
「ああ、アルム様ですね。あれ?でも、今、リナって叫んでますけど。」
「えっ?」
カイルが信じられないと言った目で、ダミアンを見て、声を漏らしていた。
「え?アルム?リナじゃダメか?そうか、今はアルムだから……。」
エドワードが呟く。
リナじゃダメなのか!?
確かに今はアルムだし、アルムって呼ぶべき?
「「へ??」」
ダミアンとカイルが、俺の返答に不思議がっている。
そういえば、ダミアンは天然だったとカイルが考え、ダミアンが、そうかリナ様がアルム様に変装していたんでしたねと、ようやく勘違いに思い至った時である。
俺は、叫んでしまっていた。
「アルム、アルム、俺はお前の事が好きなんだ。話を聞いてくれーーー。」
よーし、言ってやったぞ!と、顔を紅潮させ、満足した笑みを浮かべ、後ろを振り向く。
すると、ダミアンは目をひん剥き、カイルは白目を向いていた。
あれ?何か、皆の反応が予想外なんだけど??
「ででで殿下、こんりゃんしすぎですよ。おちゅつけ。」
どうした、カイル?
混乱してるのは、お前だよ。
そう俺が考えていた時、カイルは幻覚を見たそうだ。
眼鏡を掛けた地獄からの使者が、壁の隙間の闇から、ゆらっと現れるのを。
そして、リナの熱烈な訴えが聞こえる。
リナが発した言葉により後光が照らされ、女神が現れ天から救いの手を差しのべられたと。
その眩い光に当てられて、地獄の使者は壁の隙間へ姿を後退したのが見えたのだと、カイルは、のちに、しみじみと語った。
「殿下ーー!僕を揶揄い、悪ふざけするのも、大概にしてください。耐えられる限度がありますよ。今のは流石に我慢なりません。今すぐそこに行きますから、そこで待っていなさい!」
ああ、首の皮一枚繋がった。
カイルは女神に感謝した。
「よかったー。リナ帰ってきてくれるって~。」
カイルに話し掛けると、彼は悟りを開いている最中だった。
まあいいやと、リナをウキウキして待っていると、リナの人影が小さく見えた。
あっ、来た来た。リナ、足早いなー。
あれ?ん、あれ?なんか表情が……地の底から這いあがってきた悪魔みたいな形相なんですけど……ええええ?
あ、でも怒ったリナも悪くないな。
バカな事を考えるな、これは……目茶苦茶、怒ってるぞ。
赤から青く顔色を変え、ゴクリと唾を呑み込む。
正面にリナが来て、ピタッと止まり、腕をグッと掴まれ、俺は連れていかれた。
どこに行くんだろう……黙って従おう。
ムフフ、強引に連れて行こうとするリナも、頑張って力入れていますって感じで、本当に可愛いいなあ~。
執務室へ入ると、手荒に腕を離される。
キャッ、少々乱暴な扱いもギャップでまた惚れちゃう。
一呼吸置いてから、リナが話し出した。
「殿下、あんなに大勢の前で、いったい何を考えて、あのようなことを口にしたのですか?」
ギロリと俺を睨むリナ、ゾクゾクする。
クゥーッ!
ヤバい、ふざけてないで、弁明しなきゃ。
「あの時は、リナに想いを伝えなければと必死で。」
「アルムって言いましたよね。アルムって。」
「リナは今、アルムの格好だから、伝わらないかと思って、だから、アル…………まずいな。」
「マズいですよ。私、知らないですからね。」
やっちまったな……。
地獄の使者の名前、出しちゃってたわ。
「フォローはしておいたので、今後、変な噂が出た際には、殿下が対処してくださいね。兄にもそう報告しておきますので。では、私はこれで。」
踝を返し、リナが即座に部屋を出ようとするので、腕を掴む。
待て、待て、待てー!
「何ですか?」
「少しだけ、少しだけでいい、話をさせてくれないか?」
そう言って、俺の過去の話と、王族を騙していたという事は全くの誤解だと弁解する。
正念場だ!
絶対に説得する。
俺がどれだけヘタレなのかを話すのは恥ずかしいが、今、言わなければならないだろう。
届け!俺の想い。
リナ、絶対に逃がさんぞ!
***
これまでのことを打ち明けると、リナは今の状況が俺の我儘で起こっていたと、受け入れてくれたようだった。
リナがこのことを聞き、傷つくことは無かったと、ホッとした。
それならば、俺の肝心な想いも、ひと思いに伝えたい!
せーの!
「僕は、あの時、リナと出会い、興味を持ち、君に恋をした。それから、リナに会いに行き、リナのことを知る度に、その感情は強くなるばかりだった。これまでリナをずっと想ってきた。そして、これからもリナだけを想っていく。変えることが出来ない。きっと、君にフラれても、ずっとリナ一人を想っていくだろう。それくらい好きだ。どうか、この気持ちを受け止めてほしい。リナに好きになってもらえるように努力をしていくから、もし、僕のことを受け入れてくれるのであれば、これをつけてほしい。いつまでも待つから。」
俺は、リナに領地で会って以来、空いた時間を見つけては、リナに会いに行っていた。
犬と戯れるリナ、木陰で本を読むリナ、刺繍をするリナ、お茶をするリナ、仕事をするリナ、男装をするリナ、兄とケンカするリナ、ドレスを着た天使なリナ、舞踏会で令嬢を助けるリナ、馬を乗るリナ、学校へ通うリナ、寄り道するリナ、友人と話すリナ。
どれをとっても優しく、賢く、勇敢で、慈悲深い天使だった。
マイ、スイートエンジェル。
出会った時よりも、もっともっとリナへの想いが深くなっていったんだ。
ラブ フォーエバー。
遠くで見ていたばかりだったから、3年前の定期報告で、私の前に君が現れてから、目の前で動き、話す至近距離の君を見て緊張してしまって、王族スマイルで、動揺を常に隠していた。
そして、対面し話すことが出来るという、その現状に満足してしまっていた。
君の視界に入れることだけで、俺は大変満足だったんだ。
しかし、リナが婚約者探しを始めると聞いた時、衝撃が走った。
意識が宇宙まで飛んでいくほどに……。
兄上に物理的ショック療法により呼び戻された。
頭頂部に瘤が出来ていた。
リナに俺以外の婚約者が出来る可能性など、微塵も考えていなかったのだ。
だから今、こんな事態になっている。
本気を出さねば!
行動しなければ、取られてしまう。
それだけは、別の男のもとへなど行かせるわけにはいかないのだ。
俺の気持ちは、余すことなく直接伝えた。
出来れば王族特権は使いたくない……頼む!
俺の気持ちを受け入れてくれ!!
強い想いを込めて、リナに、再びブローチを渡すのであった。
あの時の裏側です。




