シャーロット、見つかる
お読みくださりありがとうございます
その2日後、母さまが我が家に、モントローズ辺境伯夫人と、チェスター伯爵夫人を招き、お茶会を開いた。
娘の私とソフィア、シャーロットも母親達とは違うテーブルに3人で座り、お茶をしている。
その日は、殿下に話があるから、登城を代わるよう兄に言われ、リナは家にいた。
「先日の披露会で話していた王妃様のお茶会の招待状が我が家にも届きましたわ。おふたりは……聞くまでもありませんね。」
ソフィアが王妃様のお茶会の話を切り出した。
「ええ、もちろん届きましたわ。」
「同じく。」
3人は目を合わせ、はあ~と、揃って大きくため息をつく。
「もし第1王子に気に入られれば、王子妃のちに……無理。絶対に、ありえない未来だわ。」
「その可能性は、私には無いだろうけど、それでも選ばれないように努めないと。自由が無くなるのはごめんだわ。」
「そうね、ソフィーは将来、世界中を見て廻るのが夢ですものね。王族になれば、好き勝手にちょっと外国へとは出来ませんものね。」
「そうなのよね。だから、何かやらかす?ドレスがダサすぎるとか、臭い香水つけるとか、化粧が濃すぎるとか。」
「無理、母さまが許さないわよ。外見をいじるのは難しい。」
「他の令嬢にいちゃもん着けて泣かすとかどうかしら?性格最悪令嬢みたいな。」
「それよりも、菓子を食べまくるとかは、どうかしら?」
リナとソフィアが、交互にいつもの調子で話し悪ふざけな計画をしていると、
「おそらく、このお茶会でやらかしたら、他の婚約話がいっさい来なくなると思いますよ。注目が集まっているお茶会でしょうから。」
と、シャーロットが絶妙に苦言を呈した。
そう、もうすでにあのスキャンダルな王族の噂は、秘密裏に広がっているようだ。
「ですよねー。」
「念入りに作戦練らなきゃですわね。」
ソフィアの言葉に、2人が頷く。
「ねえ、リナ、そのブローチとても上品ね。高価そうだわ。」
リナが聞く。
「ああ、これが先日、アレクシス殿下と話していたブローチよ。母さまが、この前のドレスでは付けられなかったから、今日、着けたらどうかって。」
ソフィアがブローチをじっくり見た後で、
「これって、アレクシス殿下が王妃様のお茶会に着けて来るように言ったのよね?もしかして、殿下からの贈り物なの?」
リナは、おずおずと答える。
「……エドワード殿下から頂いたの。」
2人が驚き顔で固まる。
そして、2人は顔を見合わせ、ニヤリとすると、
「なんだ、エドワード殿下のお相手は決まっているのね。」
「そうね。」
2人は満足げに頷いあった。
「やっぱり、これって、そういう意味なの!!以前、私に不快な思いをさせてしまったから、そのお詫びの品だと、兄経由で渡されたんだけど。お詫びの品だって……。」
「そういう意味しかないじゃない。この宝石、王家の色だし。それに、アレクシス殿下がおっしゃっていたじゃない、あなたは可愛い妹だと。それって、義理妹って意味なんじゃないの?ねえ、リナが気づくってことは、他にも心当たりがあるんでしょ?」
ソフィアが、さあ話せと、突っ込んで聞いてくる。
「なんで分かるの!?先日、家にピンクの胡蝶蘭と、お気に入りのクッキーが届いたわ。手紙付きで……もしかしたらって考えて、今までの事を色々思い返したら、そうなのかもしれないって、思えてきて……受け取っちゃったし、どうしたらいいと思う?」
「まずいわね。まず、そのブローチを王妃様のお茶会に着けて言った時点で、第2王子の正妻、王子妃決定よ。」
お、王子妃!?荷が重い。
リナは血の気が引いた。
「引きこもりたい。」
思わず呟く。
「心中お察しいたします。」
と、相変わらず冷静なソフィア。
「他人事すぎる。もっと優しく寄り添って。」
リナが涙目で言うと、
「それは殿下に言って~。」
「まぁ、素敵ね!」
「ちょっと、ソフィーなんてことを言ってるの。シャーリーは、ほのぼのしすぎだから。」
リナは、つっこみ役を放棄したい。
話していると、そこに思わぬ客人が現れた。
「あれ?今日は、お茶会でしたか?」
そこに現れたのは、フィリップだった。
「へ?なんでフィリップがここにいるの?」
「リナにアルムから託けがあるって言ったら、優しいメイドさんが家に入れてくれました。いつまで経っても、リナに王城で会えないから、今日、しびれを切らして、殿下の執務室に向かったら、本物のアルムを見かけたんでね。今日は交代したのかなと、リナは家にいると予測して来てみたんだけど、良かった、正解だった。」
「正解じゃないわよ。来ないでよ。今、見ての通り、麗しき令嬢だけのお茶会の真っ最中なのよ。さっさとお帰りあそばせ。」
「つれないな~そんな気の強い君が怯えた表情は、極上なんだよね。フフッ、ギャップがたまらない。」
リナはフィリップの発言に顔を引き攣らせた。
「変態ですわね。」
ソフィアが突っ込むと、ソフィアを見るフィリップ。
いつもの紳士な微笑みを作り、挨拶する。
「これはこれは、自己紹介が遅れました。私は、ガーライル伯爵家次男、フィリップと申します。以後お見知りおきを。」
「これはこれは、ご丁寧にどうも、私は、チェスター伯爵家子女、ソフィアです。」
うん、今後よろしくは、しないのね。
何かを感じ取ったのですね、才女ソフィア様。
あれ?いつもなら、余計な一言がありそうなのに、フィリップの反応がない……。
およよ?フィリップの視線はどこへ!?
あっ、あ、マズイ!!!!
即座に両手を広げて、フィリップの視界を遮断する。
「ちょっと、フィリップ、シャーリーは駄目よ。あんたには絶対に近づけさせないわ。」
「いや、もう遅いよ、リナ。この娘は誰?誰なの?僕のお嫁さんに!!!」
目を見開き、興奮ぎみに叫び、シャーロットに近づいていくフィリップ。
「ぜ~ったいにダメ、あなただけは、大切な友達を紹介できない。この可憐な少女を、生贄にするわけにはいかない。」
「何を言う。この可憐な令嬢を見て引き下がることは、私には出来ないよ。見てごらん。あの常に潤んだ瞳。震える手、固く結んだ唇。何より可憐だ。ドンピシャじゃないか!」
フィリップは両手を高らかに上げ、言い放った。
「あー、最悪だ。最低男にシャーリーが見つかった……こうなることは予測できたのに、しくじった。」
リナは頭を抱えた。
「ど、ど、ど、どういうことですか?リナ?」
リナはシャーロットに悲しげな視線を向ける。
「シャーリー、彼は怯え、涙目の女性に弱く、それ
を兼ね備えた、可愛らしいあなたを理想の相手だとロックオンしたのよ。はあ~、私の不手際だわ、ゴメンナサイ。」
これでもオブラートに包んだわよ。
感謝なさいフィリップ。
「え、えっ、ロックオン?へ?ヘェ?」
真っ赤になって、潤んだ瞳でフィリップを見て固まるシャーロット。
そのしぐさを見て、口元を片手で抑え、期待の目をシャーロットに向けるフィリップ。
それを見ていたソフィアが、リナに聞いてくる。
「これ、どうするの?」
「どうしようも できない。」
「あいつ、ヤっちゃう?」
そうイライラした口調でソフィアは言い切った。
ソフィアとフィリップの間に、ゴングの鐘が響き渡る音がしたとかしないとか。
まさかのフィリップの乗り換え。




