遠乗りへ行こう
お読みくださりありがとうございます
馬をご想像ください。
あの日から、フィリップに会うこともなく、平和に数日過ぎた頃、リナに手紙が届いた。
ハロルドからの遠乗りのお誘いだった。
兄さんに話すと、カイルと一緒ならば行ってもよいと許可がでたので、そう返事をし、カイルと共に出かけることになった。
王都から少し離れた高原まで、行くことになり、3人で馬を走らせる。
途中の草原で昼食を取ることにした。
敷物の上に座ろうとすると、ハロルドがハンカチを敷いてくれる。
さすが、公爵家子息、紳士だわ~。
私にまで、この振舞い。
高貴な身分な人って、皆、紳士教育が自然と体に身についているものなのねと、感心しながら、お礼を言って腰を下ろす。
「じゃあ、辺境伯の夜会に、リナも行くのか。」
「ええ、ハロルド様も?」
「ああ、招待されたから、自分の代わりに参加しなさいって、父がね。どうやら、辺境伯のご令嬢は、婚約者がいないらしい。」
「ああ。そういう事か。お前も大変だな。」
カイルが同情する。
リナは、辺境伯ご令嬢の事を、婚約者がいないなんて仲間だわ!もうすでに、友達になれる気がすると考え、意気揚々していた。
そんなリナをカイルが見て、思考を読み取ったのか、鼻で笑う。
その事に気がついたリナが、心を読まれ、馬鹿にされているのだと悟り、カイルをキッと睨んだ。
カイルはその様子も可笑しくて、遂に声に出して笑いだした。
ハロルドは、いきなりどうした?と、不思議そうにカイルを見ている。
その横でリナは、溜息をついた。
本格的に笑われてしまい、もう怒る気にならなかった。
婚約者がいないと言えば、仲間がもう一人いたわねと、気を逸らし、
「今回は親友も一緒だし、楽しみなのよね。」
リナが呟くと、ハロルドが食いつく。
「リナの親友?」
「ええ、チェスター伯爵家のご令嬢、ソフィアよ。もの凄~く、愛らしいの。」
「愛らしいって、女が女に。」
カイルはさっきの事が尾を引いているのか、ケラケラと笑う。
きっとリナが何を言っても、今は笑うのだろう。
リナはイラっとしたが我慢し、スルーした。
「だって本当の事だもの。ちなみに婚約者は居ないわ。耳より情報よ、ハロルド様。」
指を立て、ハロルドに、おどけて話す。
「あれ?ソフィア嬢は、婚約者いなかった?」
カイルよ、なぜお前が知っている?と、疑問に思ったがそれはスルーして、
「先月、解消したのよ。相手の勝手な都合で。ソフィアに落ち度は全く、一欠けらも、微塵も無いわ。本当に、本当に、本当に、相手の感性を疑うわ。」
リナは、拳を握りしめ熱く語った。
「おっ、リナがそんなにベタ褒めするなんて、よいご令嬢なんだな。」
ハロルドがそう聞くので、リナは胸を張り、きっぱり言い切った。
「当たり前です。私の親友だもの。世界最高峰の女性よ!」
そんな会話を楽しみながら、のんびり昼食を取り、
「さぁ、そろそろ行こうか。」
カイルがそういい、バスケットや敷物を片付け始める。
リナが立ち上がるのに、ハロルドが手を差し出す。
こんなことを、私なんかにスムーズにしてしまうなんて、本当に紳士だわ。
男装時の遠乗りの際、同じような場面で、スクッと1人で立ち上がる自分を思いだし、今の扱いが照れくさくなり、はにかむ。
こそばゆいが内心嬉しく、ハロルドの手を借りようと片手を差し出し、力を借りて立ち上がった。
お礼を言おうとした瞬間だった。
まだ離していなかった手をグイっと前へ引かれ、リナは勢いよく前につんのめる形になり、ハロルドの胸へ引き寄せられた。
自分の今の状況が分からず、固まっていると、クククッと笑い声が上から聞こえた。
その時、自分がハロルドの腕の中に、すっぽりはまって、ギュッと抱きしめられていることに気づき、酷く慌てた。
ハロルドは、あの人と違って、全く紳士ではない。
リナは顔を真っ赤にしながら、両腕をグイっと伸ばして、慌ててハロルドの腕の中から逃れた。
「ごめん、ごめん、君の照れた顔があまりにも可愛かったから、つい抱きしめたくなってしまって。」
真っ赤になっているリナに、さらに追い打ちをかけた。
何て返していいのか分からないリナが、アタフタしていると、
「おい、アルムに怒られるから、そういう事は俺のいない時にやってくれ。」
そうカイルが言うので、リナはさらに動揺し、さらに首まで真っ赤にした。
しかし、直ぐに
「さあ、もう行くぞ。」
と、ぶっきらぼうにカイルが言い放ち、馬にまたがった。
それを見て、モタモタしていると置いて行かれてしまうと焦り、自分も馬へと駆け寄った。
冷静になるために何度も深呼吸をした後、馬に乗った。
それから高原を駆け抜け、その先の丘で景色を眺めた後、公爵邸に戻った。
厩舎で馬を預け、ハロルドと話す。
「楽しかったわ。ハロルドは、どうでしたか?」
「ああ、凄く楽しかった。一人で出かけるよりいいな。また行こう。」
「ええ、また、みんなで、行きましょう。」
そう行って、並んで屋敷に向かう。
横を歩くハロルドが
「君にハロルドと呼んでもらえるようになったし、少しは心が近づいたかな?」
「え?」
そういえば、いつの間にか、呼んでしまっていたわ。
「今度は、2人きりで出かけたい。」
リナの方へ屈み、コソッと耳打ちした。
「2人きりでないと、カイルがアルム殿に怒られてしまうからね。」
その言葉に、リナは、ボッと瞬時に赤くになり、ハロルドがクックッと口元に手を当て、笑う。
「うん、今度は2人でデートに行こう。また直ぐに手紙を出すから。」
そう小声で言うと、姿勢を正し、スタスタと歩いてカイルの横に行ってしまった。
リナは、今までにない男性からの積極的なアプローチに、心臓が激しく動いていることを感じていた。
どうしたらよいのかと戸惑うばかりだった。
ハロルド!!
次回から勲章披露会です。




