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フィリップが来てるってヨ

お読みくださりありがとうございます

 

 ソフィアの話だと、雪解けの頃、モントローズ家が、隣国との境に住む部族との小競り合いを鎮め、功績をあげたとして国王から勲章を授与された。

 その祝いの披露会を、再来週開くのだそうで、そこに参加するように、母親達に、まんまと嵌められたようだ。


 モントローズ辺境伯夫人も、消極的な自分の娘に友人を作ってあげたいと、私達を引き合わせたいようで、母親達の作戦に手を貸したようだ。

 私達は、夫人のお眼鏡にかなったのだと、帰ってから母親から教えられた。


 さて、これから兄に会いに部屋を訪ねなくてはいけない。

 今日の事の報告と、兄が王城へ行ってどうなったのか……兄の帰宅はかなり早かったと聞いた。


明日から行かなくていいってなっていないかなと、期待しつつ、ドアをノックした。


 コンコン

「リナです。」

「どうぞ。」

 カチャッと、ドアを開け入る。


 そこには、あいつが居た。

「やぁ、女性の格好の君は、すこぶる可愛いね~。泣かせたくなるなぁ。」

あいつは、いつものチャラい感じで冗談を言う。


「おい、フィリップ、黙れ。刺すぞ。」

冗談でも言わせないと、間髪入れず、兄さんが叱怒した。


「おおコワッ。黙るよ。刺されるのはゴメンだ。」

 なぜ兄さんの部屋にフィリップがいるのか……。


「兄さん、どういうことですか?」

 リナはアルムに聞く。


「実はね、今日、王城に、コイツを絞めに行ったんだけど、すんなり、お前の変装の事は、絶対に黙っているって約束したんだ。帰ろうとしたら、相談があるから、うちに来るって言うんで、そのまま連れてきたんだ。」


「そうなの。じゃあ、私はフィリップが帰ったらまた来るわ。」

 部屋を出ようと方向転換し、ドアへと歩み寄る。


その時、

「相談というか、今日は、リナに求婚する許可を貰いに来たんだよ。」

 そう、フィリップが兄に告げた。


 目を丸くして、私と兄はフィリップを見る。

 兄もこのことは聞いていなかったようだ。

 クックッと、フィリップが笑う。


「実はね、私の兄が病を患ってね。領地に引きこもることになりそうなんだ。そこで、次男の私に当主のお役目の話が回ってきてね、のちのち、継いでくれって話になったんだけど、兄の婚約者だった令嬢が何を思ったのかゴネてね。次期当主と結婚するのは自分だって主張し始めたんだ。昔から高慢ちきで、兄に擦り寄る気持ち悪い令嬢だったから、私は心底嫌いでね。ほら、私は心優しい平和主義者だから、態度には出さなかったんだ。そしたら、今度はこっちに擦り寄ってきて、全く反吐が出る。兄は即、婚約を解消したんだけど、令嬢が実家を巻き込んで、騒ぎだしたんだよ。あんなのが嫁になるなんて考えたくもない。地上から消えてほしいよ。」

 首を切り落とすポーズをした。


「それで、なんで、お前がリナに求婚するんだ?」

アルムが聞き返す。


「え?頭のいいお前なら分かるだろう。先手を打って、あの令嬢の家が口出し出来ない、文句のない家柄の令嬢と婚約しておけば、万事解決。しかも、リナ嬢は、私好みの女性だ。婚約者もいないし、全く問題ない。むしろ、私が最高に幸せになれる。今までは私が次男だったから、結婚なんて考えていなかったけれど、こうなっては、変な嫁をあてがわれる前に、自分で動かなければと思ってね。」

分かってくれた?と同意を求めるような目を向けてくるフィリップ。


「問題あるわ。むしろ、問題しかないわ。」

 私がそう言うと、フィリップは首を傾げる。


「私があなたと結婚する気がないんだもの。大問題よ。その求婚、断固お断りよ!」

「つれないな~、そんな強気なリナ嬢も、本当に可愛いな。いっそう泣かせたくなる。」

 ジッと見つめてくる、フィリップ。


「まぁ、すぐに次期当主交代という話ではないし、まだ兄の容態次第、時間はある。じっくり口説き落とすとするよ。アルムも協力してくれよな。」

 そう言うと、フィリップは、椅子から腰を浮かせて立ち上がる。


「僕は、君が義弟になるのは正直嫌だなぁ、君の家自体は悪くないのだけどね。邪魔はしないけど、協力もしないよ。選ぶのは、リナだから。ただし、リナを泣かせたり、苦しめる奴は、容赦しないけど。」

「ハハッ、兄妹そろって手厳しいね。」

 ドアの近くまで来たフィリップは、私の前に来て止まった。


 彼の体が覆いかぶさるようになり、私は目をギュッとつぶり、両手を顔の前でクロスし身構えた。


 その時、腕を下におろされ、何かが触れた感触があった。

 彼は、私の額にキスをしたのだ。


「忘れ去られないように、記憶に僕を残しておかないと、それじゃあ、またね。」

 そう言って、部屋を後にした。


 そこには、手をクロスしたまま呆然と立ち尽くす私と、椅子から立ちあがり、呆気にとられた兄が残った。

 その後、兄の発狂する声が屋敷に響き渡った。


 兄が落ち着いてから、少し話をした。

 兄は、王城へ行き、殿下とフィリップと話をし、それから、リナが騎士団の方には行くことがないようにして来てくれたと、教えられた。

 私は、夜会に出なければならなくなったことを報告した。


「前から不思議だったんだけど、なんで兄さんは、フィリップと友人やってるの?」

「あいつは優秀だ。だが、僕の友人じゃない。」

「えっ友人じゃないの?」

「そうだ、しいて言えば人生での協力者だな。」


 何それ、友達じゃないの??

 こいつら、メンドクサイ。


 適当に相づちを打って、話を終わらせた。


 今日はもう、どっと疲れたので、食事をして早めに休むことにした。

部屋を出る際、兄には、くれぐれもフィリップに気を付けるように、カイルと共に行動することと、忠告を受けた。


私は大きく頷いた。





フィリップも参戦。

頑張れ、殿下。


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