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勲章披露会へのお誘い

お読みくださりありがとうございます

おかしな点は、ブラックホールへ投げ入れてください。


 今日はフィリップのことがあったので、兄が王城へ行くことになり、私は休みになった。

 いつもより少し遅く起床し、購入してあったシリーズ本の新刊でも読もうかと寝着のまま部屋でまったりしていると、ドアをノックする音がした。


「母さまです。よろしいかしら?」


「どうぞ~。」

 とリナが返すと同時にドアが勢いよく開き、母さまと侍女が部屋に雪崩込んできた。


 母さまが私を確認すると、私を指差して、やっておしまいと、侍女たちに声を掛ける。


 侍女たちは、イエス、マダーム!とイイ返事をし、私は両脇を掴まれ引きずられながら風呂場に移動させられ磨かれた。


 それから、息つく暇もないほどの猛スピードで、あれよあれよと支度されていき……今、母さまの親友、チェスター伯爵夫人のサロンへと連れてこられていた。


「今日あなたが休みだって、朝、ジルドから聞いたのよ。間に合ってよかったわ。」

 コソッと母さまが、私に耳打ちした。


 今は、夫人のお気に入りの、ピアノ、バイオリン、チェロの演奏者達が、三重奏を奏ででいる。


 ん~いい音色♪


「私、あのピアノの演奏をしている方に、教わっているのよ。」


 そう、声を掛けてきたのは、私の隣に座っている、透き通るような白い肌で、ブリュネットの毛先がユルっと丸まっている。

ヘーゼル色の瞳が印象的なこの家のご令嬢。

ソフィア・チェスターである。


 ソフィアとは、母さま達が親友であるので、幼少の頃から頻繁に顔を合わせていた。

 私とソフィアも相性は抜群だったようで、母さま達と同じく、お互いに何でも話せる、無二の親友になった。

 ソフィアには、交換ごっこの事も話している。


 演奏が終わり、帰る者もいるが、残った者、たいてい夫人と親しい人達で、しばしの間、お茶の時間となる。

 私とソフィアは、いつもの癖で、端っこの席に2人で座り、コソコソと話していた。


「それで、聞かれるとまずい話って何?」

 カップに注がれたお茶を一口味わうと、ソフィアが口を開いた。

 私はパイを食べようとしていた口を閉じ、皿にパイを戻し、顔を近づけ小声で話し出した。


「あ、うん。実はね、あの月1の例のお城の件。あれにとんでも展開が起こったのよ。」

「お城の件って、アルム様の報告ですよね。今回で最後にするって言っていた。」


「そう、その最後の報告の時に、殿下の執務を手伝うように命じられてしまって、今、私が兄さんに変装して、お手伝いに行っているのよ。」

「な、なんですって!なんで、リナが?よく家族が許したものね。」


「許すというか、兄さんに押し付けられたのよ。父さまも止めてくださらないし……はあ、あの時に戻りたい。報告に行く私を全力で止めるわ。」

「変装、厳しいから終わりにするって言っていたのに。大丈夫なの?」


「ああ、うん、毎日変装して行っているわ。今のところ、殿下にバレてはいないようだけど、いつ、何かがきっかけでバレるのではと、ヒヤヒヤしているわ。昨日なんて、王城で兄さんの学友の変態に偶然遭っちゃって、変装していたのがバレたのよ。今日はそのことで急遽休みになったから、ここに連れて来られたの。」


「そうだったのね、あの変態は、まずいわ。ちゃんと対処してもらわないと、心配よ。」

 そうねと頷いた後、一息紅茶を飲む。


「それよりも、ソフィーは?何かあったの?」

「え、どうして?」

「化粧で隠しているけど、目の下に隈が出来ているし、心なしか落ち込んでいる感じがする。」

「リナには、隠せないわね。」

 そういうと、ソフィアは、ゆっくりとお茶を口にし、カップを置いた。


「実は、私の婚約者の方が、先月、婚約を破棄したいと言い出したの。彼の家は、子爵家で、昔はあまり資金繰りが巧くいっていなくてね。子爵とお父様が学友であったから、お金の援助をスムーズにするために、私と子爵の子息を婚約ということにしたのよ。それが五年前。まぁ、お互いに嫌ではなかったし、このまま結婚してもよいかなと思っていたんだけど、先月、好きな人が出来てしまったから、婚約を解消したいって、父を通して断られて……解消したの。もともと、彼の家を助ける為であったし、家も持ち直して、援助金も総て返すというのでね……私も婚活しなくちゃならないのよ。はあ~、どこかにもの凄くイイ男いないかしら。」


 ソフィアは、子爵息子を嫌いではなかったけれど、結婚してもよいくらいの想いは寄せていたのね。

 うん、彼女を全力で応援したい。

 いつも落ち着いていて、賢くて、優しくて、とても素敵なソフィア。

 違う人を選んだ子爵ヤローは、気に食わないわね。


「その子爵の息子も、見る目が無かったわね。私が男だったら、何が何でもソフィーとの結婚を望むのに。会うたびに求婚するわ。」

「それはちょっと鬱陶しいわね。でも、リナが男だったらモテモテだろうから、私が頑張らないといけなくなるわ。フフッ。」


 そんな話をしたあと、婚約するならどんな男がいいかとか、2人で盛り上がり、

「婚活、一緒に頑張りましょうね。」

「ええ、素敵な夫を見つけましょう。」

 そう決意し、クスクスと笑い言いあっていた。


 すると、

「まあ、では、我が家の夜会に参加しませんこと?」

突然、背後からお誘いがきた。


 後ろを振り向くと、さっきまで、少し離れたテーブルに座っていた赤毛のご婦人が、近くまで来ていて、こちらを見て微笑みを浮かべ立っていた。


 どうやら、婚活の会話の気合が入りすぎて、声をいつもより大きくしていたらしく、お花摘みから自分の席に戻ろうとしていたご婦人に聞こえてしまったようだ。


 ご婦人が近づいてくる。

 こそっと、ソフィアが、彼女はモントローズ辺境地伯爵夫人だと教えてくれた。


「ごきげんよう、私はモントローズ伯爵の妻、ミュゼよ。再来週、開かれる我が家の夜会に、お二方もぜひ参加しませんこと?お二方は、あまり夜会に参加されないと、お母様達から聞いているわ。でも、より良い婚約者の殿方を見つけるならば、社交の場に出るのが一番ですわよ。直接、どんなお人柄か、確認することが出来るのですから。うちの招待状もお二人のお家に送っていますから、ぜひ、参加なさいませ。」

 どうしようかと顔を見合わせる私達。


そこに

「まあ、良い話じゃない。」

 待っていましたとばかりに母さまが横から話に飛びついてきた。


 ソフィア母もいつの間にか横に来ていて、後押しする。

「そうね、一緒に出ましょう。楽しみねー。」

 話が進んでしまった。


「うふふ、我が家にも同じ年頃の娘がいますの、仲良くしてくださいね。では、夜会でお待ちしておりますから。」

 そう言い終えて、モントローズ伯爵夫人は、母さま達に目配せをし、席に戻って行った。


 私とソフィアの前では、やったわ~とガッツポーズをしそうな勢いの二人の母親が、キャピキャピしながら夜会の打ち合わせを始めた。


 そんな母親二人を二人の娘達は、お茶を啜りながら、目を細めて見ていた。


 リナは、これが今回連れてこられた目的だったのか、まんまとしてやられたと思っていた。




まんまと嵌められました。

勲章披露会は、どうなるのか。

と、その前に。

次回、フィリップが登場。

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