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フィリップという男

お読みくださりありがとうございます

 

模擬戦も終わり、執務室へ戻るべく、歩いていると、後ろから声を掛けられる。


 フィリップだった。

「アルム、カイル、ちょっといいか。」

 来たか!と、足を止め、カイルが殿下と護衛に先に執務室へ戻るよう伝える。


 殿下は渋ったが、カイルがやりくるめた。

 心配そうな目で見てくる殿下、いたたまれない。


 ここじゃなんだから、こっちにと、通路から死角になりそうな場所に連れていかれた。


「それで、なんでここにリナ嬢がいるの?アルムに変装して。」

 単刀直入に聞いてきた。

 やっぱりバレてるよね。


 カイルと顔を見合わせたあと、

「なんでと聞かれても、兄さんが行きたがらないから、代わりだよ。」

 そう、リナは緩く答える。


「まあ、そう答えるよね。でも、君は本当は女の子だし、エドワード殿下と一緒にいる。それって何かあるの?」

 フィリップが不満そうな顔をして尋ねてくる。


「へ?なにかって?」

 思いがけない質問に驚いた。


「ん?そうだな、君が殿下の事が好きだから、お近づきになりたいとか、もしくは逆とか?」

「は?ないないない、どちらも絶対ない。殿下は私に執務の仕事の能力以外は、何も望んでないから、殿下がより良く働けるよう、私は兄さんの為にも、ひたすら働くのみよ。」

 胸を張り、言い切る。


「ふーん。そうなんだ。働くのみってことは、しばらく王城で手伝いするのか?」

「えっと、そうね。少しの間、手伝うように言われているから。」

「そっか、じゃあ、またこうやって直ぐに会えるのか。そうか、それならば会いに行くよ。」

 ニコニコしながら、フィリップは言ってくる。


それを黙って横で見ていたカイルが、

「フィリップ、リナが困ることは止めてやってくれ。」

 助け船を出してくれた。


 すると、フィリップは仕方ない、了解だと簡単に引き下がり、今度、アルムに話があるから家に行くと伝えてくれと言って、騎士団寮へと帰っていった。


「正直、何か強請られるのかと思っていたから、拍子抜けした。」

 私がカイルにそう言うと。


「まだ油断ならないから、王城では俺から離れるなよ。あと、このことはアルムにきっちり報告するように。」


 なぜこんなに、奴を警戒するのかと言うと、あいつは紳士の皮を被った、ド変態だからだ。

 2年前の兄の友達との交換ごっこの際、あいつに私の正体がバレた。

 その時に、人気のない場所へ強引に連れていかれて、襲われたのだ。

 まあ、未遂であったが……。


 私はその時、恐怖に泣き叫び、怯えた。

 そこに、カイルが助けに来て、止めてくれたのだが、あいつはその時、言い放ったのだ。


「はああああぁ、すっごい興奮する。」

って…………。


 こいつは、女の子が恐怖に脅える表情、泣き顔に性的興奮を感じる、ドS変態野郎だった。

 そのあと、私に何かするつもりは最初から全く無かったと言い切った。


 前に我が家に遊びに来た際に、私を見掛け、気に入っていたらしく、本人が目の前に居ると思うと、恐怖で怯える表情を見たくて、衝動が抑えられなくなかったそうだ。


 その後、フィリップは、兄とカイルに、こっぴどく叱られた。

 そして、今後、私とは二人きりに絶対ならないこと約束させられた。


 しかし、こんな所で偶然再開するなんて、ついてない。

 しかも、変装していることが知られるなんて、非常にまずい。

 悶々としながら、執務室に戻った。


 執務室のドアを開けると、腕組みをした殿下が、執務机の前に仁王立ちして待っていた。

 何故こんなに怒っているのかと疑問を持ちつつ、ゆっくり近寄る。


 殿下は顔が険しく、睨みつけてくる。

 こっちへ早く来いと手まねく。

 急いで駆け寄る。


「どうかなさいましたか?」

 と、慌てて質問すると、

「どうかしたのは、アルムの方だろう。あの男は何だ?なぜ話し掛けてきた。」

と、詰め寄られた。


「はあ、彼は特に、用事は無かったのですが、昔からの知り合いで面白い奴ですし、ただ単に暇つぶしに少し話がしたかったようで、それだけでした。」

 曖昧に答えた。


「それならば、私の前で話してもよかっただろう。なぜ私を先に帰した?」


なんか、ちょっと殿下、面倒だなぁ。


「私も最初、何か密な用事があるのかと思って気を利かせたのですが、私の思い過ごしだったようで。それに、私の友人との会話に、殿下を付き合わせるなど、恐れ多くできません。言葉が足らず、殿下に心配をおかけしたようで、申し訳ございませんでした。ですので、今後、私のようなものを、わざわざ殿下に気にかけていただかなくて、結構ですので、ご承知ください。」


 そう早口で言い終わると、目も合わせずに、席に着き、兄に報告することだけを考えて無心で仕事をした。


 不服そうだったが、殿下はそれ以降、何も言ってこなかった。


 家に帰り、さっそく兄に相談すると、明日は自分が王城に行くというので、任せることにした。




次回、エドワード視点です。

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